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本日発売『いつでも転職できるを武器にする-市場価値に左右されない「自分軸」の作り方』【1章② 無料公開】

こんにちは、人事・戦略コンサルタントの松本利明です。
昨日より連載をスタートしている『いつでも転職できるを武器にする-市場価値に左右されない「自分軸」の作り方』(KADOKAWA)
発売日前ですが、出版社のご好意により、本文の一部を全文公開しています。本日は1章を全文公開します(「はじめに」「1章①」全文公開はこちら)
※1章の文字数が多くて読みにくいので5分割して掲載します。

問② 今の会社に残るべきかが、わかりません

答 キャリアはアップではなく、「スライド」で考える

キャリアはアップではなくスライドで考えるといい
 100人に1人の特技を3つ掛け合わせるブランディングは普通のビジネスパーソンで成り立たせるのは難しいと「はじめに」で解説しました。

では、普通のビジネスパーソンはどうすればいいのでしょうか。頂点を目指すのではなく、スライドしてオリジナルの価値を「見いだして」いけばいいのです。具体的に解説しましょう。図4をご覧ください。

 普通にキャリアを考えると、図4のように業界やその会社で上に登ることになりますが、上にいけばいくほど狭くなります。ライバルも同期だけではなくなります。上司や先輩、先人の識者などで上は詰まっているからです。熾し烈なポジション争いになります。

 しかし、苦労して1ミリでも上に上がっても、下のマーケットは増えていきません。まさに血の雨がふるレッドオーシャンになります。そこで発想を変えましょう。

 今の居場所で自立して一人前になったら、勇気を出して横の山に進むのです。対象となるマーケットを移し、そのマーケットでよそ者の視点と知見から、新しい価値を提供すればいいのです。同じマーケットを相手にしていると同じような思考パターンに陥おちいるので確実に喜ばれます。ライバルもいないので一人勝ちになります。

 キングコングの西野亮廣さんなども同じような戦略をとっています。
お笑いの世界で時代を摑んだ西野さんは、先人のつくった道をいくのではなく、自分の道を進んだと著書に書かれています。お笑いで摑んだ知見をスライドし、絵本作家、オンラインサロンをはじめ、次々に確実に当て続けています。

 キーは、逆張りです。ライバルがいないか少ない「アウェイ」にスライドし、自分の資質や経験の中から、相手に喜んで貰えそうなことを行えばいいのです。有名人ではなく、普通のビジネスパーソンで成功するパターンを紹介しましょう。

パターン① 逆張りしてスライド
 Aさんは30歳まで役者を目指して挫折。初めての就職は研修会社の営業。役者で培った洞察力と度胸が活き、あっという間にトップ営業へ。しかし、役者の夢は諦めきれず、35歳で再度劇団へ。役者をする傍ら、スポンサー集めの営業をしたら大成功。役者は演技力があっても営業力はない。逆にAさんは演技力が並でも営業力がある。結果、Aさんは劇団の幹部へ大昇進。現在は元役者の演技力をベースにした営業研修でブレイク中。

 資質を活かしてライバルがいない分野にスライドして成功した典型です。

 同様にIT系はどの会社もエンジニアの確保に苦しんでいます。なので、エンジニアから人事にスライドすると美味しいキャリアになります。エンジニアの立場や気持ちがわかるので、エンジニアに響く人事の打ち手が湧いてくるからです。職人や職人の意見を聞くようにエンジニア出身だと現場との心の距離感は近くなります。

パターン② 他の人にない経験の逆張りでスライド
 55歳で大手のシステム会社で役職定年になったBさん。マネジャーまで出世できなく、上司の8割は元部下や後輩。技術も過去のもので窓際族でした。

 そこで、過去の経験を洗い出し、成長中のIT会社の社長が困っていることで、他のエンジニアが苦手なことをピックアップ。

 30年以上のプロジェクトの中からメンタル不調者や退職者がでなかった経験に着目し、そこを売りにしてアプローチした結果、伸び盛りのITベンチャーの管理部門の執行役員に転職が決まり、年収も2割アップ。自分独自のありがとうの声を活かした典型例です。

