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電子書籍という不思議な生き物について

『解体屋ゲン』の取次である電書バトの夏季セールが始まった。

セール対象すべての電子書籍を5円にするという、破格のセールだ。ありがたいことに既に反響が出始めている。

以下省略するが、大体70位までを『解体屋ゲン』で占めている。

6月はオープニングセール、7月は51〜58巻の発売、そして今回のセール。大きなニュースが出る度に全体の順位が押し上げられ……不思議なことにセールが終わっても順位はなかなか落ちずに売れ続ける。

まだ初月の売上さえ上がってきていないので、結果がどうなのかお知らせできないのがもどかしいが、悪くない売れ行きだと思う。6月は50冊すべてが500位以内に留まり(占有率10%)、7月は58冊すべてが1,000位以内に踏みとどまった(いずれもKindle)。これで結果を残せなければ、電子書籍なんて大して金にならないということになりはしまいか。


セールの度に思うことがあって、それは定価で買ってくれた読者の人に申し訳ない、という気持ちだ。みんなが応援してくれているのに、買った直後に破格のダンピングが起きたら面白くないのではないか。頭の隅にいつもその思いがこびりついて離れない。

その一方で、巨大な電子の海に漂う電子書籍は、何もしなければ簡単に埋もれて人目につかなくなってしまう。書店の書棚のようにブラブラしていて偶然目に付く、ということはなく、むしろ誰の目にも見えなくなる。

これまでの経験から、単独で発行された電子書籍は、何もしなければ1ヶ月以内に10,000位の圏外に落ちる。そうすると月の売上は数十冊くらいだと思う。連載時に人気だった作品が、連載終了後になんのセールもしてもらえずに、全体が巨大戦艦のように沈んでゆく例を幾つも知っている。

なぜそんなことが起きるのか。恐らくだが、大きな出版社ほど横並びの圧が働き、特定の作品だけを大きく値下げすることが難しいのではないか。

電書バト、そして私たちの取っているのは、いわば弱者の戦略だ。大手ができないことをやり、それ故に頭一つ飛び出す。『解体屋ゲン』の場合は50冊超というスケールメリットを生かしてUnlimited等の読み放題で読んでもらい、月1冊新刊を発行して買ってもらうという戦略がプラスされる。

これは価格破壊なんだろうか…出版社にとって私たちは煙たい存在なんだろうか……正直よく分からない。しかし、在庫管理の必要ない電子書籍において、価格などあってないようなものだ。いや、この言い方は語弊があるな…少なくとも紙の書籍に準じた値付け(よくあるちょっとだけ紙の本より安い定価)など全く意味がない。電子書籍には電子書籍の値段の付け方、セールのやり方があり、独自の値段を付けて活性化すればいい、と思う。むしろ価格を破壊しないから、業界全体が沈んでいるのではないか。

時代は変わった。SNSで無料で漫画を公開し、それがバズればバズるほど、その作家の本は売れる。それと同じで無料(に近い価格)で電子書籍を売りまくると、結果的に全体の売上が上がる。佐藤さんはこれまでの試行錯誤の上にそのノウハウを積み上げていっている。決して投げやりや無茶ぶりの5円ではないのだ。

電子書籍は生き物だ。去年よりも確実に成長し、これまでのノウハウは通用しなくなる。表題の画像は投資向けだが、同じように常に戦略を考える必要がある。成長を続けるために何が必要なのか、答えは誰にも分かっていない。


という訳で、セールは8/1まで。夏休みのお供にどうぞ。

今なら1冊5円、1〜50巻まで、まとめて250円。

51〜58巻でたったの40円



<追記>

7/26 20:30現在、ランキング1〜25位を独占し、残りもほぼ60位以内に入った。長い戦いの中で順位に一喜一憂してはいけないと思うが、それでもこだわりを持つことは悪いことではないと思う。




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