【前編】なぜ、音大の「授業」で学んだことが演奏に活かせないのか? ~和声の知識を活かした演奏をするために重要な2つのポイント

――「授業でやった記憶はあるけど、忘れちゃった!」という"そこのアナタ"のために書いた記事です。

)実技レッスン(専科、副科、アンサンブル等など)
)音楽科目の授業(ソルフェージュ、音楽理論系、歴史系など)
)一般科目の授業(語学含む)
)教員免許状の取得に必要な授業

卒業生の方にとっては、懐かしい話ですよねえ。そもそも日本の音楽大学で得られる「単位」は、おおよそこの4種に分類できます。なかでも、中心となるのは毎週の実技レッスン。専攻のレッスンを中心に一週間がまわっているといっても過言ではありません。

レッスンで学んだことは演奏することを辞めない限り、卒業後もアナタの身をたてる味方となってくれていることでしょう。ところがレッスンに比べると「授業」で学んだことは卒業後、あまり活かせていない……という声をよく耳にします。

その筆頭に挙げられるのが必修科目になっていることが多い「和声」と「音楽史」ではないでしょうか。

近年でこそ、違う教科書を使う学校も出てきておりますが、未だに音大の和声の授業といえばやはり赤黄緑のこのシリーズ!(通称:芸大和声)。音楽史の授業は教科書を使わず、プリントや板書で進められたかもしれませんが、大学院の受験時にグラウト/パリスカの音楽史にお世話になったという方もいるかもしれません。

こうした授業について「受けたことは覚えているが、内容は限りなくうろ覚え」という方が多いのは何故なのでしょうか? それは……

――「知識」は教わっても、「知識の使い方」は教わっていない

この一言に尽きると思います。例えば、和声 harmony を実習――教科書をもとにして、五線譜上に4声体を組んでいく――して知識やスキルが身についても、それを自分の演奏にどのように活かせば良いのかは授業で(多くの場合、レッスンでも!)教えてくれないのです。

和声の知識を演奏を活かすためには、どうすればいいのか?……その主な方法を今回は2つご紹介してみましょう。

基礎編1)トニック、サブドミナント、ドミナントの機能を知る

和声の授業で出てきた「T」「S」「D」の記号を覚えていますか? それぞれトニック(T)、サブドミナント(S)、ドミナント(D)の機能を表す略記として使われているものです。

「和声のことはあんまり分からない」という方でも、おそらく「ドミナント」で緊張して、「トニック」へ解決する……ということぐらいはご存知かもしれません。緊張と緩和で音楽が前へと進んでいくわけです。

ところが、ここで落とし穴がひとつ待ち受けています。何も説明されていないサブドミナントはどう演奏すればいいのでしょうか?

実は、音楽的なフレーズをつくる上で、最もエネルギーを溜め込むのはドミナントではなく、サブドミナントであることが多いのです。何故ならドミナントというのは、そのドミナントの和音を弾いている時点で解決へ向かう予兆があらわれていなければ、ドミナントとしての機能を十全に発揮できないからです。

一番分かりやすい例は、古典派の協奏曲におけるカデンツァ直前のオーケストラパートかと思います。カデンツァ(独奏楽器によるソロ)が開始する前、オーケストラの最後の和音は通常「Ⅰの和音の第2展開型(つまり「ドミナント」)」となっており、この和音に入った瞬間、解決の予兆が聴き取れるかと思います。

【譜例1】で示したショパンの幻想ポロネーズも、楽曲の頂点をSからDの流れで形作っています。

【譜例1】ショパン作曲:幻想ポロネーズより

譜面上は「Ⅰの和音の第2転回形(D)」に入った瞬間にsempre ff(常に非常に強く)と書かれているわけですが、緊張と緩和という意味では「Ⅱ7の和音の第1転回形(S)」の方に軍配があがります。その秘密は、赤丸の付いた二つの音にあります。

クラシック音楽の中で用いられる和音の大部分は、音を3度の音程で積み上げることによって作られており、4つまでの積み重ね(いわゆる七の和音)は普通に頻出しますが、それより上に重ねた音は「テンション」と呼ばれ、よりエネルギーを持つ傾向があります。

【譜例2】

先ほどの【譜例1】において「S」と書かれた部分の和音を抜き出すと、【譜例2】のようになります。そして、黒玉で書かれた「ド」と「ソ」の音が先ほど説明したテンションになり、【譜例1】の赤丸で囲んだ音と一致するわけですね。

このテンション(9度と13度)をメロディーラインに持ってくることによって、クライマックスの盛り上がりを演出し、D(ドミナント)に入ってからは基本的にシンプルな和音が続きます(あえていえば、バスのラインに経過音などが登場するが、和音としてのテンションは高くならない)。

もちろん「T」「S」「D」と分析するだけで、すべてが綺麗に説明できるわけではありません。しかしながら、音楽の持つニュアンスをより正確に、より適切に捕まえるヒントを、和声の知識を用いることで手に入れることができるのです。

そして、2つ目のポイントは……

基礎編2)「形式」を適切に把握するためには「和声」と「音楽史」の知識が必須!

⇒ ここから先は【後編】へ

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小室 敬幸

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