見出し画像

「本当に顧客が欲しいもの」を明らかにするには - 顧客開発というロジカルな顧客理解

会議室で繰り返されるこんな会話に聞き覚えはないだろうか。

「この課題で困っている人が多いに違いない」
「あの顧客はこんなサービスを欲しいと言っていた。だから必要なんだ」
「これは社会に必要で、きっと求められているに違いない」

このまま作り始めてしまう企業(特にスタートアップ)は意外と多いのではないかと思う。そして大体の場合失敗する。うまくいったらいったで、天性のマーケターでないかぎりは、次は失敗する。

特にスタートアップにとってだが、使える資金も少ないのに、失敗はかなりの痛手だ。だからこそリーン関係の本は、起業を考える人の必読書にまず間違いなく挙げられる。

では、どうすれば「売れない」リスクを最小化できるだろうか。おそらく想像がついたと思うが、顧客を知ること。実際のところ、問題はどのように顧客を知っていくか、である。

調査するだけでなく、学習する

顧客調査は、ただインタビューしておけば良いわけではない。とりあえずきいてみよう。まずはアポをとって......と始めてしまいがちだが、結構ロジカルに進める。

まず、現状の自分たちの想定を明らかにする。今回は顧客調査がメインなので、「顧客像」についての自分たちの考えを洗い出す。

その次に、実際に調査をする。調査対象者の見つけ方だが、知人に顧客と思わしき人を紹介してもらうのもいいし、オフラインとオンライン双方で(自分たちが解決しようとしている課題、あるいは類似の課題を抱えている)人が集まっているところを見つける。

とくに最近は様々なサービスがある。ブログやオンラインフォーラムなどは昔からあるものだが、場合によっては有効だろう。特に10年ほど前から発達が著しいのがSNSで、頻繁に更新する人もいる。うまく使って、顧客との接触を試みよう。

調査が終了したら、結果を確認する。これをしないと、調査をした意味がないも同然。わかったことと、まだわからないことを考えて、次の仮説構築へと進む。

自分たちにとっての「顧客」に会う方法

ところで、「顧客」とは誰のことだろうか。製品の購入者やサービスへの登録者すべてが顧客と考えているのなら、それは間違いだ。もし「間違った顧客」の声をきいて開発をしてしまえば、作ったけれど誰も利用してくれないことになりかねない。

『リーン顧客開発』によると、探し出すべきなのはエバンジェリストだ。キャズム理論で言われる「イノベーター」「アーリーアダプター」が顧客と思ってしまいそうになるが、彼らは厳密には顧客ではない。ただ新しいテクノロジーやガジェットが好きなだけな可能性が高い。

また、「ペルソナ」を作ることはとても大事だとは思うが、顧客開発が不十分な場合、あくまで自分たちが思い描いているだけの像にすぎない。調査を進める中でペルソナもしっかり管理、修正する必要があるだろう。

僕たちが本当に耳を傾けるべきは、「課題を解決したいと熱心に思い、かつ実際に試みている人」。いきなり見つけることは難しいかもしれないが、仮説検証を続けていけば、次第にアプローチすべき層と相手が見つかるだろう。

プロセスを明らかにするように質問をする

質問に絶対の正解はないにしても、効果的なアプローチはある。方法の一つとして、プロセスへの注目を紹介する。

重要なのは、顧客が「どのようにその意思決定をしたのか」「何を解決しようとしていたのか」だが、結果や機能だけではそれがわからない。点ではなく線を知ることで、思わぬアイデアが浮かんだりする。もっと良い解決方法を提案できる。

このあたりの感覚を研ぎ澄ませるためにも、『ジョブ理論』に一度目を通しておくと良い。一言で言えばシチュエーションに注目するマーケティング理論、だろうか。データだけでは足りない部分を補ってくれる考え方だ。

行き当たりばったりになりがちな製品 / サービス開発を避ける方法を知ることができるし、そのために顧客の行動プロセスを知る意味も理解できるだろう。

話を聞いて満足するインタビューは意味がない

インタビューをする前、特に慣れていない場合には、少なからず緊張しているものだ。インタビューを終えると緊張の糸がほどけて、安心と疲れを感じる。このまま終えたことに満足してしまいがちだが、忘れないうちに振り返りをすることが大事だ。

どんな項目について振り返れば良いか、挙げ始めるとかなりの数の項目があるので、下記の3点にまとめてみた。

1. 質問の仕方、話の聞き方
2. 相手の反応
3. 知りたい情報は得れたのか

大まかにはこれらの項目について振り返れば、次には活かせると思う。この中であえて一番大事なものを選ぶとすれば、1だ。特に質問の仕方だが、うまく質問が組み立てられない場合、肝心なことが何もわからない結果になりかねない。

最初から完璧にできることはない。だからこそのフィードバックだ。しっかり質問の仕方について振り返るようにしよう。インタビュー音声をとることにはデメリットもあるが、個人的には最初のうちは録音するようにしておくと、自分の質問の仕方や、掘り下げるべきポイントを客観的に考えられるので良いと思う。

顧客をインタビューする前に理解しておくべきこと

最後に、インタビューをする上で重要なものの見方を紹介する。せっかくのインタビューが無駄にならないように、まず思いこみを捨てて「顧客」という存在の傾向を理解しておく必要がある。

下記は、『リーン顧客開発』の中で説明されている。かなり重要だと思ったので、項目だけでも引用して、紹介させてもらう。

・顧客は、文化的、時間的、物理的な制約を受けていることを知っているが、そのことに自発的に言及しようとはしない
・顧客は過去に試みて失敗したことを覚えているのに、あなたに話すのは忘れてしまう
・顧客は(少なくともある程度)自らの能力の程度やその限界を認識しているが、それを自主的には話さない
・顧客は使用しているツールやプロセスに詳しいからといって、仕組みを理解しているとは限らない
・顧客は自分が何を欲しいのかをわからないかもしれないが、必要としているものは隠せない

■ 大前提
理解しておくべき大前提は、「顧客は自分が欲しいものが何かわかっていない」ということだ。びっくりすることだが、顧客からのフィードバックをもとに開発した製品を当の顧客が購入しないことは十分あり得る

だからと言って「顧客の言っていることは間違っている」わけではもちろんなく、インタビューも無駄にはならない。むしろ、「わかっていない」という前提に立たない場合にこそ、自分と顧客にとって損失が発生する。

前提を理解しておくことで、顧客の言うことを鵜呑みにすることもなくなり、本当に顧客の役に立てる。必ず頭に入れておくようにしよう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?