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劇場版少女歌劇レヴュースタァライトネタバレ感想①もしくは大場ななに捧げる憧憬


以下の文章には全て劇場版少女歌劇レビュースタァライトのネタバレを含みます。
視聴後の方・ネタバレをされても構わないという方のみご覧ください。

素晴らしい作品ですので、まだ観ていないという方には、ぜひ『劇場版・少女歌劇レヴュー・スタァライト』を人生のどこかで体感することをお勧めします。


※私はアニメ・少女歌劇レヴュースタアライトを観て、熱を上げて追加で2周して、スタリラには手を出さず、舞台も観ていないという状態で劇場版に臨みました。

以下、熱量のみでお送りします。


○冒頭


・今回一番言いたいこと→信じてたよ大場なな でもずるい 羨ましい ひどい

・冒頭映像からパワーがすごい。演出で殴りがかってこられてびっくりした。華恋ちゃんの作画がありえん良い。かわいい。トマトの時点で今回は考察オタク人格がきゃっきゃしちゃうやつだな〜と思い背筋正して見ました。大場ななのせいで何もかも崩壊したけど……。

・進路、なるほどと思って見ていたが、大場ななが「決められないんです」(にこっ)をやった時、この人全然迷ってないな……と思いました。実際進路どうしよう……みたいなこと考えてなかったみたいですね……。それよりもっと思うことあったんですもんね……。流石です。

・しょうもな。香子ちゃんはかわいいなあ。いい子ですね。まひるちゃんの「どういうこと?」の詰めかたがちょっと怖くていい。まあそう聞くよね。

○「皆、喋りすぎだよね」


この台詞を聞いたとき、呼吸が止まるかと思った。
ああ、大場ななは、やっぱり大場ななだったんだ。アニメはなんかいいかんじにまとまっていたけれど。そうだよね。あなたの思想は、理想は、死んでいないんだもんね。もっといい再演を。そう言われて納得したのなら、「もっといい再演」「もっと」「もっときらめて」くれないと、いけないよね。

皆、と言うとき、そこに自分は含まれていない。舞台の外側から、皆の外側から、見ている。大場ななはずっと見ていた。見るということは評価するということでしょう。怖い。好きだ。彼女は傲慢なようだけれど、いえ、正しく傲慢なのだけれど、徹底して観測者の自意識を持っているように感じられる。自分が輝くことに対する執着よりも、いいもの(舞台)(きらめき)が観たい、それを大切にしたい、守りたいという気持ちが強い大場なな。では、もし、いいものではなかったら?その答えが今回の映画では語られている。というか見せつけられる。

アニメ版・第七話「大場なな」EDで、彼女は唯一歌っていない。インストだった。「皆、喋りすぎだよね」である。思想だ……。でもわかる。皆、喋りすぎだよね。ね。

・電車でも華恋と仲良く話す大場なな。この中では華恋だけが大場ななと同じ、先を決めていない存在。だから、進路を、「現実というものを見てしまって」つまらなくなってもいない。なので大場ななは華恋ちゃんとは会話できるんですよね。ここでもバチバチに人を選んでいる。

○「今は、よ」


電車で、純那ちゃんがクロディーヌと話していて。「あなたたち(真矢クロ)には敵わない。でも、今は、よ」と、純那ちゃんはこぼしてしまう。
これはとても前向きな、綺麗な言葉だ。今は敵わなくても、いつかきっと並び立つ。いや、追い抜いてみせる。そんな意志を感じられる、未来へのきらめきや期待を乗せた言葉だ。

そうだね、いつかきっと、スタァになれるね!純那ちゃん!!

