小豆島に行きたくなる一冊の本がある。

瀬戸内国際芸術祭。小豆島が昨年から加わって、そこからちいさな奇跡がたくさん起こりはじめるプロセスや過程やドキュメンタリーがこの一冊にまとまっている。

前に、椿昇さんに油絵を教わった事があって、このプロジェクトがどうしても気になった。本を買って、そして、下北沢の本屋B＆Bにてイベントを行うとのことだったので衝動的に行ってきた。（最近「地域の街おこし」を仕事で考えることもあって何かヒントを掴みたくて）

椿昇×原田祐馬×多田智美「小豆島にみる日本の未来のつくり方　東京場所」

熱かった。ぎゅうぎゅうのB＆B。好きが集まるとこうも多幸感のあふれる空間になるのかと。ほおを上気させる人。胸の高鳴りを持つ人。大切なことは言葉になんかしなくても伝わってくる。確実に、小豆島でしあわせな革命が起こっている。イベントの中で特に刺さったことを４つ記しておきます。

①そこにきたーっと思える何かがあるかどうか。

プロジェクトを立ち上げる時に気をつけていること。それは、きたーっと思うことがあるか、どうか。風水みたいなもの、直感的なもの。どのプロジェクトでも、行けるところと行けないところがある。「何もかもうまくいく訳ぜったいない」。小豆島に行った時、桶でしょうゆをつくっていた。すべての桶に麹菌と乳酸菌が住んでいる。生きている。小豆島の人に「いい人が来たら、菌たちも（ぷちぷち）って言うんですよ、椿さん、言ってますよ」そう言われた時に、きたーっと思ってしまった。いろんな人の話しを聞いて、「土地の記憶」に強く惹かれた。これを未来に引き渡さないといけないと思った。  

②嘘は絶対についちゃいけない。ミレニアム世代に思うこと。

ミレニアム世代（デジタル機器を自在に操り情報に精通している世代）の問題。嘘は絶対についちゃいけない、ということ。ある種の嘘を共有していくってのがエンジンになる、けれどミレニアム世代は嘘が通じない、バレる。Facebookは擬似的なもので、本当に大事なことを出してない人も多い。「ホンモノであることがすごく大事」。小豆島で、この人はホンモノやなという人にたくさん出会えた。インチキな世の中で、ホンモノの人だけが人を動かせる。ホンモノの人に、ハンパない食材もある。小豆島がインチキだったら続かない。「これから大事なのは地方の中にどれだけホンモノがあるか」持続可能性というのは嘘ついたらあかんってこと。

③キーワードは「観光から関係へ」＆「ホゲスト」  

スタッフが応接をする側として招くのは時代遅れだ。ホストとゲストの関係性を乗り越えた「ホゲスト」。「だれかのためではなく、だれかとともにやる」。でもそれは簡単じゃない。僕ら側も地域の人たちも、関わり方を模索している。なぜなら古き良き昔のコミュニティなどもうないから。だからこそホゲストという新しい共同体をつくっていきたい。常に流動的であるべき。知らない人がたくさんいる。いつ入っていってもいいし、いつ出ていってもいいし。それがリアリティのある強い構造が出来上がっていく。  

④最初は全員はげしい自腹。「贈与の経済」をつくりたかった。

なぜクリエイター（何かをつくる人）を、小豆島に招集したのか。クリエイターだと、よしそれつくろう。すぐ形にできる。若い人が大量に集まることで、日本の中に違う形で生産モデルをつくれると考えた。会社の中で交代で小豆島にいって仕事をするとか。海がきれい、夕陽がきれい、そんなところで仕事ができると、アイデアがうまれてくる。「メディアをぜんぶ東京に集めてしまったのはいい、けれど文化の生産装置をとられてしまうのは地方はきつい」僕らの国がやらなければならないのは、クリエイターをいかに点在させられるか。全員はげしい自腹なんだけど、ドネーションしている。自分の能力をこの土地にプレゼントしている。消費の経済ではなく贈与の経済。それがこの土地に引力をつくり、人がどんどんやってきて、経済ができる。  

原田祐馬さんが言っていたことが忘れられない。「僕は大阪にいる、年に何回か小豆島にいっている。納税したい！と小豆島に対して心から思う」本にも、そしてトークイベントにも、「日本の未来のつくり方」の教科書的な答えがあった訳ではない。でもB＆Bにあったあの空間が答えなんだと思う。熱と愛を持った人がその土地に集まること。そして僕がこのようなnoteを書いてしまうことも。

お土産でもらった小豆島のおしょうゆ「鶴醤」が帰り道バックの中ですこしこぼれた。冊子にしみついたおしょうゆ。このかおりをかぐたびに小豆島に思いを寄せてしまう。