見出し画像

舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~君と旅する時の魔法』その3 プロット編

プロットは思いの外、早く完成した。

提出したのは、オンライン打ち合わせによる顔合わせの一ヶ月後くらいだ。長編ゲームではなく、2時間程度の舞台のプロット作成の期間にしては、一ヶ月は長いかもしれないが、実際は別件も抱えていたので他の作業をしながらやらざるを得ず、空き時間に妄想を転がしていた、という方が近いかも知れない。
一ヶ月は妥当だとは思うが、「寝かし」の時間としては割と長くとらせていただいた気はする。

キービジュアル 俳優版

制約も多い。
メーカさんの主人公を影ナレにしたいという意図はわかる。が、清隆主観で舞台を進行させるとなると、場面転換はできるが、同じシーンの中で立ち位置を移動したり、何かを見つけて拾ったり、誰かに近づいたり、ヒロインを助け起こしてあげたり、人と人の間に割って入ったり、などといった描写が一切できなくなる。
『グランブルーファンタジー』のシナリオのように、「そこにいる体」で話を進めるが、基本的には周囲の人間に物語を進行させるか? 単独行動は?
序盤はそれでもいいとして、後半の動きのあるシーンではどうする? 清隆の意識をペンダントに閉じ込めてリッカが持ち歩く?
など、不安点・疑問点は多々あったが、とりあえずその部分は後に合流する予定になっている演出さんとも相談することにして(この時点で市村さんとはまだオンラインでも会っていない)、構想をプロットに起こしてみた次第だ。

どんなに妄想や構想を転がしても、やはりテキストエディタを目の前にして「書く」というアウトプットをしないと形にはならない。書き出すことによって、「ああ、そういうことだったのか」と自分の意図に気付くこともあるので、とりあえず書く。書く。書く。
まず、簡単なあらすじを書き、それから細かいプロットを作成する。

大まかなあらすじの段階ですでに、実際の上演版と構成は変わっていない。
つまり、舞台D.C.IIIはある意味、ここで完成してしまったと言ってもいいかもしれない。

また、注意すべき点としては、細かなプロットには耕助や四季は登場していない。
スタッフの方々に見てもらうため、注意書きが添えてある。

※大まかな流れを描いているので、そのシーンのキーになる者の名前だけで、江戸川や四季などの名前は書いてませんが、もちろん登場します。コメディリリーフ的な。

資料の注釈

僕の中で耕助や四季の動きは決まっているが、物語のガイドおよびコメディリリーフとしての登場させる予定だった。それをプロットとして抽出すると冗長になってしまうため避けさせてもらったという訳だ(自分自身が脚本を執筆する予定だからこその省略だが)。

また、プロットは大抵「実は」の部分を書くことが多い。備忘録でもあるからだ。ただ、それを先に他の人に読ませてしまうのは危険性が高い。「実は」の部分をいきなり読むので、文芸担当など、ある程度、訓練されて完成形が見える人でないと「ややこしいですね」とか「ここはこうした方が」と言って重要な「屋台骨」をくずしてしまいかねない。
実際にお客さんが目にする情報、観客に順次開示されていく情報やミスリードの設計図は、残念ながらプロットとは別なのだ。

観客の視点だと、登場人物の行動原理が開示されていないので、なぜそう言う風に動いているのかが、序盤ではわからない。何か理由があるんだろうな、と思うだけだ。
それが物語の進行と共に情報開示されていき(ときにミスリードをはさみつつ)、最終的に理解される(もちろん、全部開示しないケースも多々ある)。
しかし、プロットには、登場人物の行動原理が最初から書いてある(今回は自分のための覚え書きだが、他人に振るプロットの場合、そこを重点的に書かないと執筆してもらえない)。

勿論、トラップはある。
先程言ったこと(「実は」を先に開示することで、身内に屋台骨を崩される可能性)もそうだが、ゲーム会社などで起こりがちなのは、「実は」の部分を記した設定書やプロットを見せてしまうと、その「実は」の部分を読んだ広報さんに、紹介文に盛り込まれてしまう危険性があるということ。
実は、過去にもちょいちょいありまして……(冷や汗

……おっと、話題がそれた。閑話休題。
ここで製作側と齟齬がでるようだと、「人に見せる用のプロット」つまり「完成形から逆算した抄訳」を新たに起こさなきゃいけなくなるので二度手間である。
まあ、実際に「上の人に見せる用の企画書」なんてものがあったりもする世の中なので、その辺は別にいいのだが。
今回は、オンライン会議のための叩き台なので口頭で説明できるし、皆、お芝居というものを僕よりも理解している方々ばかりだろう、ということでその辺は作らずに済んだ。ありがたい。

「簡単なあらすじ」や「細かいプロット」を実際に公開すれば、解説もしやすいのだが、それって本当にただの「完全ネタバレ文」なので、見せるわけにもいかず。ご了承いただきたい。
代わりに、メーカさんにプロットを提出した際のメールの一部を抜粋させてもらう。

脚本になった際は、
うまく筋書きとしてまとめ
伏せるべき情報は伏せるつもりです。

簡単に書くなら、
・ジルを登場させる
・立夏と清隆、姫乃だけが今の記憶を持ったまま過去へ飛ぶ
・なぜか美琴も巻き込まれる
・シャルル、サラ、葵ら他のヒロインや耕助、四季、杉並などは過去編は過去編の人格

という感じで、D.C.IIIを知ってる人にも
意外な展開にしつつ、
D.C.III初見の人でもわかりやすい筋立てに
したいと思います。

メールでの補足

細かいプロットを改めて読み直してみたが、後にディテールを深めたり、変更になったりした箇所などを除けば、もう物語は(当然だが)完成してしまっている。
「いつか本当の私たちが~」というリッカから葵への台詞ももうすでにほぼまんまのカタチで書かれている。

かくして細かいプロットも作成し、無事に会議を通すこともできた。
これで物語は完成! 御役御免! と言いたいところだが、脚本に起こさないことには作品にならない(当たり前だ!)。

さて、執筆を始めるとするか……。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?