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憧れの「デパート大食堂」に行ってきた

いまでは珍しくなったデパート大食堂があると聞き、花巻市のマルカン大食堂に行ってきました。観光スポットにもなっている同店ですが、私が訪れた土曜の11時過ぎにはエレベーターホールに人垣ができ、食堂のある6階に着くと食券を求める人の列が下の階に延びるほど賑わっています。マルカン食堂の何が人を惹きつけるのでしょうか。 

定食部門人気No.1はナポリかつ
マルカン大食堂の定食部門人気No.1はナポリかつ

休日のお出かけスポットとしてデパートがきらきらと輝いていたころ、子どもたちに大好評だったのがデパート大食堂。しかし、高度成長期になるとファミレスが登場して、家族が食事をする場として人気を獲得していきます。
80年代ころまでは「お代わりいかがですか」とコーヒーサーバーを持ったスタッフが店内を巡回するなど、人によるサービスを行っていたファミレスですが、バブル崩壊により低価格化が進むと、席には呼び出しボタンを設置、ドリンクバーによる飲み放題を導入するなど、人によるサービスが減っていきます。
最近はタブレットによるセルフオーダーやロボットによる配膳を行う店が増え、ファミレスの店内から人の気配が消えていっています。 

マルカンラーメンと昭和な箸立て

ファミレスの対極にあるのがマルカン食堂です。高いスキルをもったスタッフによる気持ちのいいサービスがこの食堂の大きな魅力となっています。

食堂に着いたら、客はまず食券を買います。カウンターのスタッフは130以上あるメニューから注文を受けて食券を発行し、駐車券の案内を行い、テイクアウトの引き渡しも行っています。無駄な動きがなく、食券を求める人の群れを的確にさばいていく、いぶし銀な手際です。

食券を手に入れたら、好きな席に座り、フロアのスタッフに食券を渡します。探さなくてもスタッフはすぐに目に入ります。店内の様子をぼんやり眺めながら待つこと数分、テーブルを正確に見つけて料理が運ばれてきます。500席以上もあるというのに、慌ただしさは感じられません。 

隣のテーブルの家族がカレーを食べて「おいしい家庭のカレー」と評していました。ちょっと懐かしい昭和のスタンダードなおいしさ。これがマルカン大食堂の味なのだと思います。
ミニラーメンやミニそばなど、量が少なめのメニューも豊富です。単価を抑えたミニは手間を考えると非効率といえそうですが、ラーメンとミニ豚丼、餃子とミニカレーといったジャンルを超えた魅惑の組み合わせが可能です。効率よりも客の希望を叶えたいということなのでしょう。
 
高いプロ意識で働く人々と、彼らがつくりだす食べ飽きない味がマルカン大食堂にはありました。
 
マルカンビル大食堂 岩手県花巻市
割り箸で食べる10段巻きのソフトクリームが名物です。 

こちらは3段巻きのミニソフト

<参考>
今柊二『ファミリーレストラン』光文社、2013年
北山公路『マルカン大食堂の奇跡』双葉社、2017年
マルカン食堂閉店の危機から復活までの記録です。

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