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サンフランシスコのドックレス型シェア自転車JUMP Bikesが良い感じ

いきさつ

3月にカリフォルニアに行きました。サンフランシスコからLAへモーターサイクルでツーリングするのが主な目的。ついでに、各地の自転車関連インフラやサービスを見られたら良いなと思っていました。北米西海岸で自転車利用が盛んな都市というとバンクーバーやポートランドが有名ですが、自分が実際に訪れたことのある中では、シアトルやサンフランシスコも自転車の存在感がある街です。

この地図は地元の自転車利用推進団体San Francisco Bike Coalitionが作成しているBike Mapで、どの道がどんな自転車インフラを備えているかが把握できるようになっています。自動車の流れから物理的に分離された自転車空間はまだ海岸沿いや公園内といったレジャー寄りのものが殆どで、ニューヨーク中心部のような感じではありません。その点では北米の中でも(やや)遅れを取っているサンフランシスコですが、より安全安心な通行空間を求める市民の声は強く、2017年には自転車レーンを人の列で守る活動がここから世界各地に伝播しました。

赤い自転車との遭遇

そんなサンフランシスコで今回の滞在中に目を引いたものの一つが、鮮やかな赤のシェア自転車です。

調べてみたところ、JUMP Bikesというドックレス型シェアバイクでした。電動アシスト付きで、スマートフォンのアプリと車体後部の端末を操作して利用します。端末の下には専用のU字ロックが通り、返却時はこれでエリア内の何かしらの自転車ラックに固定する、という決まりになっているようです。市の交通当局SFMTAのブログ投稿によれば、電柱や標識の支柱への固定もOK。住宅のフェンスなどはダメです。

公式ブログの投稿によると、JUMP Bikesは1月にSFMTAの認可を受け、250台からサービス開始。Bike Coalition会員の方から伺った話では、年内に250台を追加導入する計画になっているそうです。導入1台あたり自転車ラック2つ分の設置費用を市に支払っているとのことで、なるほどなと思いました(詳しい資料は未チェックです)。

そこそこの登りを伴うゴールデン・ゲート・ブリッジへのアプローチでもJUMP Bikesの姿を見かけました。坂がちなサンフランシスコでは電動アシストが活躍しますね。赤い橋に赤い自転車。青い空。良い雰囲気です。

乗ってみた

自分でも使ってみました。まずはスマートフォンにアプリを入れてクレジットカードを登録。近くにある車体はマップ画面で探せます。乗りたい車体を予約することも可能で、その場合は予約した時点から料金が発生します。2018年4月現在の料金は最初の30分までが2ドル、以降は1分7セント(30分で2ドル10セント)。増え方が一定かつ小刻みなので知らないうちに高額になってしまう不安がありません(車体後部の端末やアプリでも金額を確認できます)。

サンフランシスコ市内中心部は概ねJUMP Bikesのエリアに入っています。返却したのがエリア外だと25ドル、ラック等にロックされていないと25ドル、私有地などの禁止場所だと50ドル、車体が利用中に盗まれて見つからないと1600ドル、等のペナルティー的なものも予め把握しておきたいところです。

平地や緩い坂は電動アシストでグイグイ進みます。それでも激坂は大変。変速は内装8段だったような。借りたのは日曜日だったので車の流れは穏やかでしたが、インフラ面は塗装のみのレーンや車道混在マークのみのところも多く、子供や高齢者でも安心して自転車に乗れる環境とは言えません。

ゴールデン・ゲート・パークへと繋がっているパンハンドルで自転車ラックに固定し返却、その後は徒歩でハイト・アシュバリーをぶらつきました。専用ポートでなくても返せるのは実際とても便利でした。延長料金を気にしながらポートを探す必要がなく、かといってどこにでも乗り捨て可能なわけではない、というJUMP Bikesのルールはバランスが取れている感じがしました。

GoBikeとの比較

サンフランシスコにはFord GoBikeというドック発着タイプのシェア自転車サービスもあります。ニューヨークのCiti Bikeと同様のシステムで、運営会社も同じようです。自動車大手のFordが看板スポンサーというのが交通政策の視点では興味深いところ(なおJUMP Bikesも4月にUberの傘下に入りました)。

公式サイトによれば、車体の数は2018年内に4500台に達するとのこと。ポートは街の背骨である大通りMarket Streetを中心に配置されていて、レジャー寄りのエリアには殆どありません(画像は専用アプリの地図)。レジャー用には従来型の貸自転車屋が存在するので、競合を避けているのかも知れません。

こちらも自分で使ってみましたが、旅行者向けの料金プランが1度きり利用3ドル、1日パス9.95ドル、3日パス19.95ドルで、いずれも利用時間が30分を超えると15分あたり3ドルの追加料金が発生します。返却先のポートを探すことを考慮すると、追加料金が生じないのは実質20分~25分くらいの移動までです。JUMPは何かしらのラックがあれば返却できますし(標識の支柱でもOKらしい)、30分を過ぎても払う金額は1分毎に7セントですので時間の区切りを意識して慌てる必要はありません。JUMPとGoBike単発利用プランの料金推移(利用開始30分~2時間)をグラフにすると両者の差がはっきりします。

4回以上の利用で得になる1日や3日のGoBikeパスも、天候などの理由で無駄になる可能性があります。自分は事前に(専用アプリからクレジットカードで)3日パスを買っていたものの、結局1回しか使いませんでした。すごく高い単発利用をしたようなものです。ほぼ同じ費用で、JUMPだったら10回、時間にして300分(5時間)は乗れた計算になります。最初から知っていれば・・・。

そんなわけで旅行者目線では断然JUMP Bikesがおすすめですが、もちろんそれだけで評価してはいけませんね。GoBikeは年間会員になると149ドル(1日あたり約41セント)で45分まで追加料金なしですので、日々の足として利用する人がメインターゲットだということが伺えます。低所得者向けのプランが用意されている点にも社会インフラとしての本気度が現れていると感じました。

まとめ

JUMP Bikesは、ドックレス型シェア自転車の利点を活かしつつ無秩序状態にならないよう上手くコントロールしている優れたサービスだと思います。長く乗っても極端に高額にならないシンプルな料金体系が、旅行などの短期滞在とも好相性です。ドック型のGoBikeにもサンフランシスコで働いている人や生活している人の交通手段としての役割があり、料金もそこを軸にチューニングされているとの印象を受けました。これからのシェア自転車を考えると、一気に大規模展開しなくても利便性が損なわれないドックレス型が有利な気がします。そしてやはり、安全安心な通行空間の存在が重要ですね。


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