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Citizen Sleeperをおすすめする(ネタバレなし)

discordサーバーのメッセージの屑を漁っていたら少し前に書いたシチズン・スリーパーを誰かにおすすめするための文章が残っていたので供養しておく。ストーリーの直接的なネタバレは含んでいないのでご安心を。

「Citizen Sleeper(シチズン・スリーパー)」

今年遊んだゲームで一番良かったです(3月31日時点)

企業の所有物である人型機械生命「スリーパー」として企業からの逃亡生活を送るアドベンチャーゲーム。
好きなSteamレビューを引用するとゲームブックに近い感じ。
テキストを読んでスリーパーの言動を選択していく時間がほとんどの作品。
世界観はサイバーパンクなSFもの。


企業の所有物として奴隷のように扱われてきたスリーパーが自由を得るために、どの企業にも属さず半ば無法地帯のようなコロニー、「アーリンの瞳」に逃げ込むところからストーリーは始まる。
自身の身体には発振器が取り付けられていて、数日すれば企業の追手が自分を壊しに来る。
追手が来なくても薬を手に入れられなければ体を維持できなくなって壊れてしまう。
問題を解決し、自由の身になるためにまずは宇宙に浮かぶ「アーリンの瞳」で自分の生活を成り立たせなければいけない、というのが簡単な筋書き。

これだけの筋書きを見るとすごくシリアスなお話に見えるかもしれないがこのゲームの本質はそこではないと思う。
もちろん上質なシリアスパートも存在するしそれがゲーム体験を引き上げているのは事実である。
でもこのゲームが最も強く語りかけてくるものはそういうパートや雰囲気ではなく、スリーパーとして出会うことになる多くの人々の暮らしにあるのではないか。


「アーリンの瞳」は企業や国家に属さないコロニーだから、絶対的な権威が存在しない。
ある区画がコロニーを保守する技術屋の集団に管理されているかと思えば隣の区画はマフィアのような自治組織で成り立っていたりする。
様々な境遇でこのコロニーに流れ着いた人々がそれぞれに集団を構成し、多様な生活を営んでいる。
このコロニーで生きていくというのはとても厳しいことで、例外なく誰もが常に死や不幸と隣合わせの生活だ。一歩間違えれば、あるいは間違えなくても、すべてを失ってしまうかもしれない。
それでもコロニーの人々は今日を生き、明日の暮らしを少し良くすることを諦めていないし、それぞれがそれぞれに苦しんでいるからこそ時には互いを理解し思いやることができる。
それこそがこのゲームの魅力の真髄だとぼくは思う。
コロニーに流れ着いて何もわからないままのスリーパーに仕事をくれる老爺、身の上話をただ頷いて聞いてくれる屋台の兄ちゃん、多くの人との出会いがスリーパーの生き延びる糧となるのだ。
助けられるばかりではなく、知り合った人々の力になることでそれぞれの暮らしはよりよいものとなる。
人々は互いの共感を分け合って殺伐とした世界を乗り越えていける、それがシチズンスリーパーが強く訴えかけてきたことだ。

退廃的で殺伐とした世界観を通じて人間の性を映し出すことがサイバーパンクの最も大きな魅力であり、社会や人間を書き出すことがSF作品の本分であるとぼくは思う。
シチズンスリーパーはその点を完璧にクリアした上で最高のゲーム体験へと昇華している素晴らしい作品であった。

メッセージが明確で普遍的なもので、ポジティブな気持ちになれる作品なので、疲れている人にこそ遊んで欲しいゲームだ。というか自分が精神的にしんどいときに遊んでかなり救われたので本当におすすめです。


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