米で映画制作を学んだ僕が自身初の長編映画に託したいもの

2019年3月。
殺人事件や児童虐待など、凄惨な事件が連日ワイドショーを賑わせている。ひとりの人間が傷付き、時には命を落としているにも関わらず、私たちはその現実をきちんと受け止め、消化できているのだろうか。「(事件や事故の)当事者ではなく“外側”にいる自分たちだからできること」を自身初の長編映画を通して表現しようとしている大坪監督に話を聞いた。   

聞き手:フリーランスライター 佐藤ゆうな

監督: 大坪大介 
92年岡山県生まれ。高校卒業後、ロサンゼルスに単身留学し、映像制作を学ぶ。編集・横山智佐子氏(リドリー・スコット監督作品など多数の洋画作品で編集を担当)に師事。帰国後は、自主映画の制作とPVの撮影を行う。
2014年、東京現像所(東宝)に入社。Colorist(カラリスト)として、「関ヶ原」「アウトレイジ~最終章~」などの大作映画を手がける。
2019年よりCyber Agent所属。クリエイティブディレクターとして動画コンテンツを製作。
 [Director]映画 : 栞 /War to Wear 軍服を着た男
Music Video : 世界録音 / 17 / エントランスルーム (Mrs scottie pippen) [Color Grading]
・関ヶ原(digital) / ・アウトレイジ ~最終章~(digital) ・検察側の罪人(digital) / ・レディinホワイト(digital) ・もんちゃん(35mm film) / ・カレーライス(35mm film)

僕は”満足させない映画”を撮りたいと思った

漠然と映画業界に憧れを抱いていた18歳の大坪少年が映画監督を志したのは、ロサンゼルスでの経験が大きい。留学先の学校で映画制作を教えていた横山智佐子氏は、「グラディエーター」「ブラックホーク・ダウン」などのリドリー・スコット監督作品で編集を担当したプロの編集マン。横山氏は編集技術を教えてくれるだけでなく、大作映画の制作現場も積極的に経験させてくれた。ハリウッドの制作スタジオで一流の映画人らを間近で見た大坪は、「いつか自分の頭の中にあるものを映画にして、沢山の人に見て欲しい」という思いを強めた。そして帰国後も、仕事をする傍ら自主制作映画やPVの撮影を行っている。大坪は自身が目指す監督像を「いい意味で余白のある、満足させない映画を撮れる人」だと語る。

大坪「主人公たちの行く末を見ている観客もドキドキしながら、一緒になってその道中を辿れるのがいい映画だと思っています。時には彼らの運命を嘆いたり、勇気ある選択に共感したりしても、映画は必ず終わってしまう。物語は絶対に完結するのです。でも見ている人たちに『登場人物たちの人生はその後も続いていくんだ』と思わせられる、いい意味で余白のある、満足させない映画を撮りたいんです。

現実もそうですよね。例えば告白して、恋人同士になったとしてもそこで終わりじゃない。結婚するかもしれないし、破局するかもしれない。人生はずっと続く。僕は現実世界を生きている人たちに直結する共感を与えられる映画を作りたいと思っています。」

初の長編映画でひとりの女性の”死”を描く意味

映画『糸(仮タイトル)』は、大坪初の長編映画である。完全オリジナル作品として、現在、脚本家とストーリーを練り上げている真っ最中だ。

■『糸(仮タイトル)』あらすじ
ある日、国内屈指の大企業に務める西条一香(25歳)が、勤務先の屋上から投身自殺する。この事件は企業の知名度や自殺に至った経緯などから、連日センセーショナルに報じられた。
西条のニュースは、彼女と縁もゆかりもない、4人のもとにも届く。
自分の可能性を信じ、日々映画制作に取り組む学生・皆川大輝(23歳)。大学に通いながらインスタグラマーとして活動する百瀬歩美(21歳)。彼氏と同棲中で結婚と転職について悩んでいる胡桃沢春香(28歳)。アルツハイマーの母親を看病しながら生活している定年を迎えた雪城直行(60歳)。
この事件により、彼女とは一切の関わりがない4人それぞれの生活に変化が生まれ始める。 
製作:KOTO (http://kotofilms.com/)

本作は”西条一香”というひとりの女性を中心に据えた、4人の男女の群像劇である。事件の当事者ではない彼らそれぞれの視点から、現代を生きる人たちの息苦しさとかすかな希望を描き出す。大坪がひとりの女性の死というセンシティブなテーマを扱うのには、このような理由があった。

大坪「色々な事件のニュースが連日のように報じられて、胸を痛めることもあれば、自分でも驚くほどノーリアクションになってしまうことって誰でもあると思うんです。例えば過重労働がニュースになって、”働き方改革”とかで、残業しないようにねーって会社で周知される。でも、自分の内面が劇的に変化する人は極めて少数派ではないでしょうか。『どうせ会社が変わるわけないよ』と諦めの感情が先に立ってしまう人がほとんどだと思うんですよね。自分を取り巻く環境に期待することをやめてしまっている。

僕は、外側からある事件を見ていた自分たちが、同じく外側にいる登場人物たちの心の変化を描く事に意義があるんじゃないかと思っています。

『糸(仮タイトル)』は、事件になんら関係ない4人それぞれの物語です。当事者でも、当事者の家族や友人でもありません。物語の中の事件を通して、彼らが変わってくれることが、現実を生きる皆の希望になるんじゃないかと思い、制作を決意しました。」

大坪は著名な映画祭での受賞経験や長編映画の制作経験もない。平日は会社勤めをする26歳の若者だ。だからこそ、今の時代を生きる若者が抱える違和感を敏感に感じ取れると考えている。

これはひとりの若き映画監督の挑戦の記録である。

〜製作者より〜
『糸(仮タイトル)』は「自己資本でなければ本当に言いたいことは言えない」をモットーに、ひっそりと短編映画や舞台を自主プロデュースする『KOTO』が初めて製作する長編映画です。
「サポートしてあげてもいいよ」という方がいらっしゃいましたら、以下の連絡先までご連絡ください。「リハーサルスペースの提供」や「食事の提供」、「資金の援助」「宣伝のサポート」などどんな形でも結構です。皆様からのご声援をお待ちしております。
ご連絡先:KOTO 浅野 
Mail: kotofilms@gmail.com
Website: http://www.kotofilms.com/


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