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Kリーグ 2018 総括

■ 全北現代 Kリーグ1 連覇

10/7 Kリーグ1第32節の蔚山現代戦を2-2で終えた全北現代は、6試合を残してリーグ連覇を達成した。序盤戦こそイ・ジェソン退団の影響で苦しんだものの、リカルド・ロペスの復調とともにチームも調子を取り戻し、終わってみれば26勝8分4敗で勝ち点86を獲得。2位慶南FCと勝ち点差21をつけての完全優勝だった。

 長年全北現代の指揮を執ってきたチェ・ガンヒは、今シーズン限りで全北現代の監督を退任し、来シーズンから中国・天津権健の新監督に就任することが決まっている。チェ・ガンヒは全北現代の監督に就任した2005年〜2018年の間にリーグ優勝6回、FA杯優勝1回、ACL優勝2回を達成した。全北現代の黄金期を築きあげたと言っても過言ではない。

 また、来シーズンからポルトガル人指揮官ジョゼ・モライスの新監督就任が決定している。ジョゼ・モライスは、FCポルトやチェルシー、レアル・マドリードなどでジョゼ・モウリーニョ(現マンチェスター・ユナイテッド監督)のアシスタントコーチを務めた経験がある。世界的名将と共に名選手たちを指導した指導力が評価される一方で、2018シーズンにバーンズリーFCの監督を半年で解任されており、「監督」としての評価はそれほど高くない。
ちなみに、来シーズンからアシスタントコーチはかつてユベントスやポルトガル代表で活躍したディマスが務める予定。


慶南FC

 今シーズンのKリーグ1 最大のサプライズは慶南FCの躍進だろう。昨シーズンのKリーグ2で初優勝を果たし、今シーズン昇格してきたばかりの同クラブ。「残留」が第1目標と目されていたが、シーズン序盤戦から好調を持続し、Kリーグ2優勝の勢いそのままに全北現代の後ろを追いかけ続けた。 もちろん慶南FCがKリーグ1で2位になることはクラブ史上初めてのことで、ACL出場権獲得もクラブ史上初だ。特に慶南FCを牽引した3人の外国人助っ人(マルコン、ネゲバ、邦本宜裕)のパフォーマンスが素晴らしく、3人の奪ったゴール数は今シーズンの慶南FCの総得点の半分以上だ。年代別の日本代表でプレー経験がある邦本宜裕は現在21歳であるため、バリバリの東京五輪世代。本人も年代別代表でともにプレーした堂安律や冨安健洋の活躍に刺激を受け、東京五輪出場を目標に掲げている。
 来シーズン慶南FCはクラブ史上初のACLに出場する。選手層の薄さから国内の試合日程と両立が難しく苦戦する予感。また、中国移籍の噂が絶えないマルコンの後釜探しは急務事項だ。
(下の写真より、1番上からマルコン、ネゲバ、邦本宜裕の順)


マルコン

今シーズンの慶南FCの躍進に大きく貢献し、得点王と年間MVPの2つ個人タイトルを獲得。今シーズンはリーグ戦31試合に出場して26ゴールという驚異的な得点力を発揮した。

196㎝の長身と高い身体能力が武器のストライカーで、空中戦の強さはアジアではチートレベル。18歳まではプロのバスケットボール選手を目指していたそうで、自慢の跳躍力はバスケットボールから培ったもの。また、大のKポップ好きでもあり、韓国の人気アイドルグループ『TWICE』の振り付けをゴールパフォーマンスにしてしまうほど。


ハン・スンギュ

 今シーズンのKリーグ1の最優先若手選手に選ばれた蔚山現代生え抜きのMF。韓国人選手らしくスプリント力に長けたインサイドハーフだが、気の利いたポジション取りや空間察知能力にも長けており、かなりサッカーI.Qの高い選手と言える。
 最近の韓国メディアの報道では、「Jリーグの中堅クラブ4〜5クラブとスペインのクラブが獲得に興味を示している」と伝えている。
 筆者としては、最近欧州に進出する若手韓国人選手が減少傾向にあるため、ぜひ欧州の厳しい環境に飛び込んで成長してほしいと思っている。
 また勤勉で清潔感のあるビジュアルから、女性サポーターからの人気が高いとの情報も。(数年前は現鹿島アントラーズのチョン・スンヒョンがそういうキャラ(?)だった)


大邱FC FA杯初優勝

12/5 FA杯決勝1stレグ 大邱FC 2-1 蔚山現代
12/9 2stレグ 大邱FC 3-0 蔚山現代
2試合合計 大邱FC 5-1 蔚山現代

 1stレグはアウェー蔚山での試合。後半序盤にファン・イルスから先制点を奪われるも、すぐにセシーニョが同点ゴールを奪い、後半終了間際にエースのエドガー・シルバが逆転ゴールを奪った。そして蔚山現代をホームに迎えた2stレグ。敗れても1-0以内であれば優勝が決まる大邱FCだったが、押しこんで試合を進める蔚山現代相手にショートカウンターで対抗。後半にキム・デウォン、セシーニョ、エドガー・シルバが立て続けにゴールを挙げ、3-0で快勝。2試合合計スコア5-1で蔚山現代をねじ伏せてクラブ史上初のFA杯優勝&ACL出場権獲得を決めた。
 またリーグ戦でも好調だった大邱FCは、上位スプリット進出は失敗するも、クラブ史上最高順位の7位でシーズンを終えた。

