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『解体屋ゲン』 #67 長屋横丁(後編)

ここ数日、不規則な仕事が立て込んで久しぶりに無理したら、額やまぶたが不規則にピクピクと痙攣しはじめてちょっとマズいな、と思いました。無理矢理〆切を伸ばしてもらって寝たら、とりあえず収まったんですが…という訳で後編です。


(リンク先で無料で読めます)


前編はこちら

既に取り壊しが決定している長屋を立ち退きたくないが、現実は非情でどうしたって立ち退かない訳にはゆかない。そんな時、漫画的な解決方法にはどんなものがあるでしょうか。

・ゲンがゼネコンをやっつける
・住民と一緒に反対運動を起こす
・大家を説得する
みたいな展開がありそうです。ただ、現実を目の当たりにすると……。

取材モノの場合、現実を曲げた結論には落としたくありません。この場合で言えば、立ち退きをなかったことにする、というやり方は、たとえフィクションでもやりたくないのです。あえてそうする、という選択肢もあるかも知れませんし、それを否定はしませんが…少なくとも私のスタイルではないのです。

それではどうするか。住民たちには待ってる人がいて、自分たちが居なくなってしまったら連絡が途絶えてしまうのを心配している。その一方で、高齢化してゆく自分たちのこれからの生活がどうなってしまうのかという不安もあります。

この2つをゲンはどうやって解決するのか、それはぜひ本編で確認して欲しいと思います。<続>



で、ちょっとした余談ですが、私はこの話を結構気に入っていて、それがなんでなのかツラツラ考えていたのですが…。

この話を書いている時、自分で作ったフィクション部分(失踪した老人にどうやって連絡を取るのか)の解決方法が見つからず、袋小路に入りこんでいつになっても答えが見つかりませんでした。どんどん〆切が迫る中、麻布と三田周辺をああでもないこうでもないと考えながら当てもなくグルグル歩き回っていた時、商業ビルの壁面にまさにこれからできるマンションの巨大広告が垂れ下がっていたのです。それは満点の夜空に浮かぶ高層ビルの完成予想図で、庶民から見たら嫌味ったらしい成金趣味の広告でしたが、それを見た瞬間にピン!と閃きました。

何をどう閃いたのかは本編を読んでもらえば分かるのですが、今回の前後編には、自分があれこれと思考を巡らせた、当時の努力の痕跡が読み取れるのです。爆破解体でもなく、ハンマーを持っての殴りこみでもなく、地道な努力とアイデアで問題を解決…とまではいかなくても、自分たちに出来る精一杯のことをする。それは泣き落とし、みたいな情に訴える方法ともまた違うやり方で、これから目指すべき方向がおぼろげながら見えてきた気がしました。

この仕事を長く続けていると、段々手癖というか、物語のパターンが幾通りか出来てしまい、当時のような先が全く見えない努力をしなくなります。それがいいことなのか悪いことなのか…いや、それはやっぱり悪い傾向だと思います。なので常に新しいパターンを、未開拓なジャンルを、常に模索したいと思っています。



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