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同人イベントの発送から見るダンボールの素材のうんちく

同人誌のような「重い荷物」の発送で問題となる、ダンボールの圧縮強度について実際のトラブルから見ていきます。ここまで意識していたらあなたもダンボールマニア!

突然起きたヤマトの「調査中」

ちょうど某一般ショップのイベントに納品しようとしてたときのことでした。

自分「ほーん、今日着くはずだな。荷物の追跡見てみよ」

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自分「なんじゃこの『調査中』って初めてみたぞ」
自分「(ヤマト 調査中 検索)」
自分「ええ、これトラブってるの!? とりあえず電話かけてみるか」

というわけでヤマトのコールセンターにかけてみました。荷物問い合わせはWEB対応していないようで、フリーダイヤルでなかなかつながらなかったです。3,4回かけてやっと繋がりました。状況を話して折返し連絡するとのことで。しばらくすると、集荷の担当店から電話がかかってきて、

ヤ「配送中に配送センターのほうで、上に荷物を載せたときに、ダンボールが上から圧損されてしまって、今お送り先の立ち会いのもとで確認を取っています」
自分「ええっ……」

ここで肝が冷えます。「これ配送中にダンボールが潰れたせいで、受け取り拒否されないかしら」っていう可能性が浮かぶんですね。一応何かあったとき用に本のほうはOPP袋に梱包していたのですが、一般の事業レベルだったら「ダンボールが潰れたせいで受取拒否された」というのも普通にありえる話なので、なきにしもあらずなのです。少なくとも「立ち会いのもと」っていうことは先方に迷惑をかけていることには変わりないので。

実は潰れやすいダンボール

ダンボールが潰れるという現象、今までなかったわけではないんです。即売会の宅配搬入では1,2回ありました。どうも平積みに何個も上にダンボールを乗せる関係で、受け取ったらベコッといっていたケースあったのです。ただそのときは「まあ即売会で搬入するときに乱暴に扱われたのかな」ぐらいに思っていましたし、「潰れても不利益を被るのは自分だけだから」と多少大目に見ていたところはあったのです。

潰れるときのイメージはこんな感じです(ここまで露骨ではないですけど)

ここに出てくる圧縮強度というのが今回のポイント。「どの程度の荷重まで潰れずに耐えられるか」を表すパラメーターですね。ダンボールは角の部分が圧縮強度が高く、中央に行くほど圧縮強度は弱くなります。

自分が使っていたのは底面45cm、幅33cmのかなり横長(底面A3)のダンボールだったため、中央の圧縮強度の弱いエリアが広かったのかもしれませんね。そこに縦長のダンボールが上から乗ると弱点をつれたようにべしゃっといってしまったのかもしれません。

自分はA4の本が多いのですが、世間一般には同人誌はA5やB5なので、縦長のダンボールを目にすることがあります。底面A3のダンボールを使う人はかなりレアではないでしょうか。即売会で潰れやすいというのは角に部分で上の荷物を受けられなくて、中央の部分に出現頻度の多い縦長のダンボールが乗ったからでは? と今になって思いました。

実際の(特に大規模な)即売会の搬入を見ていると、平気で3~4段積んでいることもありましたし、潰れやすい条件は揃っていたのではないかなと思います。ただ、即売会以外で潰れるとは思っていなかったので驚きました。

そもそも市販のダンボールが重量のある荷物に耐えられる設計ではない

今まではホームセンターでダンボールを買っていました。普通ダンボールというとスーパー等で捨てられているのを使う人が大半で、あえて買う人は少ないと思います。

以前は拾ったダンボールを使っていたこともありましたが、サイズの合わないダンボールで委託ショップに納品したら、中の本が角落ちして返品されてしまったという事例が過去にありました。サイズの合わないダンボールというのは、例えばミネラルウォーターのダンボール等ですね。送料節約の観点からも、ちゃんと底面サイズをあわせたダンボールを買ったほうが、不良品出すより安いだろうなということに気づきました。

これまで適当にホームセンターにあったちょうどいいサイズを買っていて材質までは気にしていませんでした。今回ダンボールを調べている過程で、使っていたものが判明しましたが、アイリスオーヤマのものだったようです。