 大邱FCは現在新しいスタジアムを建設中だ。
 現在使用している大邱スタジアムは、陸上トラック付きの総合競技スタジアム。過去には世界陸上が開催されたほど、多くの観客を収容できる。しかし、町の中心から離れた場所にスタジアムがあり、アクセスが悪い。この理由から週末のリーグ戦に観客を集めることが難しかった。
 現在建設中の『大邱フォレストアリーナ』は、収容人数6万8000人のサッカー専用スタジアム。現在大邱市中心部に建設中で、最寄駅が大邱駅と、立地も最高。3〜4月の完成を目指しており、完成後は韓国代表の試合なども開催する予定だ。


全南ドラゴンズ 降格

 11/4の江原FC戦で、1-0で敗戦した全南ドラゴンズはクラブ史上初めてKリーグ2へ降格した。
 今シーズンは昨冬の移籍市場で獲得した外国人助っ人がハマらなかったことが不振の大きな原因と言える。メルボルン・ヴィクトリーから獲得したDFジェームズ・ドナチーは、現役オーストラリア代表の選手として鳴り物入りで入団したが、チームメイトと思うようにコミュニケーションを取れず連携ミスを連発。また相手選手のターンについていけずに、簡単に振り切られるシーンがちらほら見られ、シーズン通してコンディション的にも良くなかった。そして前線のキープレーヤーとしてクロアチアの名門リエカから獲得したFWベドラン・ジュゴヴィッチは、リーグ戦38試合に出場してわずか4ゴールとまったく振るわず。
 また、終盤戦にはチームの核だったパク・ジュンテがクラブに内緒で飲酒運転事故を起こし、裁判所から懲役6ヶ月執行猶予2年を言い渡されていたことが発覚。クラブの雇用原則に反した同選手は契約解除の処分が下り、全南ドラゴンズはまさかのタイミングで主力を欠くことになった。
 そしてシーズン通して不調だった全南ドラゴンズは、24年間のクラブの歴史で初めて降格の屈辱を味わったのであった。


FCソウル 残留争いを体験

 2シーズン前のKリーグ覇者FCソウルの今シーズンは、かつてないほど厳しいものだった。
 昨冬の移籍市場で、元主将のオスマル・バルバとユン・イルロクが日本へ移籍。エースストライカーのダヤン・ダムヤノヴィッチはライバルの水原三星へフリー移籍。さらにチュ・セジョンとイ・ミョンジュの韓国代表コンビが尚州尚武(軍隊クラブ)入団。シーズン開幕前からファンは不安をいだいていたが、FCソウルの崩壊はファンの想像以上だった。シーズン序盤に、中盤の核だったハ・デソンが膝の負傷により長期離脱。それに加え、副主将のカク・テヒのパフォーマンス低下が著しく、チームの不振の原因となってしまった。

 シーズン途中にファン・ソンホン監督が辞任し、チェ・ヨンス監督が監督に就任するも、復調の兆しは見られず、FCソウルはリーグ戦の日程を11位で終えた。Kリーグのレギュレーション上、11位のチームはKリーグ2の昇格プレーオフを勝ち進んだチームとホーム&アウェイの入れ替えプレーオフを戦わなければならず、FCソウルは釜山アイパークと残留をかけて入れ替えプレーオフを戦った。12/6に行われた釜山でのアウェイゲームは、FCソウルが3-1で快勝し、12/9でのホーム戦では1-1のドロー決着。2試合合計スコア4-1で勝利したFCソウルがなんとかKリーグ1残留を決めた。


牙山ムグンファFC

 韓国プロリーグの2部リーグに当たるKリーグ2は、大方の予想を覆し、警察庁クラブの牙山ムグンファFCが初優勝を飾った。
 というのも牙山ムグンファFCは警察庁が運営するクラブで、能動的に選手補強は行わず、兵役義務のある選手を募集して、合否発表スタイルで戦力補強を行う。そのため、例年新加入選手の専門ポジションに偏りがあり、補強ポイントを的確に補強できない。結果、毎年Kリーグ2の中位〜下位が定位置で、優勝や昇格とは縁がないクラブだ。
 しかし、今シーズンは違った。Kリーグ1に所属する軍隊クラブの尚州尚武の募集人数が減ったことにより、牙山ムグンファFCにも兵役義務が残っている有力選手が流れてきた。昨冬に現役韓国代表のチュ・セジョン、イ・ミョンジュ、ファン・インボム、さらに昨シーズンのKリーグ1最優秀若手選手のアン・ヒョンボムが入団。圧倒的な戦力を揃えた牙山ムグンファFCはシーズン通して好調をキープし、見事Kリーグ2初優勝を達成した。

