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足の裏が熱い

足の裏が熱い。
ポーっと発熱している、足の裏が。
身体のほかの部分よりやや厚めの足の裏の皮膚が、熱の発散を妨げている気がする。ああ、この皮膚をはいでしまいたい。

そう思うときがあるのは、今に始まったことではありません。
夜、ベッドの上で横になり、寝ようとウトウトしているころ、足の裏が熱くなります。
ベッドのシーツのひんやりとしたところを探してもぞもぞ。あ、ここは少し冷たい。
でも、それじゃあ物足りなくなって、別の場所を探してごそごそ。
そうしているうちに、発熱がどんどん増していって、しまいには私は逃れようのない熱気がもたらす不快感で足をバタバタして、ベッドを蹴ります。眠りかけで半分くらい意識がないので、イライラした子どもみたいにこんなこともしてしまいます。

半分くらい残っているほうの意識がここで出て来て、私はのっそり立ち上がって、台所、冷凍庫の小さな扉を開きます。そこにはたくさんの保冷材。できるだけ大きなやつを掴んで、ベッドにすたすた戻ります。
ひやっとしたそれを足の裏で挟みます。
それでやっと、イライラしていた気持ちがおさまり始めます。
そしていつも私は、その氷が解けきるのを知る前に、眠りについているのです。

ネットで調べたことがあります。同じ症状の人がちゃんといました。
足の裏が熱くなるのは、実は『血行が悪いから』だそうです。
驚くことに、冷え性な人に多いようです。
実際には足先は冷えていて、温めようと血を集めているせいでかえって熱く感じるのだとか。
そう言われてみれば、足の裏発熱中でも、つま先や足首、ふくらはぎなんかは、冷たいことが多いです。
こういった時には、その原因である冷えを解消するために、足先を温めるのが良いそうです。
そこに書いてあった言葉。
『冷やすだなんてもってのほか!』

そんなことを思い出しながら、今夜も私は保冷材の氷を足の裏に挟みます。
だってこうしたら眠れるし、気持ちがいいんです。
『温めるだなんてもってのほか!』
と眠りかけの頭で思います。
正しいことだけをしていられる私ではないわ、と眠りかけの私の声が言います。発熱する足の裏に氷をあてがって、だんだんと心が落ち着いてきます。
人はダイエット中のストレスをチョコレートで発散するし、親知らずを抜きたてのわずかにしか開かない口でカラオケに行くし、しないほうがましなろくでもない恋をしたりする。
わかっていながら、それでもささやかな正しくないことをする、私はそういう人のことを笑いません。

だって、私だって足の裏を冷やす。

ただただ、『あーあ、やっちゃったね』と思います。
そこには、「だめだよ」と「わかるよ」の気持ちが同じくらい混ざっていて、「でもきっと今夜よく眠れるね」という気持ちも混ざっています。
いつかちゃんと正しいことができるといいけど、それでもまずは今夜眠らなければならない人たち。
どうかおやすみなさい。
足の裏がひんやりとして気持ちよくて、私は今にも寝てしまいそうです。

#エッセイ #健康 #メンタルヘルス

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