パターン③ ライフステージの変化にあわせ趣味を実益に逆張り
 私の友人である早川哲朗さんは、元日本を代表するDJの一人でしたが結婚を機会に土日仕事のDJを減らし、インタラクティブプロデュース業を行う一方で、子守もできるし、周囲もハッピーにできるので趣味だった牡蠣バーベキューを発展させ、牡蠣尽くし料理会を展開。子供の学校や友達家族を巻き込み、家族ぐるみで楽しめると評判となり、収益化に成功。元DJらしく楽しませる演出力を活かした結果と言えます。

 上だけを目指すキャリアは危険です。AIやロボットをはじめ、テクノロジーの変化で仕事がなくなってしまうと道がなくなるからです。
視野も狭くなります。天井を見ると床が見えなくなることと、不思議と一緒なのです。視野が狭く上しかみなくなるので、環境変化に疎くなります。上がなくなると全てがパーになるので、上があるはずだと信じ続けるようになるのです。

「この道一筋40年。ある技術の世界的権威で研究所にいたのですが、テクノロジーが変わり私の技術がいらなくなりクビになりました」という笑えない状況が起きてしまうのです。残念ながら、こうなってからでは手遅れです。

 今、横を向けば天井や床も視界に入るように、スライドすることを意識さえすれば、おのずと変化とチャンスに敏感になります。

 ここでは逆張りでスライドして成功するパターンを3つ紹介しました。いかかでしょう。これならあなたもできそうな気がしてきたでしょう。まだまだパターンはあります。あなたにピッタリのパターンが見つかることを約束します。詳しくは次章以降で解説します。

ポイント 掛け算は強みや経験でなく、アウェイや逆張りにするとオリジナルになる


逆張りすると成功確率が高まる
 自分の資質にあった業界や仕事を選ぶと、実は周りはライバルだらけです。
陸上競技でも短距離が速い人は短距離の、長距離が得意な人は長距離のレースを選ぶからです。

 王道で勝つのはキングだけ。資質やスキルが卓越し、経験豊富で周りから慕われ、評価が高い人。誰でもなれるわけではありませんし、目指す必要もありません。

 なぜなら、ビジネスは陸上のレースより、もっと優しいからです。
 全ての人が量産型のロボットのように同じスペックではないからです。

 資質は誰もが複数持ち合わせ、キャラが成立しているからです。
自分のキャラを活かし、自分がチャンピオンになれる土俵に乗れば手のひらでコロコロと転がすように全てがうまく回りだします。
 逆張りするのが一番簡単です。逆張りには2パターンあります。

①相手に対し、他の人とは違う、自分独自の「ありがとう」を引き出す
②みんなが不得意な「ありがとう」を拾う

 になります。例をあげて解説しましょう。

①相手に対し、他の人とは違う、自分独自の「ありがとう」を引き出す
 外資系生命保険会社で日本トップクラスを毎年とる営業はどんなイメージですか?
 バリバリのエリートで、さわやかで感じがよく、提案力があり、と思うでしょう。
 実はそうでもないのです。ごく普通。実際はその真逆な方が多いのです。営業するより、パーティーの企画、運営の主催をして周りを楽しませている人が圧倒的に多いのです。人と人をつなぐ。人の面倒をみるのが大好き。結果、人が人を呼び、保険の話になると自動的にその方を通した契約になるのです。

 ありがとうの声を普通の営業の「いい保険を紹介してくれてありがとう」から、「親身に全てを使って私を助けてくれてありがとう」に変えることでオンリーワンの存在になっているのです。

 言わば逆張りの資質。パーティーをして人を惹きつける資質。相談に親身にのれる資質。人に好かれる資質。人と人を繫ぐ資質を活かしているだけです。

 なので、日常的にやっているのはワイン会、識者を呼んだ勉強会、バーベキュー大会の主催や運営が中心です。人生を楽しみ、人の相談にのり、人を繫いで役に立つことを、見返りを求めずに行う魅力的な性格と行動に惹かれ、次から次へと紹介でお客様とのご縁の輪が広がり、結果、No.1になり続けるのです。

 年上に気に入られる資質があれば、年上の経営者。同じ年や後輩に気に入られるなら2世経営者をターゲットにするなど、自分が一番喜ばせられるお客層を知り尽くしていて、そこにフォーカスしているのです。