 Kリーグ2のチャンピオンとなった牙山ムグンファFCだったが、実は現在クラブ解散の危機に瀕している。すでに警察庁は来シーズン以降の選手募集を行わないと発表しており、事実上の解散宣言をした形だ。それにより、Kリーグ1昇格権も剥奪された。11月下旬には、クラブOB含む関係者や所属選手、下部組織選手、さらには他クラブの監督や選手、サポーターがソウル孝子洞の治安センターに集結し、解散反対デモを決行した。
 最近の報道では、クラブを牙山市に売却し、市民クラブとして再出発する可能性が浮上しているが、正直来シーズンもKリーグ2に残ることができるかは不透明なままだ。


年間ベストイレブン

 これまでKリーグの年間ベストイレブンと個人タイトルは、大韓民国サッカー協会(KFA)と韓国プロサッカー連盟、メディアの3つの機関が選んでいたが、今シーズンからKリーグの選手・監督の投票も追加された。ここ数年全北現代の選手ばかりの選出で不満が多かったKリーグ1の年間ベストイレブンだが、今回は投票が参考方法に追加されたことにより、選出された選手の所属チームにばらつきがあり、均等に評価された感じだ。また、今シーズンのKリーグ1の年間ベストイレブンは、Kリーグ史上初最多の外国人選手6名選出された。

・Kリーグ2 年間ベストイレブン

GK
キム・ヨングァン(ソウル・イーランド)
DF
イ・ハンセム(牙山ムグンファFC)
ユン・ヨンソン(城南FC)
ソ・ボミン(城南FC)
キム・ムナン(釜山アイパーク)
MF
ロムロ(釜山アイパーク)
ファン・インボム(牙山ムグンファFC/大田シチズン)
アン・ヒョンボム(牙山ムグンファFC)
イ・ミョンジュ(牙山ムグンファFC)
FW
ナ・サンホ(光州FC)
アウレリアン・キツ(大田シチズン)


・Kリーグ1 年間ベストイレブン

GK
チョ・ヒョヌ(大邱FC)
DF
イ・ヨン(全北現代)
キム・ミンジェ(全北現代)
リチャード・ウィントビヒラー(蔚山現代)
ホン・チョル(水原三星)
MF
リカルド・ロペス (全北現代)
チェ・ヨンジュン(慶南FC)
エリアス・アギラール (仁川ユナイテッド)
ネゲバ(慶南FC)
FW
マルコン(慶南FC)
ジュニオール・ネグラオ(蔚山現代)


各種データ

・Kリーグ2 順位

1位 牙山ムグンファFC、2位 城南FC、3位 釜山アイパーク、4位 大田シチズン、5位 光州FC、6位 FC安養、7位 水原FC、8位 富川FC、9位 安山グリーナーズFC、10位 ソウル・イーランド

・Kリーグ1 順位

1位 全北現代、2位 慶南FC、3位 蔚山現代、4位 浦項スティーラーズ、5位 済州ユナイテッド、6位 水原三星、7位 大邱FC、8位 江原FC、9位 仁川ユナイテッド、10位 尚州尚武、11位 FCソウル、12位 全南ドラゴンズ


・Kリーグ2 個人タイトル

年間MVP:ナ・サンホ(光州FC)
得点王:ナ・サンホ(光州FC)
アシスト王:ロムロ(釜山アイパーク)
最優秀監督:パク・ドンヒョク(牙山ムグンファFC)

・Kリーグ1 個人タイトル

年間MVP:マルコン(慶南FC)
得点王:マルコン(慶南FC)
アシスト王:セシーニョ(大邱FC)
年間最優秀若手選手:ハン・スンギュ(蔚山現代)
adidas TANGO賞:カン・ヒョンム(GK/浦項スティーラーズ)
最優秀監督:チェ・ガンヒ(全北現代)


・ホーム戦年間観客動員数

リーグ平均:5,439人
最多観客動員クラブ:FCソウル(12,981人)
合計最多観客動員クラブ:FCソウル(194,713人)

FCソウル(合計 194,713人/平均 12,981人)
全北現代(合計 179,882人/平均 11,243人)
蔚山現代(合計 128,120人/平均 7,536人)
水原三星(合計 117,933人/平均 7,183人)
浦項スティーラーズ(合計 111,581人/平均 6,974人)
仁川ユナイテッド(合計 66,398人/平均 4,150人)
大邱FC(合計 61,565人/平均 3,621人)
全南ドラゴンズ(合計 58,271人/平均 3,428)
済州ユナイテッド(合計 55,959人/平均 3,292人)
慶南FC(合計 54,550人/平均 3,209人)
尚州尚武(合計 22,978人/平均 1,352人)
江原FC(合計 22,722/平均 1,420人)

Via:K league 1 - Attendance| Transfermarkt
https://www.transfermarkt.co.uk/k-league-1/besucherzahlen/wettbewerb/RSK1/saison_id/2017

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