20161021_国民的あの子_4549

どうしてアズミハルコを追い掛けつづけたのか?

毎日慌ただしい。朝イチの打合せ。昼メシ。企画作業。プレゼン。やらなくちゃいけないことは山ほどある。どどどっと勢いよく流されて、あっという間に金曜日に。

もしも新しく何かをやろうとしたら。ときには意志を持って流れに逆らうことも必要だよなぁ。そんなことを思いながら、帰り道、コンビニに寄る。

雑誌「BRUTUS」。ロゴ上にある言葉が目に飛び込んできた。「ニッポンの若手映画監督図鑑」。(これは余談だが、今や雑誌のほとんどがコンビニで売れる。だから雑誌の売り文句は上部15cmほどに集中するそうだ)。反射的に手に取る。そしてページをめくった。

松居大悟が載っていた。

それも、割と大きく。松居大悟は、映画「アズミ・ハルコは行方不明」の公開を迎えたばかりの映画監督。そして、つい先日、テレビ東京の深夜枠のドラマ『バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』の情報解禁で話題になった。

そして、僕の大学の同級生でもある。書籍「待っていても、はじまらない。」でもいちばんに会いに行ったのが松居大悟だった。「読んだよ」とメールを送るために携帯を取り出した。打ち込みはしたものの、すぐに送れなかった。BRUTUSの表紙を見つめながら、先日の飲み会を思い出していた。

左から、僕、お笑いコンビ「ニューヨーク」の屋敷裕政、松居大悟、編集者の霜田明寛。同い年というだけで仲良くなり、仕事はぜんぜん違うけれど、4人で集合しては飲んでいる。「誰がいちばん面白い近況報告をできるか?」で競っているあたりは、部活の帰りに100円の紙パックのジュースを飲みながら、コンビニでたむろした、あの頃の感じと変わりはないけど。

あんなにくだらない話で笑っていたけれど松居は、「映画を面白くする新しい才能たち」の筆頭なんだよなぁ、と。

家にはやく帰るつもりだったのにな。BRUTUSを目にしたことで、コンビニに長居してしまっていた。もう少し、前の出来事を思い出していた。公開された「アズミ・ハルコは行方不明」は、3年越しで実現した映画だ。どんな過程で実現にまで至ったかは、ちょくちょく近況報告で聞いていた。

昨年のクランクイン前。その日は、新宿のデニーズで、ふたりで打合せをしていた。聞けば、予算の関係で、本当に撮影に入れるのかどうか…という危機的状況だそうだ。どちらかというと割と楽観的な僕が聞いていても、本当に、本当に、本当に大丈夫なのか? と思うような状況でも、その時の、松居大悟は、絶対にかたちにする、できるんだと信じ抜いていた。

その時の生々しすぎる話は、記事「枝見洋子プロデューサーと松居大悟監督の最強タッグでここだけの製作秘話」から引用したい。

松居 本当にやばかったもんね。クランクインの1ヵ月前くらいにお金が集まらなかったりとかでやばいなっていう状況になって、あきらめる理由のほうが多くなったときがあったんですけど、こんなに熱い気持ちでやってきたのに、大人の事情でグッと押さえ込まれたことであきらめてしまったら、一生、悔いが残る気がしたんですよね。そこでマンパワーでなんとか乗り切ろうって言って。だから、信じた気持ちって絶対に間違いじゃないって、今回は思います。

たぶんいろんなことに流されそうになったんだと思う。でも流されなかった。踏ん張って、諦めないで、何とかするって信じて何とかしたんだ。でもでも…

どうしてアズミハルコを追い掛けつづけたのか?

試写で見た時、その理由がわかった気がした。同じ世代を生きてきて、行方不明という道を選んだアズミハルコを今、映像にできるのは自分だけだと追い掛けつづけたのかもしれない。女性のことはわからないと言うけれど、同世代の気持ちにはものすごく敏感な松居だからこそ、この映画が成立したような気がした。勝手にだけど、そう思った。

雑誌を閉じた。「読んだよ」と松居にメールを送った。リスペクトの思いを込めて。

この予告編を見て、心が少しでもざわついたら。是非、追い掛けつづけた答えを、劇場で見つけてもらえたらと思う。

夜のコンビニを出た。

映画の最後のシーン。コンビニの前での会話がある。どんな気持ちで松居大悟は「カット!」と言ったんだろう、そんなことを思いながら、家に帰った。

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阿部広太郎

コピーライター&作詞家。世の中に一体感をつくる。「企画でメシを食っていく」主宰 作詞→さくらしめじ「先に言うね」「お返しの約束」 向井太一「FLY」共作詞 プロデュース→映画「アイスと雨音」「君が君で君だ」舞台「みみばしる」著書『待っていてもはじまらない』をnoteで全文公開中!

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