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曲名でよく聞くけど、「ソナタ」とはなんぞや?【音学note】

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皆さまこんにちは。本日のテーマは「ソナタ」です。「ピアノソナタ」や「ヴァイオリンソナタ」、「冬のソナタ」などで名前を聞くソナタ。曲の種類って事はなんとなーくわかるけど、実際どういうものかよくわからない方もいるのではないでしょうか?今日はソナタの基本のキを理解して、もっともっと楽しく聴ける様になりましょう。(※韓国ドラマをより楽しめる保証はありません)

語源と歴史

「ソナタ」の言葉の語源はイタリア語で「鳴り響く、演奏する」という意味のあるsonare(ソナーレ)という言葉です。日本では「奏鳴曲」と訳されることもあり、昔のLPレコードなどには「ベートーヴェン第8奏鳴曲」なんて書かれたりしています。
初期バロック時代(16世紀末)、「ソナタ」にはまだ明確な定義はなく、様々な器楽曲を指す名称として使用されていました。

初期バロック時代に作曲されたソナタ(G.B.フォンタナ:ソナタNo.2)

17世紀末になると少しだけ形が明確になり、複数の楽章を持ち、バイオリンやチェロやチェンバロなどの鍵盤楽器などで合奏される室内楽曲または器楽曲を広く表すジャンルとなります。

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番

そして18世紀にはいるとモーツァルト(1756-1791)やハイドン(1732-1809)、M.クレメンティ(1752-1832)らによって形式化が行われ、いよいよ「ソナタ」として明確な形が生まれます。

モーツァルト:ピアノソナタ第16番

特にベートーヴェンが活躍していた18世紀後半から19世紀にかけては、ピアノ作品といえばソナタ、と言われるほどソナタは広く流行していたそうです。

これらのことからわかる通り、一口に「ソナタ」と言っても時代によってその作品の形は大きく変わります。
では無事形式化し、我々の知っている作品も多く生まれた18世紀以降の「ソナタ」とは具体的にどのようなものなのでしょうか?

「ソナタ形式」について

実はクラシック音楽の多くは「形式」というものにのっとって書かれています(モーツァルトやベートーヴェンが生きた時代は特に)。19世紀にウィーン大学で教鞭をとっていた音楽評論家E.ハンスリック(1825-1904)は音楽を「鳴り響きながら動く形式」と定義しています。

E.ハンスリック(ブラームスらとも親交がありました。その辺の話はまた後日。)

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「形式」というとなんだか難しいなぁと思うかもしれませんが、文章の起承転結やドラマのプロットのようなものです。この音楽における「形式」を発展させたジャンルの一つが「ソナタ形式」というわけです。しかし実は「ソナタ形式」という言葉、モーツァルトやベートーヴェンは知りませんでした。それもそのはず、「ソナタ形式」というのは後にアドルフ・ベルンハルト・マルクス(1795–1866)という人がベートーヴェンのソナタを研究し、
公式化したものなのです。
もちろん「ソナタ形式」と言っても時代が進むにつれて少し崩してみたり、より発展させてみたりとありますが、今回はプロトタイプ、基本を学んでいきましょう。

まずは「ソナタ」について。基本的なソナタというのは4楽章構成で、それぞれのキャラクターが決まって書かれていることが多いです。

第一楽章ーテンポは比較的早めの曲が多く、「ソナタ形式」にのっとって書かれます。
第二楽章ーいわゆる「緩徐楽章」と言われる楽章です。ゆっくりとゆったりとした曲です。
第三楽章ー舞曲のリズムを使ったメヌエットやスケルツォが使われることが多い楽章です。軽やかで楽しげな曲が多いです。
第四楽章ー作品の最後を任された、壮大でフィナーレにふさわしい楽章。「ソナタ形式」や「ロンド形式」といった形式で書かれます。

さて一楽章と四楽章に「ソナタ形式」という言葉が出てきました。これはソナタの一楽章(及び終楽章)に多く使われた形式のためそう呼ばれています。ソナタ形式についても少し詳しく見てみましょう。
先ほども話しましたが、ソナタ形式は起承転結のような構造になっています。

1.提示部ー楽曲のテーマ、主題を提示します。聴いている人はここで作品のキャラクターや雰囲気がわかります。
2.展開部ー提示部で提示された主題が転調したり、変形したりと大きな変化が訪れる場面です。変化させるアイデアやイメージなど、作曲家の力量が試される場面かも...?
3.再現部ー再び提示部が戻ってきます。再度登場なので「再現部」なのですね。しかし提示部とは違う調で「再現」されることも多く、そうすると物語にちょっとした変化が加わりますね。
4.コーダ(結尾部)-曲を締めくくる部分。短いことも、「あれ、いつ終わるの?」くらい長い作品もあったりします。

中には提示部の前に長い序奏があったりします。例えばベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」第一楽章などはよい例です。

ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」第一楽章(開始から始まる重た~い音楽が序奏部分で、提示部は2:00あたりから始まります。提示部に入った途端音楽の流れも変わっていますね。)


まとめ

今回は「ソナタ」そして「ソナタ形式」について簡単にですが学んでみました!クラシック音楽にはこのように「形式」と言われるものが他にもたくさんあります(ロンド形式、循環形式、フーガやカノン...などなど)。しかし難しく考えなくて大丈夫です。これらは聴衆がどうしたら楽しく聴けるか考えた結果生まれた、音楽の骨組みのようなもの。しかしこの形式を分かって聴くと、「あ、このテーマは提示部で出てきたものだ。でも転調してるからこの部分では少し違った感情を作曲家は表したかったのかな?」とか「あそこはこの部分の伏線になっていたんだなぁ」など少し踏み込んだ理解ができるようになります。きっとあなたの音楽の世界がさらに開けるはずです。ぜひちょっとだけ頭に入れておいてみてくださいね!


文:あおたけ(コロンスタジオライター)

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