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【体験談】放課後の帰り道【怪異談】

タイトルの通り子どもの頃の話です。


 近所の友人の家で遊び、門限に近くなった所で帰宅する事に。
友人とは玄関で別れ、テクテクと夕飯やテレビアニメの事など考えながら歩いていました。
 近所といっても子どもの足で10分〜15分かかる道のりで、友人と別れる前はそんなでもなかったオレンジ色の夕日が、空一面をオレンジにしていたのを覚えています。
 そんな空がよく見えるような高いところから坂を降りていくと近道なので、その坂を降りようとしている時、後ろから声が聞こえてきました。
よく聞くと「○○(本名)〜」と私を呼んでいるようでいた。
「あれ?なんか私忘れ物したかな?」
なんて思いましたが、私は学校から帰って荷物を全て置いた身一つで友人の家に尋ねていたので、忘れる物もありませんでした。
友人から借りる物もなかったので、友人が追いかけてくることはありません。
なんなら、例え忘れ物があったとしても同じ学校です。学校帰りに取りに行けばいいだけの話です。
友人の性格を考えても、追いかけるなどという面倒なことはしない人です。
「おかしいなぁ…」などと考えていると「ねぇ!○○〜!」とさっきの声がより鮮明に聞こえてきました。
 その時に「振り返ってはいけない」と無意識に感じてゾクッとしたのを書いていて思い出しました。
成人になってもそうなのですが、無意識がこういう警告を出す時はだいたい危ない時です。
 声が聞こえる度呼ばれている背中側がピリピリしていました。
振り返りたい衝動もありましたが、ピリピリした刺さるような冷たい空気感というか雰囲気と先ほどの無意識が、私をそのまま前を向かせて歩かせていました。いつもの通り坂道を降りてい行きます。
後ろの声も一緒に。

「ねぇ!○○〜!」
「ねぇ!○○〜!」
「ねぇ!○○〜!」

徐々に同じ声が近づいて来ていました。同じ口調、オカルト好きの人はわかると思いますが、全部同じ言い方なのです。録音された音声の様な。
その間、走り出したくなる様な焦燥感と恐怖感があったことを覚えています。すぐ下り終わるはずの坂道がやに長く感じました。
そして下りきる直前。

「ねぇ。〇〇」

耳元で呼ばれました。

内臓を掴まれたような萎縮感と、息もできなくなるような恐怖でした。
膝は固定されたかのように動かなくなり、足を進めることも難しくなるような状態になりました。それでも歩き続けました。そうしなければならないと思ったので。
幸い、その日はそれを最後に友人の声をした何かがおってくることはありませんでした。

後日も同じ体験をしています。
何度も。何度も。


昔より頻繁ではないにしても、今でもたまにあります。
ついさっきまで話していた友人。横を歩いているはずの友人。暫く会っていない友人。関係が切れた過去の友人。
その声で私の名前を呼ぶ、何かの声が背中から聞こえる。

何なのでしょうね。この声は。
名前を呼ばれ続ける事は毎日あったので、名前を呼ばれる事には特に気にならない事が多いのですが、流石にこの時は肝が冷えました。
それに今までは、その場にいないと明らかにわかるタイミングだったので、「この人がここにいてもおかしくない状況」はこの時が初めてで気がつくのが遅かったなとも今では思います。
私にとって今も昔も黄昏時は、不思議なことばかり起きる時間です。

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