ここがヘンだよ電ファミニコゲーマー 〜補足編〜

ここ最近、「電ファミニコゲーマー(以下、電ファミ)の姿勢って雑すぎでは?」という記事を二つほど掲載したわけですが、ぼくのスタンスについて、ちょっと誤解があるといけないので、軽い補足をしておきます。

先の記事ではいろいろ細かいツッコミを入れていますが、ぼくは「ゲームメディアの記事って、必ずしも厳密じゃなくても良いよね」というスタンスです。
何もかにも厳密に書く必要はないし、取り上げるゲームについて詳しくなくても良いでしょう、という立場。
厳密に書きすぎると、読者側も読みにくいですからね……。

なので、ゲームメディアの記事で、細かい間違いや正確性を欠くような表現を見つけても、「バーカバーカ、なんでこんなことも知らないんだ」などと言うつもりはあまりなく、基本的には「まぁ、そういうこともあるよね」で済ませるケースが多いのです。

で。

そんなぼくが、なぜ電ファミのあの記事を問題視しているのかといえば、「わざわざ、不正確な記述が発生するような書き方をやっているように見えるから」ってのが大きいです

たとえば『北派少林 飛龍の拳』の解説をしているキャプションで、

※2 飛龍の拳……カルチャーブレーンより発売された格闘ゲーム、およびそのシリーズ。第1作目の『北派少林 飛龍の拳』は1985年にアーケードで販売された。アーケード版では対人戦格闘ゲームだけであったが、1987年発売のファミリーコンピュータ版の『飛龍の拳 奥義の書』では、スクロールアクションの要素が追加された。
(引用元:http://news.denfaminicogamer.jp/interview/171212

と書かれていると、「おいおい」と思っちゃうんですよね。

ここは「1985年に日本ゲーム(カルチャーブレーンの前身)が開発、タイトーが販売したアーケードゲーム『北派少林 飛龍の拳』のこと。のちにさまざまなプラットフォームで続編が作られ、カルチャーブレーンを代表するシリーズとなった。」とでもすべきところです。

なぜ電ファミの注釈がダメなのか。

インタビューを読めば分かりますが、ここではシリーズとしての『飛龍の拳』の話はしていないんですね。でも、この注釈は『飛龍の拳』シリーズ全体を含むような書き方になっています。

また、メーカー名の表記に問題が発生してしまっている。
まず、『北派少林 飛龍の拳』の時点では、カルチャーブレーンという社名は使われていないはずです。
また、前後に掲載されている作品については、開発会社と販売会社を分けて書いているんですけど、『北派少林 飛龍の拳』に関しては販売会社が書いてありません。表記がぐちゃぐちゃ。
また、この記事が掲載された当時、カルチャーブレーンはすでに解散しており、『飛龍の拳』シリーズの権利は関連会社のカルチャーブレーンエクセルが有していたと思われます(ややこしい……)。

それはさておき。
ここで読者に提示すべき情報は、「1985年にアーケード向けに発売された、対戦格闘ゲームでこういう作品がありますよ」、「この作品には、対戦格闘パートしかありませんでしたよ」の2点だけのはず。

でも、ヘンに賢しらぶってシリーズの話をしてしまう。
そのせいで、この注釈はインタビューの文脈から外れるし、メーカー名の表記も不正確になるし、結果的に注釈としては本末転倒なものになっているわけです。

電ファミの記事をみていると、この手の注釈がちょくちょく見受けられます。インタビューの文脈を無視して、しょーもない「オレはいろいろ詳しく知ってるぜ!」アピールみたいな文章を入れ込んでくるんですね。
内容の正確性が保たれているなら、あれこれ補足情報を入れるのもいいでしょう。でも、「正確性を犠牲にしてまで入れることですかね、それ?」みたいなのが目に付くんですよね……。

ハッタリ効かせようとしてるのかなんなのか知りませんが、妙に「知ってそう」なことを書こうとして滑っているのがむちゃくちゃ気になるし、メディアの姿勢としてどうなのよ?と思っちゃいますね。