 そう、キングのような天才的な資質や能力は必要ないのです。自分の資質のひとつひとつをうまく足し算し、活かしきるのです。

 ひとつひとつの資質をみれば誰でも持っていそうな些細なものです。しかし、資質を活用しきることで、心から人生を楽しみ、充実し、経済的な不安を感じることなくオリジナルな人生を謳歌しているのです。銀座のクラブでもNo.1は一番の美人ではないという話もよく聞きます。ないものねだりをするより、あるものを活用する方が速くラクに自分らしい人生を手に入れられるのです。

 周りと同じ土俵に乗ると、常に誰かとの比較を意識します。上司、先輩、同期、後輩もライバルとして「あいつに勝つ」など、強く意識するようになります。

 他人と勝ち負けの比較では不平・不満が必ず出ます。ストレスも溜まります。それが長期で溜まり、疲弊します。ありがとうの声を変えた自分の土俵ならライバルはいません。

 自分の市場やお客様を喜ばせることだけに集中でき、簡単に頭一つ抜け出せるのでお勧めします。

②みんなが不得意な「ありがとう」を拾う
 建設系の会社で営業成績が万年ビリだったAさんが40歳を前に年収1000万円を超えました。

不正ではなく、何をしたか。ライバルが苦手な分野の逆張りをしたのです。

 この建設会社の営業は達成意欲が強い人材ばかりでした。明るく前向き。勢い、ハッタリあり、受注できなくても、気にせず、どんどん次に進んでいくタイプが主流でした。

 Aさんは真逆の資質。慎重、細かい、手順手続きがきっちり決まっていないと不安で動けないタイプ。上司や周りからは「Aさんは営業に向いていない」という烙印を押されていました。

 35歳でストレスから体調を壊し、管理部門の雑用係という閉職に。飛び込み営業でのストレスがなくなり毎日定時で退社。心身の健康を取り戻すと同時に、興味関心があった会計、法律、過去の事例を学ぶようになりました。

Aさんの資質はコツコツタイプ。
法律面の資格を取ったのを機会に調査部に異動。難しい案件を抱えた営業から同行や相談が行列待ちになるようになったそうです。コツコツ法律や事例研究をする資質は、現場の営業で持ち合わせている人がいなかったからです。慎重にじっくり取り組める資質も、この仕事にあっていました。結果、再度、法律知識が必要な大型案件を扱う営業部署に異動。メキメキと頭角を現し、業績も全国で常に3位以内。40歳で抜擢され、この部署の部長になり年収1000万円を超えたそうです。

 まさに、王道の資質がないので、逆張りした結果、自分らしく、やりがいを持ち、評価され、稼げるようになったのです。

 そう、楽しく豊に生きるには、世界的な天才である必要はないのです。自分らしく生きる天才になりましょう。逆張りすれば簡単です。

ポイント 仕事にフィットした資質以外で逆張りするとオリジナルに簡単になれる


チャンスの扉はあけっぱなしにする


 30歳で海外のMBAを取りに行こうなど、計画的なキャリアのイメージを持ち、準備するのもいいでしょう。否定はしません。将来が予測可能で管理可能であれば、キャリアの目標を決め、そこに向けて効率的に進めるのはありです。

 今はいい意味でも激しく変化が起こり続けています。効率ばかりを優先しキャリアパスを考えていると、想定外のすばらしいチャンスを見逃してしまうこともありえます。

 これからの時代に必要なのは、効率的なルートを選定することではなく、時代や世間がどう変わっても、自分で自分の居場所を切り拓き、仕事をつかみ、自分らしく生き抜いていくことです。

 誤解しないでください。誰もが道なき道の開拓者になれ! ということではありません。それは道なき道を切り拓くのが大好きで得意な資質を持った人がやればいいことです。

 ここで朗報があります。激変する世の中ではチャンスがゴロゴロ転がっています。
 そう、チャンスをくれるのは「人」、成長するのは「仕事」と「仲間」です。

 チャンスを引き寄せる。適材適所は自分で捕まえられるのです。
 チャンスの扉をあけっぱなしにしておけば、チャンスはどんどん入ってきます。入ってきたチャンスの中から、自分の資質を踏まえ、次のステップを考えればいいのです。

