公務員をやりながら「#起業しろ」と思う、たった一つの理由

起業の構造を理解する

一般的に、起業するときは会社を辞めるじゃないですか。それで、貯めた自己資金を元手にフルコミットして、外部から出資してもらったり、借入すると思うんですけど。

まず大前提として、「起業」は当たるか当たらないか本当にわからない。というか基本、当たらない。「千3つ」と言われますが、1,000回やって3回当たるかどうか。

日本には会社が200万社あって、上場してる会社は3,000社なので、上場できる確率は0.15%。非上場でうまくいってる会社も含めて、高収益な事業になる確率は、まさに「千3つ」の0.3%ぐらいです。

だいたいの起業家はピポットして事業を変えて、結果として成功するし、最初のアイデアが当たる確率なんて、ゼロに近い。

前職のガイアックスは名証セントレックスに上場してたんですが、代表の上田さんが創業6年半で、30歳の時に上場した。それで注目されてたし、今でも「30歳までに上場を達成した経営者一覧」に載るんですけど、そこに載ってるのは20人ぐらいしかいない。

そもそも東証マザーズに上場するのに、創業してから平均で11年ぐらいかかってるんですけど、「千3つ」の世界においては、残念ながら1000人いたら997人はそうはなりません。

だからやるときは「絶対成功させてやる!」と思ってやると思うんですけど、確率的にはだいたいの場合でお金が吹っ飛びます。そもそも失敗確率の方が明らかに高い勝負、という理解は必要ですね。

安心して好きなことに取り組むと成功する

一方で997人は失敗するから、やめたほうがいいよ、という話ではなくて(これを書いてる私も会社を創業してますし)。

逆に会社を創業して、大きなことを成し遂げたいと思った時にどうするのが良いか?

サラリーマンや公務員をやりながら、安定している状態でやった方が良い」というのが今日の話です。

リスクを減らすという観点だけでなく、大きなアップサイドを得たいという観点においても、チャレンジをする人は安定してる必要がある。

例えば、アインシュタインは「相対性理論」を特許庁に勤めながら発表してるんですよね。年俸3,500スイス・フランをもらいながら、仕事もそんなに忙しくなかったので、好きな物理学に取り組む時間がたっぷりできた。

1905年は物理学上の「奇跡の年」とも呼ばれていて、その後の数年も含めて、アインシュタインが重要な論文を5つ発表した。でも、全部、9時5時の仕事をしながら、夜中に書いてたんですよ。

近い例で言うと、フランツ・カフカも保険局に勤めながら小説を書いていた。遺伝学の始祖・メンデルも修道院で司祭をやりながら遺伝の研究をはじめて。その後、教師に転職した後に、教師をしながら、エンドウ豆の実験をして、結果、歴史に名を残した。

彼らは基本的に生活の心配が一切ない状態で、自分の好きなことにフルコミットしている。かつ、自分が好きなことと仕事の評価が一切紐付いていないから、外からの評判を気にする必要もない。

なぜなら相対性理論の論文と特許庁の仕事は全く関係ないし、カフカの小説と保健局の仕事も、教師の仕事とエンドウマメの遺伝も全く関係ない。

最近の言葉でいうと「心理的安全性」の高い状態でチャレンジをしてるんですよね。

安心して好きなことに取り組んでいる。これが超重要だと思います。これがあることによって打てる、打ち手が変わってくる。自然と、より大胆な打ち手ができるようになる。

フルコミットでの起業では、大きく考えられない

彼らの例からわかるのは、何かをやろうと思った時に必ずしも今やってることを辞めてフルコミットする必要はないということです。

人間の思考パターンというか社会の風潮なのかわからないですけど、今やりたいことをやれてない時に、まず辞めようとするじゃないですか。会社を辞めてフリーランスになるとか、大学を辞めて起業するとか。

だけど、むしろ今やってることは辞めない方が良い。

なぜなら、銀行の残高がガンガン減っていく状況で、人は大きな打ち手を打てない。目先のこと、短期的なこと、生きるための動きをするようになります。

一方、9時5時で出社していれば、定期的な収入が毎月40万とか50万とか振り込まれてくるわけですよ。半ばベーシックインカム的に。そうすると世界が変わってくる。

それこそ時短勤務で良いのかもしれないし、5時に帰れば良い話かもしれない。9時5時で帰れないなら辞めた方が良いかもしれないですけどね。毎日終電だと、好きなことをやる時間が取れないですから。

