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石を投げる人の夢:2月19日に見た夢

 私は学生寮の一室で目を覚ました。古い木枠の窓の外に灰色の空が広がり、ずいぶんと寒い。きゃいきゃいと子供の声が窓から聞こえてくる。私は粗末なベッドから身を起こすと窓辺に立った。部屋は4階で、眼下には中庭と寮の門、その先に広がる街並みがある。時間は夕方だろうか。門の前の細い道にはKちゃんがいた。Kちゃんは私の学生時代の友人である。小太りで背は低く、髭が剃ったそばからはえてきて、いつも顔の半分がざらついている。温和で人間嫌いなKちゃんのことが私は好きだった。彼とはもう何年も会っていないのだが遠くから見ても姿は変わらず、懐かしい気持ちになった。
「石投げおじさんが来たぞ!」と子供が叫ぶのが聞こえた。
 見るとKちゃんの周りにたくさんの子供が集まって来て騒いでいる。この声が私の眠りを破ったのだ。しかし石投げおじさんとはなんだろう、と考えているとKちゃんがぐっと振りかぶり、たくさんの石を子供達に投げ始めた。子供達は楽しそうにきゃあきゃあ逃げまわった。砕けて倒れる子供もいた。子供達は楽しそうだった。子供達はやがて蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。Kちゃんは一人立っていた。
 私はちょっと驚いて茫然としていたが隣の部屋が騒がしいのに気付いて我に帰った。廊下に出ると、丁度ビニール袋を提げた松本人志と段ボール箱を抱えたケンコバが部屋に戻っていくところだった。話を聞くと芸人たちを集めて鍋をやるのだという。ついていくと松本の部屋は私の起居する部屋と違って広く、近代的だった。巨大なキッチンもついていた。キッチンでケンコバと松本は買い物袋を降ろして、その中から高級そうな焼酎を取り出すと飲み始めた。私もいただいた。
「董卓やな。」松本が笑いをかみ殺すようにしながら言った。
「董卓ですね。」と赤い顔でひげ面のケンコバも追従をした。ケンコバのことを言っているのだろうか。私はどうしてよいのかわからず、居心地の悪さを紛らわしたくて鍋の仕込みを買って出た。焼酎に酔ってぼんやり具材を刻んでいる間に目が覚めた。

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