……ねえ、本当にそれでいいの?
いつかって、いつ?その未来は、本当に来るの??今は、いつか。そんなことを言っていて、本当にいつか勝てると思うの?わかってるよね、「それ」を続けたら、どうなるか。

私の純那ちゃんは、そんなこと、言わない。
わかってないなら、教えてあげる。

という気持ちに、大場ななはなったのではなかろうか。(妄想です)
気持ちの綺麗な落ち着けどころを、覆しがだい敗北の現実を飲み込むやり方を見つけてしまった純那ちゃん。そんなの、許せないよね?そんなの、くだらないよね?
足掻いてもがいて苦しんで、血を吐いてでも諦めない。それがあなたのきらめきだったのに。

あーあ。そう。

この怒りが、ワイルドスクリーンバロックの開演に繋がったのではないかと思う。なんなら少し早まっていたのではと。タイヤは遅れてやってくるし、剣も後からくる。準備が整う前に、大場ななは始めてしまった。キレちゃったから。

・純那ちゃんがこの台詞を言った後、大場ななが純那ちゃんをじっと見るシーンがあり怖い。

○皆殺しのレヴュー


もう、震えたよね。
レヴュー名が左下に出た時、こんな理想みたいなことがあっていいのかと思った。皆殺しのレヴュー。なんて素敵で、甘美で、確かな響きなんだろう。
主演で演じるのは大場ななしかいない。映画館に来たことを神に感謝した。期待と興奮でおかしくなっちゃうかと思いました。

・電車、つり革、タイヤ、レヴューへ の映像シーン、イクニイズム感じましたね。よかったです。

・誰よりも先に「なな」と言葉を発する純那ちゃん。自分よりも前にいる真矢クロが、大場ななを視認するより早く。

・逆光。それだけでわかる。演出の美しさが詰まっている。

・足でトントンってリズムとるのめちゃくちゃかっこよかった!!!!苛立ち表現でもあって最高。怒っている大場ななが一番かっこいい。綺麗。似合う。酷薄で冷酷無比な振る舞いしてほしい。大場ななに人殺し(概念)してほしいもんね……。ありがとう劇場版スタァライト……。

・やっぱり大場ななの舞台少女衣装好き、白は血が映えるね!!!

・気に入らないものに対して気に入らないってキレてるところが好き

・じゅんなちゃんに刀投げるのいい。只者じゃない投げ方。アクションが全体的にとてもかっこよかった。スピード感ある殺意でしたね。

・余裕の振る舞い。簡単に、他愛無く、次々と上掛けを落としていく。切れない息、危なげない戦い姿。立場の違う者として君臨するかっこよさ。

○選んで殺す「皆殺し」

皆殺しのレヴューではあるが、天堂真矢は殺されていない(上掛けを落とされていない)。
なぜか?これは天堂真矢が返事をしたから、台詞を返したからだと思われる。

「電車は必ず次の駅へ。では舞台は?私たちは?」

舞台人として「次」を理解していた真矢さまは、大場ななの審査に合格したのだ。(多分)
ということで、これは適当な八つ当たりではなく(いやまひるちゃんとか結構巻き込まれてない?別に全然殺される必要なくない?めっちゃ次の舞台へやる気満々だったのでは……)、客観的に大場ななが死ぬべきと判断した人間を殺害していった皆殺しなのである。最悪。最高。
ちなみに大場ななは天童真矢に別に興味ないので、台詞が返ってきてもそんなに嬉しくなさそう。悪い。

もちろん、舞台少女として死なないために一度殺すという意味もあるだろう。スタァライトのテーマの一つは「再生産」。死は終わりではない。なので死体陳列シーンとか出てくるんですけども(あそこ最高でしたね)

・死体陳列シーン、足?靴?のところで切れていて血が溜まっているのとても好き描写でした。

「私たち、もう死んでるよ」の美しさ。劇場版で一番好きなシーン、この皆殺しのレヴューでした。

○「なんだか、強いお酒を飲んだみたい」


怖い。
何度も投げかけられる台詞。そう、これは台詞ですね。繰り返される。まるで本当に酔っているかのような、目の焦点あってなさそうな、ふわふわとして、そして据わった目の……。楽しくはなさそう、でも正気でもない。気分は良くないが、正気ではないから、じゃあ、この勢いで、やっちゃうね(殺)大場なな、寝相も酒癖も悪いの、いいな……。

