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風に吹かれて(俺のオートバイ2) スーパーカブは昔からスーパーバイク。

1969年夏 
この時代、学生運動が過激に拡大していた。大学のロックアウトは日常的、日比谷高校など偏差値の高い都立高校もロックアウトが始まっていた。
そんな世界とは無縁に、中学校1年生の私は、サッカー部のつらい練習に毎日明け暮れていた。

夏休み、サッカー部の練習後、1年の私達はグランド整備や用具整理などで、午後も遅くなっていた。
私とHくんとOくん、疲れ切った状態で学校の裏門から下校。とぼとぼと歩くHくんがしゃべり出した。
「あのさぁ、今日さぁ、俺さぁ、いいもの見つけたんだ」
疲れている私は無反応。
「見たいだろう」
かったるいので早く帰りたかったが、Oくんが、
「えぇ、なになに、見たい」と答えてしまった。
どうせエロ本が捨ててあったのだろうと思ったが、私は2人に同行した。

学校の近くの竹藪のなかにあったのは、エロ本ではなくスーパーカブ(以降カブ)だった。足の泥よけが無かったがカブだ。予想外の落とし物だ。
横倒しになっていたので、引っ張りあげてみた。タイヤは空気が抜けていたが、腐ってはいない。ナンバーはない、盗難車だろう。

「ガソリンは?」私が言う。
Hくんがシートの下のタンクの蓋を開けて確認した。
「あるぞ、エンジンを掛けよう」多少オートバイの知識はあるので、押しがけをした。
Hくんがカブに乗って、ギヤをニュートラルにし、私とOくんで押した。速度が出たところでギヤをいれる。
かからない。

3度目でなんとかエンジンが掛かった。ギヤが1速に入っていたので、カブはそのまま走り出した。Hくんは、そのままカブで竹藪を回る路地を一周して戻ってきた。
Hくんの顔が高揚している。次に私が乗り一周した。
「すげー」人力でない走りに感動した。バイクって凄い。
その後、3人で暗くなるまでカブに乗った。

楽しかった。
しかし、興奮のあまり、私は部活の練習着を入れた巾着袋を竹藪の横にある原っぱに忘れてしまった。翌日確認したが、そのまま紛失。カブも消えていた。
私はお袋に、なんで道草したのと理由を問い詰められたが、友達と話をしていたと嘘で切り抜けた。
でも、あの日、夏の夕刻、カブで走った高揚感は忘れがたい記憶として残っていた。これがオートバイライフのとっかかりかな。

---私の主観でのバイク紹介
スーパーカブ、言わずと知れたHONDAのお仕事バイク。4サイクル50CCの原付バイク、とにかく丈夫で長持ちのエンジンとノークラでギヤ付き。そこがスクーターと違う。

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