ダンボール  M-DB-100A 

基本仕様を見てみましょう。

・参考用途 底面A3サイズ
・備考 K5AF
・厚み(約) 5mm

ここで備考にある「K5AF」というのがポイント。自分が送っている同人誌はだいたい1箱満載すると20kg~25kgぐらいになりますが、結論からいうとK5AFではこの重量を運ぶのは厳しいです。これは今回調べていて初めてわかりました。

K5AFがなにを表すのかというのを見ていきましょう。

ダンボールの強度を決める素材パラメーターは「フルート」「ライナー」「中芯」

ダンボールの強度を決める要素はいくつもありますが、素材の面に限れば「フルート」「ライナー」「中芯」の3要素があります。ここまで意識している同人作家さんを見たことがないのですが、ここまで考えてやっていたら相当マニアですね。

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図はダンボールの強度計算より。各パラメーターは次のような意味です。

フルート:ダンボールの厚さ。厚いほど強度が高い。Aフルート(5mm)が一般的で、安いのだとBフルート(3mm)がある。
ライナー:ダンボールの波々している部分をサンドイッチしているパンの部分。C5<K5<K6の順にクォリティが上がる(古紙の割合が少なくなる)。良い紙を使うほど強度が上がる
中芯:ダンボールの波々している部分で使っている紙。重い紙を使うほど強度が上がる。よく目にするのは120g(中芯までは書いていないことも多い)。

つまり、先程の「K5AF」とはなにかというと、AフルートでライナーはK5という意味だったのです。

例えばダンボールのオーダーメイドを見ると

Aフルートでは20kgぐらいの重量には向かないという例を見てみましょう。これはダンボールワンというサイトにある、オーダーメイドのダンボール作成の見積もり画面です。

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ここではAフルートは重量10kgが目安と書かれています。20kg以上となると、最低でも5mm強化芯のAフルートか、8mmのWフルートが必要となります。

この画面ではフルートと中芯をあわせて書いてあるので分解しましょう。同サイトのオーダーメイド材質の説明によると、フルート、ライナー、中芯は次の通りでした。

A/F 5mm(両面茶色)・・・表裏ライナーK5 中芯120g
白A/F 5mm(表白色/裏茶色)・・・表ライナー白C5裏ライナーC5 中芯120g
A/F 5mm強化芯(両面茶色)・・・表裏ライナーK6 中芯強化180g
B/F3mm(両面茶色)・・・表裏ライナーC5 中芯120g
白B/F3mm(表白色/裏茶色)・・・表ライナー白C5裏ライナーC5 中芯120g
W/F8mm(両面茶色)・・・表裏ライナーC5 中芯120g

(1)通常のAフルートと(2)強化芯のAフルート、(3)Wフルートだけ取り出すと、

(1) Aフルート / ライナーK5 / 中芯120g
(2) Aフルート / ライナーK6 / 中芯強化180g
(3) Wフルート / ライナーC5/ 中芯120g

となります。中芯の強化180gと180gは別物です(強化180gのほうが強い)。20kg以上は(2)か(3)の条件があったほうがいいよということを言っているのです。

お米のダンボールの制作事例で見ると

20kgぐらいの荷物を発送する事例は本に限ったことではないです。例えばお米のダンボールがかなり事例としては似ています。20kgのお米用のダンボールのオーダーメイド事例では、

ご提案したダンボールの梱包仕様
材質     K6中芯180g強化AF
お米20kgを路線便で発送する際は、
ダンボールの材質は最低でも厚み5mmの
出来れば中芯強化がおすすめになります

先程の例で言うところの(2)のケースですね。やはり「K5AF」で20kg程度の荷物を発送するのは厳しいといえるでしょう。

強化Aフルートか、Wフルートか

強化Aフルートか、Wフルートかどちらがいいか、これは圧縮強度を計算すればいいです。便利なことに強度計算できるサイトがあります。

これから以下の3条件を比較します。内寸はアイリスオーヤマのダンボールを基準に「長さ:44.4cm, 幅:32.4cm, 高さ:21.1cm」で計算します(Wフルートだと宅配サイズをあわせるために少し縮めないといけないかもしれません)。

