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いわゆる「障害者雇用」の基礎知識とこれからのこと

障害者雇用なるものの基礎知識と今後の動向について私が知っていることをまとめてみる。誤りや補足があればぜひご指摘を。ちなみに私は障害者雇用で働いている精神障害者で(専門家ではない)、本記事はインターネットの情報だけで書いてる。以下、すべて2018年1月時点の情報。それではどうぞ。


会社は障害者も雇用して仲良くやっていきましょうねー、的な主旨のことが「障害者雇用促進法」という法律に書かれている。一応、会社にとっては「義務」ということになってるらしい。障害者とは、障害者手帳・療育手帳の所持者等のこと。


社員数に対して一定の割合以上の障害者を雇用することが、会社には課されている。現在の法定雇用率は2.0%で、例えば1000人の会社なら20人の障害者を雇用する義務があるということ。法定雇用率は引き上げトレンドにあり、今年(2018年)の4月には2.2%へ、さらに2021年4月までに2.3%に引き上げることが既に決まっている。公的機関等はもっと高い。雇用義務の対象となる会社は、今のところ法定雇用率が2.0%であるから、社員数50人以上の会社ということになる。したがって、2.2%に上がった際には45.5人以上50人未満の会社が新たに対象に含まれてくる。

厚生労働省「障害者の法定雇用率が引き上げになります」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/20170630press1_1.pdf


障害者数のカウントは、同じ1人でも個々の障害の程度や勤務時間によって2になったり0.5になったりする。なお、所定労働時間が週20時間未満の労働者は障害者としてカウントされないため、当事者がいわゆる「障害者枠」に入るためには、まず1日4時間以上の勤務(週5の場合)というハードルが。


身体障害者・知的障害者と異なり、精神障害者はこれまで雇用義務がなかったが、今年(2018年)4月に施行される雇用率引き上げの改正と同時に、義務化される。すでに平成18年から精神障害者も障害者としてカウントされていたが、今回の改正によって位置づけが明確になることに。ここは、当事者としてはぶっちゃけ今とあまり変わらない気もする。


義務なのに、法定雇用率を満たしていない会社もある。その場合は「障害者雇用納付金」を国の機関に支払うことになる。罰金的なやつ。金額は1ヶ月につき、5万円×雇用率未達人数で算出。つまり1000人の会社で障害者を雇用していなかった場合、未達人数20人×5万円で月100万円、1年で1200万円の支出になる。来年度(2018年度)は2.2%に上がるため、1320万円に。障害者を雇用していないだけでそれだけ多額の支出が生じるのだから、会社は障害者雇用に対して重い腰を上げざるを得なくなっていく、というか、重い腰を上げてほしい。という私の願望。雇用するならするで金もかかるんだろうけれど。


お金の話でつけ加えると、障害者雇用に際して会社には補助金が支給される場合がある。例えば「特定求職者雇用開発助成金」では、中小企業が精神障害者を1人フルタイムで雇用するだけで、240万円の補助金が3年で分割支給される。この助成は、精神障害者が身体障害者等と比べて若干優遇されていることが特徴。他にも「障害者雇用調整金」等の補助金がいろいろとある。

厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html


お金についていったんまとめ。上の事例につなげて言えば、中小企業が1人の精神障害者を雇用することによって1年で80万円(240万円÷3年)もらえて、60万円(5万円×12ヶ月)節約できるので、実質140万円プラスの状態から雇用が開始される。この算数がきわめて重要だと思う。


また、障害者雇用に消極的な会社にはハローワーク等から指導が入り、改善が見られない場合、社名が公表されるようになっている。昨年度は某2社が晒されていた。なぜこの2社だけなのかは厚労省のプレスリリースを読んでみたけどよくわかんない。他にもたくさんあるだろうに。「公表猶予」とかあるそうな。今後はもっと多くの会社が晒されるのだろうか。

厚生労働省「平成28年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000157838.html


関連するトピックとしては他にも、職業訓練、ジョブコーチ、就職・転職活動、合理的配慮等があるのだろうが、きりがないしよく知らないのでとりあえずこんな具合で。

■まとめ
「めんどいから納付金払ってた方が楽だわーみたいな会社よくあるよねー」とか「合理的配慮義務まったく果たしてねーじゃん」とかいろいろ文句はあるかもしれないけれど、制度設計自体は当事者としてありがたいものだし、特に精神障害者には少しずつ追い風が来てるのかなー、と。おわり。

[参考]
厚生労働省「障害者雇用対策」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index.html

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