『コンフィデンスマンJP』#7

 「家族編」御覧いただきありがとうございました。
 今までのコンフィデンスマンらしからぬ趣の話だったかと思いますがいかがだったでしょうか。
 副音声もやらせていただきました。小手さんのおかげでなんとかなりましたが気を悪くされた方がいなかったかどうか。限られた時間の中で内容や表現に気をつけながら喜んでもらえそうなことを考えて話すのは本当に難しく、生放送などに出ている方はやはりすごいなあと思うばかりでした。このドラマを応援してくださる皆さんが少しでも楽しんでいただけたのなら甲斐がありました。

 喋ったことと重複しますが、人物の名前を付けるのはいつも苦労します。しっくりこないとずっとしっくりこないまま書いていかなければならないので。
 五十嵐の役名は、最初「リチャード」とつけていました。セクシーでダンディな謎の超二枚目という役だったので。まあ、ぶっちゃけリチャード・ギアからです。役割としてはトランプのジョーカーのイメージ。まだ見ぬイケメン俳優をP陣は探してくださったんですがなかなかイメージに合う方が見つからなかったようで、イケメンの解釈を広げようという雰囲気になり、前から気になっていた小手伸也さんの名前を出したところ決まりました。
 ダー子はトランプのクイーン→姫→わがまま姫→駄々っ子→ダー子。
 ボクちゃんはジャック→プリンス→王子→おぼっちゃん→ボクちゃん。
 リチャードはキング→おじじ。小日向さんがやってくださることになって、小日向さんがリチャードのほうが面白いと思い始め、こちらにリチャードを移植。
 なのでジョーカーは、逆に普通の苗字にしよう。でも印象に残るもの。で、五十嵐。
 これで出来上がり。しっくりくる4人になったと思っています。
 あと、僕はよく人物の名前のイニシャルを揃えるということをやります。このドラマのターゲットたちの桜田しず子、俵屋勤、野々宮ナンシー、野々宮新琉、斑井満、与論要造など。赤星栄介は母音、城ケ崎善三はざ行で揃えました。過去の作品でも、古美門研介、黛真知子、羽生春樹、薮下依子、谷口巧、富田多満子、萩原久などなどなど。ただの遊び心であって意味はありません。日本人の名前なんか無限にあるので何かしら縛りを作らないと決められないだけです。
 ただときに、名前がぴしゃっと決まるとその瞬間に「私はこういう人間です」と名前のほうから主張してくる気がしてどんどん人物が出来上がってゆくということがあります。薮下依子なんて決めた瞬間にキッとにらみつけられた気がしました。
 これから出てくる人物はどんな名前でしょう。

 脚本の打ち合わせをスタジオの会議室でやることが多かったので、撮影に顔を出す機会も何度かありました。
 あるときふらっと行ってみたら竜雷太さんが待機してらして「ゴ、ゴ、ゴリさん……!」と妙にテンションがあがってしまい、つい『太陽にほえろ』について語り始め、しかも「ゴリラのぉゴリですかぁ」となぜか萩原健一さんのモノマネまでやらかしてて、俺は竜さんに何を見せているんだと我に返って赤面しました。
 でも竜さんはにこやかに「1話は、本当は2話だったんだけど急遽1話にしたんですよ。犯人役の水谷さんがよかったからかなあ」などと鼻血が出るような裏話を聞かせてくださって感激しました。
 あ、言っておきますが僕も『太陽にほえろ』は必ずしも世代じゃありません。でもこの仕事を志すなら当然観ておくべきものと思って一時期にむさぼって観ました。
 ついでながら、僕が好きなエピソードは、沢田研二さんがゲストの「そして愛は終わった」です。マカロニが初めて人を撃つという回で、個人的にはショーケンが撃つ相手にジュリーをキャスティングする時点で町内を叫びながら走り回りたくなるくらい興奮しちゃうのですが、その話をしだすと長くなるので自制するとして、物語自体も実に濃密で切なく、人物たちがみんな立っていて、通常サイズで放送するのが勿体ないくらいの傑作。書かれたのは市川森一先生。脱帽。僕はかつて『相棒』に参加したばかりの頃、これを繰り返し見て勉強しました。『相棒』に入りたいと思っている若き脚本家諸君、見るべし。

 余談が過ぎましたが今回は「美術商編」の三橋監督が撮ってくださいました。奇をてらわず芝居をしっかり撮ってくださっててよかったです。心理戦なので、登場人物はどこでどのへんまでわかっててやりとりしているのかを考え出すと演出も難しかったのではと思います。
 与論邸の内部もほとんどセットなんですよ、わかりませんよね。
 巣鴨キンタギンコが、演じてくださった岡田義徳さんと桜井ユキさんの雰囲気もよくてすごく好きです。阿南敦子さんの聡子さんも、佐津川愛美さんの理花もとても素敵でした。何といっても中尾さんと前田さん、贅沢な子猫でしたね。
 「ガッキーだったらなあ」はどこかでやれたらいいなと当初から思っていました。というのも、大河で『真田丸』が始まった時、ある記者さんから「古美門先生、夢がかないましたね!」と興奮気味に言われ、一体何のことかわからずキョトンとしてたら「長澤まさみだったらなーって!」と。その後も何人かの方に言われ、意外とみんなこのセリフが印象に残っていると知りました。このドラマの情報を出した時も「ついに長澤さんですね、古沢さんの夢がかないましたね」と言われ、なんか変な方向に話が広がっている気もしましたが、どうせなら乗っかろうと思ったのでした。新垣さんに伝えたときも「そういうの面白いですね」と喜んでくれてたのでよかったです。

 さて次回は第8話「美のカリスマ編」。りょうさんがとにかくかっこいい。役名は美濃部ミカ。柴本幸さんや堀川杏美さんも出演。
 月曜9時にお会いしましょう。

 ちなみに、三橋監督が「結婚式でダー子とボクちゃんが誓いのキスをしたあと、ボクちゃんが嫌そうに唇をごしごし拭いてるみたいな芝居をさせましょうか」と提案してくださったんですが、僕は「しなくていいと思います」と答えました。僕の中の設定では、あの二人の関係はその程度のものでは……与論邸の部屋に二人で泊っている間にだって……いやいや、やめておきましょう。ご想像にゆだねて。僕の中の設定が真実とは限らない。

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