一番良いのは、残業ができない上場企業か公務員をやりながら、サイドプロジェクトで始めることだと思います。

長編小説を書くのも、まったく同じ構造

これに近い話で、小説家もどうやらそういう構造があるらしくて。

村上春樹は、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』のような大柄な長編小説を書きたいというのが、彼の基本的な願望です。

でも長編小説は書くのに3~4年かかるらしいんですよ。そうなると書いてる期間はお金をもらえない。

だから普通、よっぽど有名じゃない限りは、長編小説を書く小説家は、短編小説やエッセイを雑誌に寄稿して、お金を稼ぎながら長編小説を書くらしいんですよね。それって本腰を入れて長編小説にコミットできてない。どうしても生活のために自分を切り売りしなくてはいけないから大柄な小説はできにくいんじゃないか?ということを、村上春樹が言っていて。

彼は『ノルウェイの森』が300万部売れて、数億単位のお金が手に入った。そこから海外を転々としながら執筆活動をするようになったんですよね。お金もあるので生活の心配もなく、日本での評判を気にすることなく、長編小説にフルコミットできた。

そういうまとまったお金と自分のやりたいこと。これによって成功確率が上がるし、得られるアップサイドが巨大になる。

逆に、そうじゃないと「小さくまとまるぞ」と言えるかもしれない。短編小説を書き続けて、キャリアが終わる。起業家界隈でよく言われる10年、20年、食いつないではいるけど、IPOやM&Aはできない「リビングデッド」的な状態になる。

メルカリは個人資産で数億円突っ込める状態で始まっている

ビジネスの世界でいうとメルカリの山田進太郎さんが時価総額数千億円の企業を作り上げられましたけど、あの方も構造は似ていて。

ウノウという会社を創業し、ジンガに売却して、個人として数億円のお金を持っていた。ナンバー2の小泉さんも元mixiのCFOですごいお金を持ってたので彼らはあまり生活の心配がなかったんですよね。生活の心配がないどころか個人で3億ぐらいは出せるかな、みたいな。

この勝負と、預金残高の少ない普通のサラリーマンや学生スタートアップが会社を作るのとでは全く状況が違うんですね。

CM打つのに最悪、個人で1億5千万ずつ、2人で3億は突っ込めるかなと言っている人たちと貯金100万しかない人だと全く意思決定が変わってくる。

彼らは勝ちやすい状況だといえると思いますし、余裕があると大きな打ち手を打てて、大きいことをなし得るというのはあるんでしょうね。

例えば、3時以降は好きな仕事をする

そうはいっても、1回成功するまでは道が遠いから、今まとまった数億、数千万円のお金がない人がやれることといえば、9時5時の仕事か、もしくは受託開発を短時間で仕上げる、とかかな思います。

うちの株主さんが面白いこと言ってて。自分で作った会社を売却された方なんですけど、最初は受託開発から始めて。

でも自分でサービス作って行きたい気持ちがあったので、9時から夕方の3時までは受託の仕事をして、3時から眠くなるまでは自分の好きなサービスの開発をしたと。

構造は一緒ですよね。9時から6時間働けば安定してお金のもらえる受託開発の仕事をして、3時以降、自分の好きなことをやる。

リスクはほぼゼロでアップサイドが巨大なことをやる、ということ。

そういう意味だとサイバーエージェントも近いかもしれないですね。広告代理事業という巨大な柱があるので、アメブロとかAbemaTVとか色々な新規事業に好きなだけ突っ込める。200億の赤字を出せるってすごいですよね。

世界的にみると、GoogleもAmazonもFacebookもAppleも同じプレーをしている。安定して成長し続ける、儲かる事業があるから、1兆円単位で研究開発費を突っ込んで最先端を探求できる。

大きなことを成し遂げたい人ほど、公務員や銀行員になるか、宝くじを当てるか、勤めた会社が上場してストックオプションでまとまったお金を手に入れるか。

とにかく心理的安全性を確保してからやりたいことに突っ込むのが1番成功率上がるんじゃないかなと思います。

企業内の新規事業は社長直下、社長の肝いりのものが成功しやすいのは、同じロジックだと思いますし、今流行りの「#起業しろ」じゃないですが、「#公務員になれ」の精神が大事では、という話です。

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栗原康太

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