 「ちゃんと地道にきっちりやっていればお天道様がみていてくれる」は昭和で終わっています。真面目にじっとコツコツ仕事をしていると、周りはその仕事が好きなんだなと認識し同じ仕事ばかりを回します。

 仕事の報酬は仕事と言いますが、今は他の人のノルマ、やりたくない仕事、同じ仕事がドンドン回ってくるメカニズムです。そのままでは悪循環。欲しいチャンスを他人から持ってきてくれるようにアプローチしましょう。

 転職活動をしろということではありません。社外に、市場に目を向けることです。
 なぜか。一番美味しい仕事は表にでないで決まるからです。それも、人が持ってきてくれます。本当に美味しいポジションは求人情報サイトや人材紹介会社に届く前に決まるのです。

・ヘッドハンター
・退職した上司、先輩、同僚、後輩
・友人知人の紹介

などが代表的です。

 一番美味しいのは友人、知人などからの紹介です。

 リファーラル採用と言います。社員が自分の知人を我社に紹介して入社してもらう「社内人材紹介」のことです。メルカリの中途採用の9割はリファーラル、残りの1割は自主応募です。人気がある企業ほど、真正面から中途採用に応募する険しい道ではなく、社員からの紹介という近道があるのです。

 採用する会社にとってもそうですが、採用される方、この本を読んでいるあなたにとっても大きなメリットがあります。

 1つは、ミスマッチが防げること。友達や知人の紹介なので、本音の声や実態を摑みやすいからです。紹介され入社が決まれば、その友人・知人に紹介料が入りはしますが、紹介する動機はお金ではありません。友人・知人に紹介するのは、「とても会社を愛している」「どうしても他の人と共有したい」と強く思った時だけです。「友人をカネで売ることはない」のです。働いている会社の仕事や価値観・文化も、あなたに合っている感覚がなければ声をかけてはこないでしょう。

 人は自分と同じ様な価値観やスキルレベルの方々と付き合うので、大きなミスマッチが起きるリスクは減るのです。

 2つ目は、友達の紹介を経るので、普通に自己応募するより確実に話が前に進みます。裏口ではなく横口です。人材紹介会社を通すより有利です。就活で落ちた会社でも大学の同期が活躍していて声をかけてくれたら一発逆転で入社できるチャンスも高まります。

 人気企業、チャレンジしてみたい格上の企業も、正面突破するより横口の方が有利です。
 リファーラルの方が難関・人気企業に入れる確率が高いのです。

 3つ目は、実態を肌感覚でよく摑めます。いきなり面接というケースは稀です。まずは、社員の友人・知人を呼んでピザパーティーやバーベキュー等の飲み会、懇親会から入ります。参加している社員の方々からざっくばらんな本音の話を聞き、どんな方々がいるかがよくわかるのです。

 初対面の方に「いきなり告白」してうまくいくことはほぼないですし、企業側もそんなことはしません。お互い「いつか何かで一緒に働けたらいいね」という繫がりができれば御の字と企業側も考えています。

 4つ目は、驚くかもしれませんが、実はベテランにも有利なのです。成長している企業で、実はベテランに幹部かその候補できていただきたいと思っているケースは多々あります。ただ、人材紹介会社を通して募集するほどではないと考えています。いい人がいたら我が社にポジションを用意するので、ぜひ、きて欲しい。というケースは多々ありますが、中々、出会いの場がないのです。成長している企業のパーティーに参加するベテランクラスは少ないのでチャンスです。

 5つ目は、年収交渉が有利になります。人材紹介会社を通すより有利です。採用が決定した場合、人材紹介会社に入社者の年収の二十数%以上の紹介料を支払うケースがありますが、リファーラル採用はそこまでかからないので、常識の範囲内であれば交渉できる可能性があります(これは会社によって違いますが、少なくとも人材紹介より有利です)。

 正式な採用面接となると1年間はその会社の人事に応募データが保管されます。内定がでてしまうと、2週間程度で意思決定が求められてしまいます。受かっても落ちても、最低1年間、エントリーは受け付けてくれない方が普通です。気楽に応募はしにくいです。

ポイント 思わぬ人からのチャンスがくることを忘れず、フラットに接する

1章の問いは5つあるので、明日以降も続きます。

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