既存投資家へのピッチとコミュニケーションは、新規投資家以上にしっかりやろうね、という話。

どうも、KORYです。最近、投資環境が昨年より悪くなっているのもあって、僕の運営しているVC(NEXTBLUEと、その前に立ち上げたReality Accelerator)にも新規の相談が増えています。そういう相談の中で「既存投資家がたくさんいるのに追加ラウンドで既存投資家が誰も投資しない案件」もあって、投資家からするとそれは悪いフラグの1つです。

一方、既存投資先への出資について、最初にReality Acceleratorファンドを立ち上げた時はSaaSに特化していたのもあって、速攻で単月黒字化してしまって、追加出資すらいらないみたいな投資先も多く、追加出資については少数しか実行していなかったのですが、新しいファンドNEXTBLUEでは日本投資先も欧州投資先も追加出資も数多く行っています。

日本ではスタートアップが既存投資家からの出資を受けられてないケースが多いので、どうやったら既存投資家からの出資を得やすくなるかをまとめてみました。

欧州では、ブリッジラウンドや追加ラウンドでの既存投資家の参加は当たり前

NEXTBLUEで欧州スタートアップへの投資を始めてから、日本と欧州で投資環境が違うな〜と思ったことの1つは、追加出資をする投資家(エンジェル投資家含め)がとても多いことです。ブリッジラウンドでは、既存投資家で出し合って既存投資家だけで完結させたりします。

こうやって書くと「日本の投資家は追加出資しないダメな投資家ばかりで、欧州には追加出資してくれる良い投資家がたくさんいる」という風に聞こえるかもしれないのですが、そういう単純な話でもなくて、どちらかといえば、「欧州の起業家は既存投資家へのコミュニケーションやピッチ、そして意思決定や入金への流し込みが上手いスタートアップが多い」ということに尽きるかなと思います。

既存投資家へのピッチもせず、事業計画もしっかり議論せず、事業に巻き込みもせず、ただただラウンドが始まって、思ったより集まらなそうだなというのが分かってから後出しで「追加出資してくれますか?」と聞いてしまうスタートアップは、日本でも欧州でも関係なく追加出資をしてもらえないと思います。(新規投資家へのコミュニケーションでは、そんなコミュニケーションだと出資してもらえないですよね。既存投資家も一緒です。)

いかに既存投資家をインボルブするか、ということをしっかりやっているスタートアップが既存投資家からの出資をうまく受けられているので、そのエッセンスをブレークダウンしてみたいと思います。


既存投資家へのコミュニケーションはもっとしっかりやるべき①:既存投資家が定点観測できるようにしておき、かつ、成長してる感じを演出し投資家の中での投資したい気持ちを醸成する

日本だと、よく株主をとりあえず集めて月例で報告会とかやってるケースあるんですけど、それは最低限のコミュニケーションで、もちろん、上手くいってるケースはそれだけでいいし、なんならメールで通知しておけばOKくらいの状態もあるのですが、逆にあまり上手くいってないケース、たとえば当初の想定ほど売上が成長していないとか、開発が遅れてるとか、そういう状態だと報告会だけでは足りない可能性があります。「定例会では遅れてると報告してますが、このように挽回する予定です!」というモメンタムを下げないコミュニケーションをしていく必要があります。(もちろん、それを実際に実現していく必要があります。)

既存投資家へのコミュニケーションはもっとしっかりやるべき②:次のラウンドでしっかり投資してもらえるように、既存投資家に対して定期的に根回ししまくる、投資家チームの中でも根回しさせる

投資家の担当者も社内で通さないといけないので、いきなり言われても投資できません。実際のラウンドが発生するずっと前から社内で来年◯月に既存投資先のX社に追加出資するので〇〇万円の枠おさえといてください、というメッセージングと根回し(そもそも追加出資の概念が弱い会社の場合は社内での追加出資に対するスタンスの調整・変更を議論させる必要がある)を行ってもらわなければなりません。

なので、以下のようなコミュニケーションを既存投資家に対して行っていかなければならないのです。

次のラウンドは〇〇万円のラウンドで、既存投資家から合計〇〇万円、新規投資家から〇〇万円のラウンドでやろうと思ってます。割合からすると御社にも〇〇万円くらいは投資して頂きたいので御社の中での根回しお願いします、それないと新規投資家からも投資受けられないので!

(やんわり断られても、「そこをなんとか社内で通してください!どうしたら追加出資可能になりますか?!」と言っていかなければならない。投資はしにくい、というだけで、「不可能」というのはファンドのお金を使い切ってしまった場合以外は、基本的にありえない。だいたい、担当者が社内で案件を通せないだけか、社内決済を通すのがそもそも面倒くさいだけなのだ。

既存投資家へのコミュニケーションはもっとしっかりやるべき③:新規投資家と同じように、またはそれ以上にしっかりピッチする

月例会に出てるから理解してくれてる、とか、数字は送ってるから分かってる、とかっていう幻想は抱かないようがいいです。というのも、月例会は現状の報告に留まっているケースが多く、これからの予想とそれを裏付けるロジックはその場では説明されていないケースが多いのではないかと思います。

むしろ、下手に毎月の情報を持っている分、投資しない理由(思ったより成長していない、とか。)も持ってしまっているケースすらあると思います。

なので、いったん月次の報告は忘れてもらって、新規投資家と同じようにピッチをして、次の1年の成長曲線をどう上振れさせていくのか、どういう風にバリュエーションを上げていくのか、なぜ新規投資よりも既存投資先であるあなたの会社に投資をした方が儲かるのか、などを説明・説得する必要があるのです。

既存投資家はチームの一員でもありますが、どこまでいっても投資家でしかないので、内部のことは分からないので、ピュアに投資機会と捉えた時に、追加で投資して新規投資と比較して十分なリターンが得られるかが非常に重要なわけです。


しっかり既存投資家にピッチしましょう、継続的に既存投資家に対して御社のイメージをアゲていきましょう、というお話でした。参考まで。

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