ベオグラードのアプリ経由配車サービスCAR:GOが禁止にされる

昨日2018年5月10日、セルビアの首都ベオグラードの中心地に位置し、多くの車やバスが行き来するスラヴィヤ広場で異変が起きた。

朝6時から約250人のタクシードライバーたちが道路上に車を駐車して、道路を完全に封鎖し始めた。この影響で市民の移動に欠かせない市内を走るバスの多くが運行停止せざるを得ず、大混乱を引き起こした。

メディアの報道に応じた一人のタクシードライバーは、以下のように答えた。

道路・交通・インフラ省がわれわれとの会談を受け入れない限り、われわれは四六時中居残り続けるつもりだ。このような問題を起こして、市民には申し訳ないが、これが唯一の方法なんだ。


「CAR:GOの営業停止を求める!」

今回のタクシードライバーが道路を封鎖する強硬手段に出てデモを起こした背景には、最近になってベオグラードでサービスが開始されたスマホアプリ上で配車を注文できるCAR:GO(Uberに類似したもの)の登場が原因となっている。

このCAR:GOの特色は、Uberのようにコールセンターに電話をして配車を依頼する必要もなく、気軽に/手軽に配車をお願いできる。また、利用料金も既存のタクシー業界の料金よりも安価となっている。そして、ドライバー側もタクシー免許などは必要なく、空いた時間などに副業としてお金を稼ぐことができる環境を用意している。

このCAR:GOはベオグラード以外にも、クロアチアとモンテネグロの首都ザグレブとポドゥゴリツァでサービスを展開しており、オーストリアの首都ウィーンでも展開する計画を立てているようだ。


今回のデモが発生するまでに、CAR:GOの存在を知らなかった僕は、ネットでCAR:GOの評判を調べてみると、多くの市民は高評価をしている。

理由は、1. アプリで気軽に配車依頼できる、2. 既存のドライバーよりも上品で、身なりもしっかりしていて安心できる、3. タクシーがきれい、4. 乗車運賃を法外に釣り上げようとしない、などが挙げられている。


既存のタクシー会社・ドライバーの問題

ベオグラード市内を走るタクシー会社のドライバーやタクシー車は市民から不満を持たれている。

タクシー会社で勤務している者はタクシー免許となるものを取得して、働いているものの、日本のように身なりはしっかりしているわけではないため、一般人が運転しているかのように見受けられる。

また、運転する車も10年、時として15年以上も乗り回しているかのような"汚い"オンボロ車でサービスを提供していたりもする。最悪なのは、運賃メーターに仕掛けをして、法外な値段に料金を釣り上げて乗客を騙そうとする者もいる。

この問題に関しては、以前に僕が運営するジャーナルで「ぼったくりタクシーに遭わない対策法」でまとめていたりもします。


そのため、ベオグラード市民の中には、どのタクシー会社は大丈夫で、大丈夫じゃないかを知っている。そして、今回のCAR:GOはこうした不満だらけのタクシー業界に変わる新たなサービスが登場したことに喜んでいた矢先だった。


話し合いの結果、CAR:GOのようなサービスは禁止に!?

タクシードライバーによるベオグラード市内の交通要所を封鎖するデモが堪えたのか、道路・交通・インフラ省の官僚たちはタクシー業界代表者との話し合いをお昼ごろに持つことになった

そして、話し合いが終わった15時過ぎに、これまでに道路を封鎖していたタクシードライバーたちは解散していきはじめた。

その後、地元紙Blicの報道によれば、話し合いの結果、セルビア政府はタクシードライバーたちの要求をそのまま飲み、CAR:GOのようにタクシー免許を持たない運転手と契約して運営する会社で、インターネットやスマホアプリを利用した配車サービスを展開することを法的に禁止していくことになったとのことだった。


この判断はいかに?

この政府の判断は、私だけでなく多くの市民に対して困惑させるだけでなく、近代化を目指す国として大きな失望をもたらすものだった。

まず、今回の政府の判断に困惑した理由は、強硬手段を使って道路を封鎖したタクシードライバーの要求をそのまま飲んで、合意に達したからだ。つまり、今後もある市民グループや組織などが大規模に道路を封鎖したり、国内を混乱させることを引き起こせば、政府は要求を飲んでくれる前例を作ったことになる。


また、近代化やデジタル社会化がなかなか進まないセルビアにおいて、CAR:GOのような近代的なサービスは画期的だったと思う。世界中で大きなブームとなっているUberが特定の国や市でサービス提供を禁止される例は聞いているものの、ベオグラードのタクシー業界のように劣悪なサービスしか提供できていない市には必要不可欠のようなものだと感じるからだ。

そして、今回の判断はセルビアの近代化やデジタル社会化にNOを突きつけたような出来事だった。こうした事例が出てくると、国内経済の発展を今後期待できるような国内外ITベンチャー企業の進出と成長に大きな妨げる要因のように感じてしまいざるを得ない。


事件が起きた翌日となる11日の今朝、セルビアの地元テレビの生放送に出演したCAR:GOベオグラード地区代表によれば、早朝にセルビア首相アナ・ブルナビッチ氏から連絡があり、CAR:GOの事業を支持しているとの一報があったそうだ。

政府とタクシードライバーとの合意は単純に紙面での合意だけであり、法的拘束力の持つ変化ではないため、今後もCAR:GOはサービスを提供していくとのことだが、果たして今後どうなっていくのか注目していく必要がある。

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