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自転車レーンを守護する人々の連鎖(2): メキシコシティ、ボイシ、ブリスベン、ブリュッセル、リヨン、ベルリン

2017年に世界的な広がりを見せた、人々が列をなして自転車レーンを自動車から守るアクション。前回はその火付け役と思われるサンフランシスコ、毎週活動しているというダブリン、300名を超える人を集めるに至ったニューヨークの取り組みを紹介しました。

今回と次回は、他の様々な都市における同様の取り組みを開始時期の順で概観したいと思います。筆者の能力上、英語での情報が少ないものについては背景を十分に調べられていませんので、その点ご留意下さい。なおヘッダー画像はツイッターでSpace for Cycling Brisbaneさんが提供して下さいました。

メキシコシティ

メキシコの首都メキシコシティで7月19日に始まったhuman-protected bike laneムーブメント、VallaCiclista。リアルタイム配信されていたらしい動画を見ると、参加者が掲げたボードには「自転車レーンを尊重しよう、人命を尊重しよう」「家族が私を待っている」といったメッセージが書かれています。

VallaCiclistaは12月初旬までに8回目を迎え、その8回目は、約2年前にバスに轢かれて亡くなったMonserrat Paredesさんを追悼するものとなったようです。EFEの記事によれば、彼女はバスと自転車の共用レーンを通行していました。

2016年3月のStreetsblog Chicagoの記事によると、メキシコシティの自転車環境は発展途上ではあるものの、444のポートと6000台の自転車からなるシェアサイクルEcoBiciが運用されていたり、樹脂製のブロックで物理的に保護された自転車レーンが一部に整備されていたりするそう。

ボイシ

メキシコシティの第1回と同じ日でしょうか、アイダホの州都ボイシでも、民間グループBoiseStreetsDeptの呼びかけに応じた人々が中心市街の自転車レーンに集まりました。

8月末にも同じ場所で活動が行われたようです。物理的に分離された自転車レーンの整備を、との声をIdaho Statesmanが報じています

ブリスベン

オーストラリアのブリスベンにも、9月8日の朝にhuman-protected bike laneが出現しました。三角コーンなどを並べて物理的に分離された自転車レーンを一時的に作るpop-up protected bike laneの一部に人々の列が加わった形です。

この活動は老若男女の自転車利用を推進する民間グループSpace for Cycling Brisbaneが市議のJonathan SriさんやWest End地区の住民らの協力を得て実施したもののようです。facebookのイベントページ(ニューヨークの先例も紹介されています)やBrisbane Timesの記事によると、その狙いは物理的に保護された自転車空間の整備への機運を高めること。こうして体験の機会を作って新しい発想を浸透させていくのがpop-up型アプローチの特徴です。同グループは昨年、路上駐車スペースを公共空間に変える世界同時開催のpop-upアクションに参加していました。

冒頭の動画にもあるように、市は9月8日の活動を「無責任なスタント行為」と呼んで非難しました。専門家のチェックを経ていない手作りレーンは危険、との担当者の言葉を前掲のBrisbane Timesの記事は伝えていますが、ストリートビューや次のツイートの比較写真を見る限り、正式なプロセスで設計されたはずの元の道路の方が安全とは思えません。

➝この件についてはろぜつさんも直後にブログ記事を書いておられます

ブリュッセル

9月22日の国際カーフリーデーの直前、ベルギーの首都ブリュッセルにも自転車レーンを守る人々の姿が。現場はイクセルという地区のワーヴル通りで、地図で見ると王宮のすぐ近くです。

写真をツイートしたGeoffreyさんが教えて下さったところによると、活動は自転車レーンの保護が交通の安全性と円滑さの両方に寄与することを示すためのもの。オーガナイズしたのは、日常の足としての自転車の利用を推進するグループCyclistes Quotidiens(英語にするとEveryday Cyclistsでしょうか)とそのイクセル支部だそうです。

リヨン

9月21日の朝にはフランスのリヨンでもアクションがありました。Lyon Capitaleの記事によれば、同市における自転車利用を推進するグループLa Ville à Vélo Lyonの呼びかけで50名近くが参加。目的は「お祭りのような雰囲気の中で、自転車レーンを尊重するよう自動車ドライバーに伝えること」だそう。実施場所となったガンベッタ通りは毎日6000人の自転車利用者が使うルートとのことですが、自転車レーンへの路駐が常態化しており取り締まりも行き届いていないようです。

次のニュース動画のYouTubeページに書かれた説明文には「リヨンでは自転車が現実的な移動手段として選ばれるようになってきたが、自転車レーン上の駐停車があまりにも多く自転車利用者に不利益をもたらしている」とあります。

フランスの有力紙ル・モンドもこの活動を記事にしています。三角コーンによるDIY分離が行われたナントの事例なども。

ベルリン

カーフリーデー当日でしょうか、ベルリンでも自転車レーンを保護する人々がバルシャウアー通りに現れました。

動画の箇所は、ストリートビューで見ると2008年には歩道、自転車空間、駐車帯、車道というレイアウトになっています。(狭い)自転車空間と歩道が隣接し高さも殆ど同じだったのですね。ツイッターでFarhadさんが教えて下さったところによると、路面が悪く歩行者の立ち入りもあって使いにくかったそう。駐車帯が廃止され荷物の積み下ろしスペースが(別に?)設けられたとのことですが、車道脇に移された自転車空間への駐停車も生じているようです(それゆえのhuman-protected bike laneだろうと思います)。以前のレイアウトのまま、設計を洗練されたものにするべきだったのかも知れません。

今回の締めくくりに、同じベルリンの「ぬいぐるみで保護された自転車レーン」を紹介しておきます。これは民間プロジェクトVolksentscheid Radによると思われる、2016年12月の取り組み。同プロジェクトの目標は、ベルリンをお年寄りや子供も安全に暮らせる自転車の街にすること。一部の「サイクリスト」だけのためではない自転車環境向上の動きは、既に世界的な潮流となっているようです。

次回はポートランドから

3か国、5都市の事例を辿り、シリーズ完結です。


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