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【ファントム観劇】真彩希帆演じる「歌うプリンセス」

〈役代わりキャスト〉
ファントム:城田優
クリスティーヌ:真彩希帆
シャンドン伯爵:大野拓朗
カルロッタ:石田ニコル
少年エリック:井伊巧

 7月22日に梅田芸術劇場で幕を開けたミュージカル「ファントム」
 ガストン・ルル―原作『オペラ座の怪人』を元に、新たな視点からファントムの姿を描いた今回のミュージカルでは、ファントムことエリックはいくつもの傷を負った子どものような寂しさを持ち、ヒロイン・クリスティーヌはそれを癒す女神のように舞台上に君臨する。

 今回注目したいのは、クリスティーヌを演じた真彩希帆さん。元宝塚歌劇団雪組のトップ娘役の真彩さんは、退団後さまざまなミュージカルに出演し活躍するミュージカル俳優であり、最大の魅力とされているのが、その歌唱力である。透き通るようにのびやかで、それでいて力強い歌声が観客の心を掴んで離さない。

 そんな真彩さんが今回演じるのは、ファントムのヒロインであるクリスティーヌ。町中で歌を歌いながら楽譜を売っているところをスカウトされ、オペラ座にやってくるという王道のシンデレラ的ヒロイン。しかし、その後はそう簡単ではなかった。支配人の急な変更によりオペラ座の舞台で歌うこともできないまま、衣装係として雑用をこなしていた。周りから嘲笑われるような立場でも、「ここにいられるだけで、夢のよう」と彼女の中の希望の光は少しも曇ることがなかった。そんなとき、クリスティーヌの歌声を偶然耳にしたエリックは彼女の歌声に惚れこみ、自らレッスンをつけ、彼女と少しずつ心を通わせているうちに恋に落ちる。その後、オペラ座の舞台に立つ権利を自らつかみ取ったクリスティーヌだったが、嫉妬の標的となり、簡単にはいかない。そんな中に彼女を置いておくのは危険と判断したエリックの手によって次々に悲劇が起きる。

 自らを闇に閉じ込めてしまったエリックは、クリスティーヌを想う気持ちを悲劇の引き金と変えてしまう。しかし、そんなエリックの心をも照らすクリスティーヌは舞台上でまさに光そのものだった。人々の注目を集め、愛と希望に満ち、悪意の隠された親切にもお礼を述べ、自分の夢に向かって真っすぐに走り続ける。ファントムに描かれるクリスティーヌは穢れを知らない「歌うプリンセス」のようだった。

 そんな光に満ちたヒロインを真彩さんはその歌声で彩った。透き通るようでもあり、のびやかで、高音も耳に嫌な響きを残すことなく真っすぐに届く。会場の一番後ろまで、その歌声に包まれる。いつまでも聞いていたいと思えるような彼女の歌声がクリスティーヌの役柄に乗って客席に届くとき、舞台上は希望の光に包まれる。

 孤独に闇の中を生きてきたエリックが心を癒され、その身を委ねたいと思うその気持ちが観客にも理解できるような、柔らかく明るいヒロインを真彩さんは舞台上に誕生させた。真彩さん演じるクリスティーヌは物語のヒロインというだけでなく、おどろおどろしい舞台の雰囲気すらも明るく照らす「歌うプリンセス」であり、まさに希望の光そのものだった。

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