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雪山からの眺望(515文字)

間もなくリフト終了というアナウンスが流れ、色とりどりのスキーウェアを着たスキーヤーが皆それぞれのペースで下山を始めた。山の上から見る麓の景色は、山と同じ雪の色。陽が傾きかけて、遠くに臨む里が刻々と黄昏色に美しく変化していく。ふと立ち止まって深呼吸をした。そこから見る眺望に、思わず目を細めた。蔵王の山は雄大で、全てのスケールが大きかった。

あの頃、大学の休みを利用して友人と蔵王でスキーをしてから30年以上経つ。一昨年、久しぶりに蔵王に来てから、去年、今年と三年目。学生時代に見たあの眺望がずっとずっと心に残っていたので、毎年、必ずリフト終了の頃は山の上からじっくりと下界を見渡す。何度見ても山から見る雪景色は美しい。

ところが今回はいつになく雪が少ない。麓の道路はチェーンもいらないのではないかと思うほど。山から見下ろす田園の景色が白くない。あの北国を実感出来る白い風景が好きだったのに…と少し残念に思った。

しかし、夕暮れ時になると、代わり見せてくれたかのように天使のはしごが空から降り注いでいた。薄明光線がまるでスポットライトのように麓の町を照らしている。あぁ、やっぱり蔵王の景色は美しい。今年も満足に足る蔵王スキー旅行となった。

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