(1) Aフルート / ライナーK5 / 中芯120g
(2) Aフルート / ライナーK6 / 中芯強化180g
(3) Wフルート / ライナーC5/ 中芯120g

また悪条件に対応するために、内容物の重量は25kg、安全係数はやや悪目で5「箱だけで重さを支える+吸湿の恐れあり」を選択します。

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推定圧縮強度と積載可能段数をまとめると次のとおりです。

(1) Aフルート / ライナーK5 / 中芯120g : 244kgf、2.94段
(2) Aフルート / ライナーK6 / 中芯強化180g : 374kgf、3.99段
(3) Wフルート / ライナーC5/ 中芯120g : 362kgf、3.89段

圧縮強度は、「通常Aフルート<<<<Wフルート<強化Aフルート」となりました。通常のAフルートは3段乗せると潰れるというのは、即売会からの経験でなんとなく理解できます。吸湿度合いがもう少し大きくなると、通常Aフルートは2.4段を持たずに潰れてしまうそうです。

ただし、Wフルートも強化Aフルートもなかなか売っていないというデメリットがあります。特に底面A3は普通でもなかなかいいのが見つからないので見つけるのが大変でした。良さそうなのは次の通りでした。

https://item.rakuten.co.jp/cocodecow/rf5069/

https://item.rakuten.co.jp/aipabox/1000028/

ぶっちゃけ市販を探すのが大変なぐらいなので、最悪オーダーメイドする覚悟でやったほうがいいです。20個ぐらい作ると市販価格+αぐらいに落ち着きます。

例えばダンボールワンでオーダーメイドすると、内寸が「長さ 430mm × 幅 307mm × 深さ 215mm」で強化Aフルートが20枚5280円(@264)、Wフルートが20枚6028円(@301)でした。ロットを増やせば単価は下がりますが、置き場所を取るので注意が必要です。ダンボールのコストは即売会をする上でのランニングコストになるので、送料同様意識していかないといけません。(みんなBoothで買ってくれればこんなこと考えなくていいのに)

オーダーメイドだったら強化Aフルートがいいかもしれません。Aフルートは厚さ5mmなので、折りたたんだ状態で1枚1cm程度でしょうが、Wフルートは厚さ8mmなので16mmもあります。20枚作って厚さ20cmと40cmは保管の面から相当な差になると思います。

今回はWフルートのダンボールを10枚買う(一番上のリンク)で試してみました。

ダンボールをつぶれにくくするためのハック

こんなハックがあるらしいです。さっきの圧縮強度の計算は箱だけで重さを支える前提でしたが、こういうハックを使うともう少し荷重が内容物に伝播してきそうな雰囲気があるので、「箱だけで重さを支える」から「箱と内容物で重さを負担」ぐらいに安全条件を緩和できるかもしれません。

C5・120gのWフルートを想定します。「著しく吸湿する+箱だけで重さを支える」の場合は安全係数7で、3.07段(0.7m)までしか積めませんでしたが、「著しく吸湿する+箱と内容物で重さを負担」まで緩和できれば安全係数は4となり、4.62段(1.05m)まで積載することが可能になります。

もちろん実際の宅配では同じ荷物サイズのダンボールを積むというのはありえないため、この数値は参考程度ですが、5段弱までいければ実際の運用としてはまずまずではないでしょうか。

ちなみにK5+Aフルート+120gでは、箱と内容物で重さを負担することができても、積載可能段数は3.43段(0.75m)でした。重いものを運ぶなのなら、やはりダンボールの素材は強いものを使ったほうが良さそうです。

ダンボールは奥が深い

ここらへんの話はトラブルがおきてから1日ぐらいで調べた聞きかじりの知識ですが、オーダーメイドが簡単にできるのを見ているとダンボールは奥が深いなと思いました。ただの同人イベントの発送なのに、ここまで突っ込んだ話になるとは思ってもいませんでした。ただ、マニアックな仕様のダンボールは注文が法人限定だったりするので、なかなか個人が手に入らなかったりします。

今話題の段ボールベッドも、おそらくこういった圧縮強度の計算があってできているものなのでしょう。

追記:「調査中」となっていた荷物ですが、無事受け取ってもらえました。某ショップの方ご迷惑をおかけいたしました。

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