仲良し4人組
「いかない!いかない!いかない!絶対いかなーい!」
「マリちゃん、パパを困らせちゃダメよ」
「朋ちゃんや亜紀ちゃん、夕実ちゃんとお別れなんて絶対いや!」
「昨日マリの為に、みんながお別れ会やってくれたんだろう」
「そうよ、昨日みんなからプレゼント貰って、お別れのご挨拶もしたんじゃなかったの?」
「パパもママも大嫌いー!」
マリはそう言って子ども部屋に閉じこもった。
「あなた、マリ昨日は明るく楽しんでいたのよ。」
「仕方ないさ、今まで4人はずっとこのマンションで一緒に遊んでここまで大きくなったんだ。別れるのが辛いのは素直な気持ちなんだろう」
*
マリは約束の時間より少し前だったが、パパとママが寝たのを確認してマンションの扉をそっと開けた。
ギギギ…ゆっくり開けると扉はなぜか音がして一瞬パパとママが起きてしまいそうに感じてドキドキしたが、思い切って外に出た。
真夜中の外の空気はヒンヤリ透き通った感じがするのと、昼のような雑音は殆どなく静かで別の世界に紛れこんだようだった。
エントランス横の公園に行くと、そこにはもう亜紀が待っていた。
「亜紀ちゃんいつからいるの?」
「私も今来たところ」
「朋ちゃんと夕実ちゃん大丈夫かな?」
「4人揃わないと意味無いもんね」
「お待たせ!」
朋子と夕実が続けざまに公園に現れた。
亜紀がいった。「さあ出発しよ!」
「始発の電車がくるまで、どうするの?」
マリが聞くと同時に、亜紀が「まかせて!とっておきの場所あるから」とぐんぐん前に進む。他の2人も亜紀に着いて行く形で小走りで着いて行く。
「えっまってよ、どこ行くの?」
お寺の裏林を通り抜けると、ビックリするくらいのまっすぐなケモノ道があった。
「マリ、ここから競争だよ!」
夕実が言ったと同時に走り始めた。
続けて亜紀と朋子が続く。
マリも3人においていかれないように走った。そう、私たち4人は学校でもリレーの選手だもん。みんなに負けるわけにはいかない。
まっすぐなケモノ道は途中から軽い傾斜の上り坂になっていた。アキはみんなを追い抜いて、ケモノ道の終わりの頂上にたどり着いた。
「ハァハァハァ、マリ振り返ってみて!」
マリは亜紀に言われるまま振り返った。
そこには見たことない夜景が広がっていた。
「きれい…」
「マリ、ここから私たちのマンションはもちろん、学校もみんなで行った海やショッピングモール、全部が一望できる」
「全然知らなかった。でも亜紀ちゃん、前からこの丘のこと知っていたの?」
「ううん、一昨日3人で見つけたの。マリ、実は私たち一緒に家出はしないんだ。今晩は本当のお別れをしようと3人で話あったの。」
「えっどういうこと?」
「もちろんマリとお別れするのはツライよ。お別れなんてしたくない。でもね、マリのパパとママを心配させるようなことはよくない。」
「・・・・」
「それで4人で本当に最後の夜を過ごそうって決めたの。思い出の場所がたくさん見えるこの丘で。」
「亜紀ちゃん….」
「ほら、マリからお別れ会で貰ったクッキーもってきたんだよ。1人でマリのこと思い出しながら食べるのなんて寂しいから、みんなで楽しく食べようと思って。」
朋子も夕実もバックからお別れ会で貰ったクッキーを出した。
「でもこのクッキーの量食べるの大変だね」
3人が笑っているのを見ながら、マリは涙が止まらなかった。
丘の上、街が1番見晴らしがよい場所で、4人は今までの思い出話や大好きな男の子の話など夢中で話あった。
気づいたら、遠くの海岸線から朝陽がうっすらと登り始めている。
マリは言った。
「亜紀ちゃん、朋ちゃん、夕実ちゃん、本当にありがとう。最後の日みんなとすごせて幸せだった。もう帰らないとパパとママに今夜のことバレちゃうね。パパは怒りそうだし。マリは宇宙の果ての先の星に行っても3人のこと、そして今夜のこと絶対に忘れない。」
「うん!」「うん」「うん!」3人がうなづく。
「私たち今日は学校あるし、見送りできないからここで本当のお別れ。本当は空港でマリの乗ったロケットに手をふりたかったけど。今までありがとうね。」
マリは言った、「よーし、マンションまで競争だよ!」
「よーい、ドン!」
4人は夢中で丘からのケモノ道を駆け下りた。
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