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にっぽんの知恵「出汁(だし)③水槽で泳ぐ魚をさばいた造りはおいしいか」

       図像:「5つの基本味」と「Umami成分」(宝酒造HPより) 

「良い香りのだし」「脂肪」「甘み」……これら「おいしさの三要素」のうち、「だしのうまみ」に関しては、おもしろいエピソードがあります。それが、独立した味として認知されたのは、わずか30年余り昔の話なのです。

 それ以前、日本人を除いて、人間の舌が区別して感じられる味は、4種類に限られるとされてきました。「4つの基本味」、すなわち「甘み」「塩辛み」「酸っぱみ」「苦み」です。

 ところが、1979(昭和54)年をさかいに、その認識が大きく変化しました。同年にハワイで開催された食品の味に関するシンポジウムで、グルタミン酸ナトリウムの味が「うまみ」であることが広く紹介されたからです。

 その後1982(昭和57)年、味覚生理学や食品学などの分野の日本人研究者5人が「うま味研究会」を設立しました。
 海外でも研究が進み、1985(昭和60)年に開催された「第1回うま味国際シンポジウム」を契機に「Umami」という言葉が、海外でも公式に用いられるようになりました。

 あわせて人間の舌に「うまみ」に反応する味覚細胞のあることが発見されます。「うまみ」が従来の「4つの基本味」とは異なる「第5の基本味」であることが科学的に認められたのです。

 ここでいう「うまみ」の実態は、昆布のうまみ=アミノ酸の一種グルタミン酸、カツオブシのうまみ=核酸の一種イノシン酸、シイタケのうまみ=有機酸の一種グアニル酸などです。

 昆布のうまみは、早くも1908(明治41)年、東京大学の池田菊苗博士によって単離されています。それが「味の素」の商品名で世界中に普及する化学調味料にほかならないわけです。

 ちなみに、その昔、化学調味料をなめたアメリカ人の多くは、なんの疑いもなく「ソルティ(salty)=しょっぱい」と表現したものです。
 それが今では、「交番=Koban」「カラオケ=Karaoke」「畳=Tatami」「酒=Sake」などと並んで「Umami」と表記され、英語の大型辞典の見出し語にも採用されるようになりました。
 それを検索エンジンGoogleで検索してみると、ヒットページ数は4000万余にのぼるはずです。

 昆布やカツオブシ、シイタケのほかにも「うまみ」食品はたくさんあります。タンパク質を分解すれば「うまみ」がきわだつからです。
 なかで最も一般的なのは、肉や魚、穀物などを微生物の働きで発酵させた食品です。チーズや漬物、味噌や醤油はその一例なのです。

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