スクリーンショット_2019-04-04_20

『解体屋ゲン』 #75 住民参加(前編)

ここから2話は、民間と役所の考え方の違いを描いた話です。もっとも、今読み返すと色々と無理があります。行政の人が読んでも民間の人が読んでも、首を傾げるような描写が多いと思います。でも、それでもやった意味はあるかな、と。


(リンク先で無料で読めます)


ガタゴトのあぜ道で野菜が痛む


農家の若者の陳情、役所は聞く耳持たず


それを聞いていたのは元同級生

とりあえず建設会社に掛け合ってみることに

ここですが、役所が発注する公共工事は、基本的に公募して業者が入札します。そうじゃないと透明性と公平が保てない。こんな風に行政の人間が建設会社に出向いて頼むなんてあり得ないです。当時の私が公共事業の仕組みをよく理解してないまま書いているのが分かります。

ただ、だからこそ民間人と行政側の直接対話が成り立っています。

公共工事には時々おかしなモノがあります。こんな田舎に要らないだろうっていう立派な道路だったり、既に橋がかかっているすぐ上流にさらに立派な橋が掛かったり…。ただそうした指摘や要望を市民が役所に直接訴える手段はほとんどないでしょう。

そして鉄とコンクリートで固めた用水路。これもちょっと時代を間違えていて、平成に鋼板の護岸はないんじゃないかな。でもコンクリートで固める護岸工事は今でもやってると思います。当然流れは早くなり、魚は住めなくなります。

未舗装の農道と危ない用水路の整備。この2つが問題が、回り回ってゲンたちのところに話が持ち込まれますが…

ゲンも突っぱねる

役所による予算叩きは、今でも行われています。公共事業は取りっぱぐれがないので会社としては事業計画が立てやすく、利益率が低くても仕事を取りたいからです。

結局ゲンたちはこの工事を引き受けることになります。今読むと全体の詰めが甘くてツッコミどころだらけです。今回と次回の話は、その意味では建築ファンタジーなのですが…。

私は建設の専門家でも公務員でもありません。取材して色々と裏を取っても、それでも敢えてフィクションで落とす。そうでなければ爆破解体なんてできないし、漫画としても面白くない。問題も解決されなけば、読者の溜飲も下がりません。

取材の全体量を十割とすれば、いつも八割くらいは敢えて切り捨てます。分量的にそもそも入らないのもありますが、現実に引きずられるとフィクションとして大切なものを見失うからです。それは必ずしも面白さだけではなくて、夢だったり、希望だったり、前向きな思考だったりします。

そこがドキュメンタリーやノンフィクションライターと、フィクションに重きを置く漫画原作者の決定的に違う点かも知れません。ノンフィクションは私も大好きですが、「解体屋ゲン」でやりたいことは違います。問題提起をしたら、それをきっちりと解決したい。無茶と思える案件もゲンならきっとなんとかする。それを読者に納得させる裏付けを取るための取材なのです。  <続く>




もうご存知かと思いますが、電子書籍版『解体屋ゲン』は、6月に移籍します。その辺の事情はこちらに。

こちらは今後の経過、これまでのことをできるだけ正確に綴ってゆきたいと思います。お楽しみに。


ここでいただいたサポートは、海外向けの漫画を作る制作費に充てさせていただきます。早くみなさんにご報告できるようにがんばります!