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横道世之介と言う男

「横道世之介」、僕の好きな小説のタイトルである。吉田修一さんの青春小説である。僕は青春小説が好きだ。ちなみに今でも自分は青春を生きていると思っている。バカだ。

横道世之介と言うのは、作品の登場人物であり、主人公であり、大学生。世之介と彼を取り巻く人々の人間模様を、過去の出来事(大学生時代)と、登場人物の現在とを織り交ぜながら描かれている。

世之介はひょうひょうとした青年で、のんきで優しく、お人よし。ちょっとおバカなところもあるかも知れない。

でも彼のそう言う部分が人を惹きつけて、十年以上経った“現在”で他の登場人物が思わず彼を思い出してしまうような、そんな不思議な魅力を持つ人なのである。

二十歳過ぎの頃、生き方に悩んでいる時にこの本に出逢った。今も生き方に悩んでいることに変わりはないのだけど(笑) 世之介の生き方に僕は感銘を受けた。

ちなみにこの横道世之介、映画化されているのだがその時のコピーがこちら。

「思い出の片隅の真ん中で、彼はずっと笑っている」

これがもう世之介と言う人間の人間性をそのまま表していると僕は思うのだけど、世之介はとにかく明るく、重たい出来事もふっと軽くしてしまう力を持っている。

作中には深刻な悩みを抱える登場人物も登場するが、世之介の本人の意図しない後押しでその登場人物は難局に挑んでしまったりもする。

僕もこういう人間でありたいよなと、二十歳過ぎで思ったのだ。誰かの思い出の片隅で笑っていられるような人間でありたい。アイツいつもバカなこと言ってたなと思って、何かの時に思い出してもらえたら嬉しいなと。

その通りに生きられたかと言うと、はなはだ疑問なのだけど、オードリー・ヘップバーンも「どう生きたかより、どう生きたかったが重要」と言っているので別にいいかと思っておこう。

さて、この横道世之介と言う男、他人とは思えないのだ。三つ、彼と僕には共通点があってまあそれを全部ここで洗いざらい書いてしまいたいのだけど、書くと不都合も生じるので書かないでおこうかと思う。

とにかく他人とは思えない縁のある人物なのである、彼は。続編である「続・横道世之介」が今年、刊行されてそれももちろん読んだ。少し成長した世之介はまた味があって最高だった。

彼にまた会えることが嬉しくて、書店で見つけると、1,500円のサングラスをケチって買わなかったのに1,700円の「続・横道世之介」は速攻で買ってしまった。

本を早く読む僕にしては珍しく、一か月かかって読み終えたと記憶している。とにかく、世之介に一度会ってみて欲しい。彼はとても魅力的な人間で、僕は彼を架空の人物とは思えないのだ。

一度彼と池袋の小汚い居酒屋で乾杯してみたい。そんな思いにさせてくれる、なんとも言えない味のある男なのだ。

こうして書いてみて、僕も世之介と言う男に魅了されてしまった人間の一人なのだなと思った。僕はまだ世之介に出逢ったことがない人がうらやましい、これから世之介に出逢えるなんて、きっとあなたはツイてるよ。

shiki

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