同記事中のほかのキャプションを見ていても、「書かなくて良いことを書いて、リーダビリティが低い上に、正確性を欠く表現になっている」という事例が、ちらほら目に付きます。

同記事では、「中段」の説明などが最たる例です。

※中段……上段ガードでは防げるが、しゃがみガードでは防げない技のこと。2D格闘ゲームにおいては一般的に「上段」、「中段」、「下段」の3種類があり、「上段」は立ち状態での攻撃とガード、「下段」は足払いなどの攻撃と、しゃがみ状態でのガードを指す。上段攻撃はしゃがみガードでは防げず、逆に下段攻撃は上段ガードでは防げない。1993年の初代『バーチャファイター』で初めて「中段」技が導入されたことにより、上記の意味で用いられるようになった。『ストII』の場合は、ジャンプからの技などが「中段」に相当する。画像ではエドモンド本田(画像左)がブランカ(画像右)に「中段」であるジャンプチョップを繰り出している。
(引用元:http://news.denfaminicogamer.jp/interview/171212

全体的になに書いているのか分かりにくい上に、誤字のせいでますます意味が通らなくなっています。

ここは単に、「『スト2』には"立ちガード"と"しゃがみガード"の2種類のガードがある。相手の地上技は(投げを除き)すべてしゃがみガードで防げるが、ジャンプ攻撃は立ちガードででしか防げないため、ガードの使い分けが必要だった。」とシンプルにまとめればいいところです。
(※「すべてしゃがみガードで防げる」と書いてしまうと、怖いスト2おじさんから「ダルシムのヨガスマッシュ後のスライディングがガード不能になったりする現象とかはどうなんですかねアァン?」と細かいツッコミが来そうですが、そういうのはさすがに無視して良いと思います。はい。)

もう少し詳しい説明が必要であれば、「この仕組みはシリーズやメーカーの枠を超えて後続の作品にも受け継がれ、立ちガード不能の攻撃(下段)と、しゃがみガード不能の攻撃(中段)を使い分けて相手のガードを揺さぶる行動は、対戦格闘ゲームの基本戦術として定着した。」とでもすればいい。

ほかにもいろんな文案が考えつきますが、とりあえずこの部分のキャプションで入れるべき情報は、「対戦格闘ゲームの基本的な行動に、"ガードの使い分け"がある」、「それを生み出した『スト2』は偉大ですよね」という話だけのはず。
上段・中段・下段の定義を説明する必要はないですよね。

まぁね、なんと言いますかね……。
読者にとって必要な情報を書こうとすれば、ああいうトンチキなキャプションは書かないと思うんですよね。
ぼくの目には、「モノを知らない人間が背伸びして知ってるふうを装った結果、ああいう変な原稿が生まれた」というふうに見えてしまうんです。
インタビューの文脈を適切に読み取り、それをきちんと補足しようとしたならば、(対戦格闘ゲームに疎くても)あんな書いてる本人もなに書いてるのか理解してなさそうな文章、出てくるわけないですよ。
知識がないならないなりの書き方があるはずで、あんな文章が出てくるのは、なんかヘン。おかしいです。
公式サイト等で公開されているマニュアルや攻略情報を適当に編集すればいいだけなのに、なんでこんなことが起こるのかな……。

こんなのはね、カプコン公式サイトにおいてある「ストゼミ」から説明と画像を参照すれば良いと思うんですよ。
このストゼミの第5回では、『スト2』におけるガードと攻撃属性について、非常に端的でわかりやすい解説が行われています。電ファミはこれをパク……参考にして書けば良かったのに。
このページ、「ストII 中段 ガード」とかでGoogle検索すれば、上のほうに出てくるんだけどなー……。

(※上掲のスクリーンショットは、https://game.capcom.com/cfn/sfv/column-130101.html のページを撮影たものです)


ちょっと話は変わりますが、ここで取り上げた電ファミの記事について、不要な注釈が入っている反面、「入ってしかるべき注釈が入ってないのでは?」と気になる部分があります。

