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ストリーミング時代における、音楽クリエイターにとっての「作品」への向き合い方。

おはようございます。早寝早起きを最近心がけているおかげで体の調子がすこぶる良い齊藤です。この時間に起き、シャワーを浴び身支度をして、朝の仕事に向かい始めるととっても効率よく1日が過ごせますね。

さて、僕にとってとても嬉しいニュースが舞い込んできました。

お酒を飲まない僕は普段コーヒーを飲みに行くことがとても多いのですが、そんな僕の想いが曲に滲み出たのか、Spotifyの公式プレイリスト「Coffee and Piano」に僕の新作「Poem, Poetry Or Not」の2作品「Right」「Jasmine」の2曲がセレクトされました。


2/18(月)現在、「Right」はプレイリストの先頭に、「Jasmine」も6曲目にと、楽曲に触れていただきやすい場所に曲を置いていただいています。個人的にこのプレイリストは「眠れぬ夜の音楽」「Deep Focus」などと同様に日々の生活で触れてきたもので、ここに入れていただいていることは僕にとっても非常に意味があり、産み出した作品がどう聴いてもらえるかというシーンやムードにおいて本当に嬉しいです。


生まれたまま、そのままの感情と演奏

肝心要の楽曲ってどんなのよ?って思う方がいらしたら、是非聴いてみてください。狙っていませんが、この作品は一聴すると地味です 笑 特に、記憶に残るメロディは存在しませんし、あえてそんなものは要らない!いや、正確に言えば「その瞬間の感情に必要なかった」作品です。


対照的なのが、前作「BRAINSTORM」の楽曲たち。CM音楽をキャリアの真ん中で作ってきた僕が、これまでのお仕事を通じて得た「心を動かすスイッチ作り」を様々な角度からトライした10曲は、ほとんどの楽曲において「いかに自分の意思を客観視するか」を大切に作りました。1曲ずつ、何百回も聴き直しながらアレンジを進め、仕事の合間を縫いながら1〜3年かけて作り込んだトラックには、自分自身の音楽的趣向の変化すら感じ取れます。


「Poem, Poetry Or Not」とは、「詩でなければガラクタに過ぎない音」と言う意味を込めています。即興演奏による、楽曲と言っていいのかも曖昧な感情をただただ記録したかった。ちなみにタイトルネーミングについては、以前もご紹介した僕の英文脈におけるブレイン、Yoko Uiさんに相談しました。

普段なら、この段階のものは単なるメモです。言ってみればiPhoneに曲の大まかな概要を弾いて記録したものと同義の状態。それを、自分で録って、自分でミックスして、マスタリングをしていただいた。以上。という作品です。この2曲が「尊い音楽作品」なのか「見向きもされないガラクタ」なのかは、市場で判断してもらえればいいや。と開き直ってリリースしました。

当然演奏を直す、なんてこともしなかったし、そもそも即興で作って弾いたので、特に「Jasmine」にいたっては、拍子の概念がありません。ライブなどでもう一度弾いてと言われても、感情や演奏上の技法を再現することは不可能です。再現性を目的に作っていないからです。なんで#が5個もついたキーを選んだのかも今となっては謎です。その時の気持ちを表すのに、#が5個必要だったんだと思います。

言ってみれば、服を全く着せない裸の状態の僕の音が、果たして市場価値を持つのか。という、自らに対して皮肉を込めた実験的要素を孕んだサウンドがこの2曲。前作「BRAINSTORM」ではスタイリングの妙を見せてきたつもりだったので、いきなり全裸!というのは勇気がいりました。

けれど、マスタリング後にアートワークが完成して申請を行った時、迷いはありませんでした。素人みたいなことを言ってしまいますが、「曲を完成させて世に送り出したこと自体に価値を感じた作品」だったからです。


作品そのもののことは語らない。

抽象度が高い楽曲であるがゆえに、リスナーの皆さんやこの曲をキュレーションする皆さんに、この2曲がどんな意味を持ち、いつどんな感情の時に生まれたのかは、身内含め誰にも説明しないと決めました。

僕がどんな気持ちでこの曲を弾いたか、なんてことはあまり重要ではなく、僕が産み出した楽曲に、リスナーの皆さんがどのような感情を乗せて、日々の生活の中で「活かしてくれるのか」の方に僕は興味があります。