お酒。大人というイメージを連れてくるものでもあるので、大場なな/それ以外の舞台少女、で大人/子ども、レヴューについて知っている者/知らない者、というのを表しているようにも見える。啓示的ですね。

さらに、進路希望〜電車内にかけての皆の様子は、未来への期待、新国立への憧れに「酔った」ようにも感じられる。熱気に当てられて気持ち良くなってしまって、浮ついてしまっている。まるでファン。

お酒を飲むと口が緩むなんて言われることもあるし、「皆喋りすぎ」に繋がってもいるのかも。だって大場ななも今から喋りますからね。全然説明してくれないですけど……。

で、これは台詞です、だと思います。
それに対して、かわいくて真面目な純那ちゃんは、

「何言ってるの……?私たち、未成年じゃない……」

と返してしまう。マジレスだ。流石だ……。でもそういうことじゃないんだよ……。

ここで「なんだか、強いお酒を飲んだみたい」(繰り返し)「だ〜か〜ら〜、なんだか、強いお酒を飲んだみたい」と大場ななも返しているので、意図が伝わらないことに対しての苛立ちを露わにしているのかなと。あの「だ〜か〜ら〜」、理不尽すぎて最高でしたね。そして全くわかることができない純那ちゃん、すごく純那ちゃんだなって思った。
わからないところが好きなくせに、わかってくれないと苛立つかわいい大場ななポイント。(個人的見解です)

そして殺害。

なんて素敵な光景なんでしょうね……。
吹き出す血、驚いて何もわからないまま「殺されて」しまう純那ちゃん。
純那ちゃんって絶望が似合いますよね……。わからないまま「え?」って殺されるの、本当に似合う。愛しいね。

そこからの真矢さまの「狼狽えるな!」本当に良い。軍人、上官、指揮者、カリスマ。強い。真矢さまの強さは芯がある強さ。高潔な人間のように感じられますね。
額から血が垂れてたのかっこよかったですね。

香子ちゃんは死体になっているのが似合いますね。お人形さんのような綺麗な死体。動かないもの。飾られるものの綺麗さがある。
お人形のイメージは、ある種家に縛られている(もちろん選んだ道でもあることは重々承知しています)ところから来ているような気がする。しがらみというのは勿論あるだろうから。
名を襲名していくのであれば、花柳香子は花柳香子ではなくなるわけですし。うちはうち!ですが、そういうことを考えてしまった。
全然考察ではないけれども、透明な糸とかで複雑で綺麗な形に吊るされてるお人形さんぽい死体の香子ちゃんという幻想、あると思います。
存在が綺麗なんよね。

○wi(l)d-screen baroque


「ワイルドスクリーンバロック」については後述したいので置いといて、歌詞の話まで。
大場ななの低い声、あどけない声、乱れない息、突然威圧感増す歌い方。本当に素晴らしいお歌でした……。
ららら、って言ってるところあどけないの良いですよね。結構曲自体不思議な構成で本当に好き、よかった……。


wi(l)d-screen baroque

あなた わかりますか
ルールが わかりますか
ワイルドスクリーン・バロック
歌って踊って奪ったでしょ

命 壊れた 花と散れ
それから 次は次は次は
あなたは何処へ

やめるか?どうした?
退屈だ その程度か 口ほどにもないな
逃げの言い訳にはどれもこれもならない
ならば 降りても舞台には 言葉だけじゃ足りないの
わかってる? ねえ 本気出そうよ

ワイルドスクリーン・バロック
自然の摂理だよね

美しきマドモアゼル そこに野生はあるのか
最後まで生き残るのは
誰かが誰かの血となり肉となれば
生を諦めて
生きる 生きない 生きる 生きない 生きたい



「やめるか?どうした?
退屈だ その程度か 口ほどにもないな
逃げの言い訳にはどれもこれもならない
言葉だけじゃ足りないの
わかってる? ねえ 本気出そうよ」

ここ好きすぎる。怖い。最高。
野生がテーマ、飢えてほしい、渇望して、足掻いて、見せてよ。純那ちゃん。みんな。

②に続く

多分続きます。


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