たとえば、『サムライスピリッツ』の話をしているとき、西谷さんが「大斬り」という言葉を使っていますよね。
この「大斬り」ですが、『ゲーメスト』(新声社)などのゲーム攻略メディアが使用していたスラングでして、ゲーム中の正式用語ではありません。正しくは「強斬り」となります。
ゲーメスト編集部では、対戦格闘ゲームで使われる「弱・中・強」を「小・中・大」と言い換える風習があり、それが次第にプレイヤーに定着していったんですね。近年の対戦格闘シーンでも、弱パンチのことを「小パン」と言ったりします。
なので、ここは「大斬り(※強斬りのこと)」といった注釈を入れた方が良いと思います。
あと、どうでもいいですが、少し先の原田さんの発言の中で「大切り」という誤記があるので、直した方がいいと思いました。


さて、話が脱線してきたので、そろそろまとめに入ります。

2018年現在、世界のビデオゲーム文化は百花繚乱の様相を呈しています。
さまざまな国や地域のメーカーや個人が、さまざざまなジャンルの、さまざまなゲームを生み出しています。毎日毎日、世界のどこかで新しい作品が誕生しているわけです。
いまや、個人一人でゲーム業界の概観を捉えることなど不可能で、たった1ジャンルの動向であっても把握するのは困難です。

ゲームライターや、ゲームメディア編集者にとっては、なかなかしんどい時代です。
自分の知らないジャンルや作品を、読者に向けてわかりやすく解説しなければならない……そんな事態が頻発するわけですから。

そんな時代なので、ぼくはゲームメディアに対し、厳密性を求め過ぎるのはよくないと思っています。「多少おかしなこと書いてても、ハハハこやつめ、笑ってと許してあげようじゃないか」と。もちろん、致命的なミスを見かけたら、「おかしいよ」と言ってあげるべきですが。

そんなわけで、電ファミの記事にいろいろミスがあろうとも、ミスそのものをあげつらって「バーカバーカ」とはやし立てるつもりは(あまり)ありません。
でも、ヘンに小賢しいことを書こうとしてミスが出ているケースについては、「メディアの良心として、それはなるべく避けるべきですよね?」と思います。

まぁね。
メディアにもメンツってものがあります。「うちの編集部が全然知らないゲームなんですけど、記事にしてます」とは言いにくい場面もあるでしょう。
「多少ハッタリを効かせないと、読者を不安にさせてしまう」って考えもあるでしょう。
その気持ちはよくわかる。ぼくもそう考えてしまうことはあるし、ついつい背伸びしてヘンなこと書いちゃったこともある。
葬り去りたい過去! 黒歴史!

でも、きっとこれを読んでいる人にも、似たような経験がありますよね?
あるはずだよね? あるよな! あるって言え!(血走った目)

……えーと……すみません、取り乱しました。

というわけで、電ファミには、

・間違えるのは別にかまわないと思うよ

・でも、背伸びして妙なこと書くのは(できるだけ)避けてほしい

・たまには背伸びするのもいいんだけど、ちょっと目に余る記事もあるよね?

・知らないなら知らないで良いんだけど、もっとうまいごまかし方があるはずなので、もうちょっと頑張ってほしい

……てなことを言いたいです。
まぁ電ファミに限った話じゃないですけどね。

以上、まとまるようでまとまりきらない、ちょっと長めの補足でした。



え、なに? 内容のわりに長い? 冗長? 読んでてきつかった?
バカヤロウ! 書く方はもっときつかったんだぞ!
これでも攻撃的な断定調にならないよう、いろいろ気を遣ってるんだからな!
もういい、貴様らには失望した。散れ、帰れ帰れ!

こんなもん読んでいる暇があるなら、ゲームでもしてろ!
面白いゲームを探せ! 良質なレビューを読め!
実況動画を見ろ! イベント配信もチェックだ!
ワゴンを漁れ! コインを入れろ! ガチャを回せ!

終わりだ。またな。

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