見出し画像

タトゥーを掘る仕事について【法律】

「医者以外がタトゥーを掘るのは犯罪」

ある日、国からこう言われ、多くの「彫り師」(タトゥー、刺青を掘る人)が罪に問われるようになりました。もちろん彼らは医師免許を持たずに彫り師として働いてきた人たちです。

根拠となった法律は「医師法」。
これの17条に、「医行為」にあたる行為は医者以外はやってはいけない、という条文があります。
国の解釈ではタトゥーを掘ることも「医行為」にあたると言うのです。

えー、急にそんなこと言う?
今まで何十年もこれで商売してきてるんだよ?
彫り師になるために(不公平な入試受けて)医学部通って、研修医経て、病院構えないといけないの?

ある大阪の彫り師さんが医師法違反で逮捕され、この国の考え方は間違えていると裁判で争いました。

一審「有罪」

一審は国の考えに沿った判決で、有罪となりました。

タトゥーを掘るには針の先にインクをつけて、それを皮膚に刺していくんですが、「ウイルスとか入ったらどうすんの?アレルギー反応出たらどうすんの?医者じゃない人がそのとき対応できんの?」って理由で、「はい、危ないから医者限定。医師免許持ってなければ有罪。」という結論。
(こういう感じの理不尽な先生、子供の時いたなぁ。)

もちろん弁護団は控訴。

二審「逆転無罪」

そして先日出された大阪高裁の判決では、なんと結論が完全にひっくり返って無罪判決が出されました。

二審の判決では、
「一審はいろいろ理由つけて医者しかタトゥー掘っちゃだめとか言ってるけどよく考え直してー。確かに多少の危険があるかもしれないけど、そもそもこれって医療とは無関係の行為じゃん。病気治すとか傷を隠すとかそんな話じゃないじゃん。それに医者になった人がそのあとオシャレなタトゥー掘るようになる?ありえないっしょ。医者しかタトゥー掘れないんじゃ今後クソダサいタトゥーしか掘ってもらえないじゃん」
とし、「医行為」にはあたらないから無罪と判断しました。
(多少ギャル風にデフォルメしてますがだいたいこんな内容です。)

そして大事なのが「彫り師=ヤクザじゃないよ。彫り師も大事な職業の一つとして社会に認められているんだからその仕事をむやみに奪ってはいけないよ。」と判決の中で述べたことです。

彫り師という職業

判決の中にもあるんですが「彫り師」という職業は江戸時代から医者とは別の職業として存在してきました。
ある時期、裏社会のお客さんがメインになってたせいで彫り師も反社会的な職業だと思われてることも(特に日本では)多いですが、そうではありません。

今回、被告人になった彫り師さんも10代の頃にタトゥーという表現に心打たれ、そこからタトゥーアートにのめり込んでいきました。毎日のように絵を描き、タトゥーの表現を磨き続けてきました。

彼ら彫り師にとって身体に色を入れることは、反社会的勢力の象徴ではなく江戸時代から脈々と続く芸術表現なのです。
そしてそれを行う彫り師は憲法で守られるべき立派な職業なんだよ、と判決では述べられています。

もちろん一審の理由にあったような、タトゥーの際のリスクを放置していいという話ではありません。
彫り師の資格を新たに設けたり、業界でルールを作ることは考えたほうがいいとはされていて、今回の裁判を受けてそういった動きも広がると思います。

国の運用だって偏見に基づいていることや、間違っていることは当然ありますし、今ある法律が常に正しいわけではなりません。逮捕された人は悪い人。それも偏見です。
多くの偏見、誤りを見つけては修正する。それが社会の力であり、法律の重要な役割だと思います。

僕の中にもまだまだ偏見や誤った考え方はあるはずです。
そういうものに直面した時に素直に自分の考えを修正できる人、間違いを認めらる人になりたいなと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?