現在、この3つの公式プレイリストにおいて、今作が先頭に配置いただいています。コーヒーを楽しむ時、仕事などで超集中したい時、夕暮れ時を穏やかに過ごす時と、僕が意図したかどうかはさておき、これだけのシーンやムードでの楽曲の活かし方をSpotifyエディターの皆さんに提案していただきました。「うんうん、わかる。」と僕が思うものもあれば、「え、そうくる?」って思ったものもあります。でも、僕がどう聴いてほしいかという感情や意図は、本当にどっちでもいいんです。

散々、戦略云々について公的な場でも語りまくっている印象が自分にもありますが、重ね重ね強調したいのは、僕が興味あるのは「自分が魂の震えを音にしたものが、自分と趣味を同じくする世界中の人に届いて、共鳴してもらえ、何かの救いになれること。」です。僕のように無名の音楽家がそれを成し得るためには、魂を込めて作った音楽の価値を見出してくれ、拡げてくれる存在が必要不可欠。

今、それはきっと、有難いことにSpotifyの皆さんなのではないかと感じています。ただただ想いの名の下に音楽を作り続ける無名の僕の背中を押してくれている方々には、感謝の気持ちしかありません。


制作・PR共に、成功例は「例」に過ぎない。

書いていてとても皮肉っぽいなぁと思いますが、僕がプレイリストに入れてもらえたことをまとめたところで、皆さんがそれでうまくいくとは限らないと思います。僕が今後、同じことをしてもそれは全く同じです。前回うまくいったから、今回もっとうまくいく、なんて保証はどこにもありません。

ただ一つ、信じていいなと思うのは、「自分らしい音楽制作アプローチ」を貫き通すことです。結局、僕らコンテンツホルダーの命はコンテンツそのものです。「コンテンツにおけるストーリーやコンテクストが重要だ」と叫ばれて久しいコンテンツマーケティングの世界において、結局一番注力すべきは僕らで言う「音楽クオリティ」あるいは「MVクオリティ」の両輪なのではないかと考えます。

Spotifyでグローバルヒットを飛ばした偉大なる先駆者といえば、AmPmのお二人であることはストリーミング市場に明るい皆さんはよくご存知かもしれません。僕も記事をひたすら研究しましたし、彼らの成功事例を基にサブミッションメディアの存在も知りました。

けれど、僕は彼らが徹底的に行った「Spotify上で聴かれている曲の傾向をマーケティングする」という手法は自分の制作主義とは異なるため、そのアプローチはしない、と強く心に決めています。ハードルは高いかもしれませんが、僕なりのサウンド、録音・ミキシング&マスタリング体制で楽曲を送り出していきたい。と強く思っています。

と言いつつ、プレイリストを経由して彼らの楽曲がかかった時、素直に「いい音楽作る人たちだなぁ」と思ってしまうそのサウンド。振り切ったサウンドは、マーケティングから導き出されようと、時代をリードする側のコンテンツになれることを証明してくれたように思います。


結局一番は「コンテンツのポテンシャル」だ。

僕とは相対する制作アプローチを取られているお二人。(横並びにして僭越ながら)共通するのは、「作ることに一切の妥協をしていない」ことなんじゃないかと思います。昨今の音楽市場を俯瞰して、制作とプロモーション両方をバランス見てプロデュースする、なんてことは言うまでもなく必須だと僕は思いますが、「ちゃんと音楽を真面目に作れること」が欠けたらマーケティングも何もないと僕は強く信じています。

そしてそのコンテンツのポテンシャルを研磨するために必要なのは、

常に作り続ける。
常に自分自身を疑い続ける。
常に情報のアンテナを張り続ける。

という3点だと僕は思います。自分らしさを追求するにも、市場を意識するにも、常に制作者としての僕らクリエイターと世の中の動きは同じ歩幅では動きません。アートを生み出す立場としての自己研鑽と、プロデュースする上での市場を読み解く力の共存を実現するためには、「自分が正しいとは限らない」と言う思いを持ち続けることが最重要だと僕は思います。

かといって、情報に翻弄されたらこの仕事はやってられない。疑っても、信じることをやめてはいけない。メンタル的には繊細で危うい仕事だと思います。この、自分自身との戦いに向き合い続けられる人がきっと、本物のサウンドクリエイターであり、アーティストなのかなと思います。


そんなことを語りながら、早くも僕は、3月リリースの楽曲についてソワソワしています。自分なりに強い想いで望んだ、春先の景色を彩れたらいいなと思う楽曲をご用意しました。是非、リリースされたら沢山の方々に聴いていただきたいです。

よければ是非、サポート・フォロー・試聴よろしくお願いします。


よろしければサポートをお願いいたします。サポートいただけましたら機材投資、音源制作に回させていただき、更に良い音楽を届けられるよう遣わせていただきます。