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DJ Premierにインタビューした時に垣間見た「アーティストと主催者」の関係

2012年2月 トロント DJプレミア コンサート

もうかれこれ10年程前の話だが、私はトロントのダウンタウンにあるクラブで現地のジャマイカ系カナダ人が主催するコンサートを撮影していた。この日のメインアクトはDJ Premier。90年代~2000年代のラップミュージックを牽引したトラックメイカー/DJだ。プリモの名でも知られる。他のアーティストに楽曲を提供することも多いDJプレミア。彼の創る音楽の世界は、それ自体がジャンルといって良い程の特徴があり、ゲームチェンジャー(ラップ音楽の方向性を大きく変えた)ともいわれる。そんな重鎮であるDJプレミアをコンサート終了後の楽屋に訪れ、短いインタビューをさせてもらった。

気さくなアメリカ人

アメリカ人は気さくだ。これはステレオタイプな意見だが、多かれ少なかれアメリカ人は気さくな人が多いと私は思っている。プリモももれなく気さくな人だった。

良いパフォーマンスの後の楽屋はいつも雰囲気が良いものなのかもしれない。どの人がステージでやっていたのか判らないくらい(実際ステージ上でパフォーマンスをしていたプリモも他のクルーもみな同じような恰好をしていた)楽屋の中は人がいりみだれ、一見してどこに「主役」がいるのかわからない。肌の色や服装がどうみても異質な私に対しても誰も注意をはらわない。すみっこの方に座ってゲラゲラと他愛なさそうな話をしているプリモを見つけ、私は話しかけた。楽屋で一服くつろぎ中、予定外に私からカメラをむけられたにも関わらずイヤな顔ひとつせず、「あっそう、いいよ」てな具合に自分のDJのスタイルについて語ってくれた。

楽屋でのアーティストと主催者

少し経って、主催者である私の知り合いがやってきてプリモと会話を始めた。普通は、というか日本人である僕にとっての「普通」の場合だが、主催者が「今日はほんとうにありがとうございました。最高でした!」みたいに丁寧にプレミア先生に御礼を言うところだと思うけれど、その知り合いはまるで飲み屋で仲間に話しかけるようなテンションで自撮りでプリモとツーショットを撮り始めた。二人を観察すると、プリモにとってもそれが当たり前のようで、お互いはシェイクハンドしてハグして、またそれぞれの会話相手の方に戻っていった。なんというか、とても平等なアーティストと主催者の関係。どっちが偉いということはない。

ヒップホップとはそういうもの

知り合いの主催者を観察して思ったことは、ヒップホッパ―はたとえ相手が大御所でも決して媚びたりへつらったりしない、ということ。これはヒップホップというか北米人、特にアメリカ人に共通することなのかもしれない。それぞれの立場の人がいて誰が偉いということはあまり意識していない。話したい人は話し、踊りたい人は踊り、称賛したい人を称賛する。周りからの同調圧力みたいなものに決してなびかない、それがヒップホップというものだ。

かつて私もアメリカやカナダに居た頃は十分にヒップホップな感覚を持ちあわせていた。8年程まえから日本に住み始め、会社勤めもするようになり、同調圧力にはまるそぶりをしたことも幾度もあった。しかし今フリーランスとなって、結局大事な事はヒップホップの精神なのかと、この文章を書きながら思い出している。人に笑われようとバカにされようと、自分が大事だと思う事をやる。

Rap is something you do, Hip-hop is something you live.
-KRS ONE
「ラップはやることのひとつ、ヒップホップは生き方のひとつ」




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