コトノハ シャシン S#27 【働き方】

3月に入り、いよいよ年度末。
だから何だと言う部分もありつつ、春の訪れが楽しみでならない今日この頃。
日中はコートのいらない日も増えてきましたね。

我が家の大きな動きのひとつと言えば、やっぱりパートナーがこれから社会人になること。
もう大学の授業も無いし、卒業公演も終わって、ホッと一息かと思いきや、就職先の研修に行ったり、それに関する予習や復習をしたりで、何かとバタバタ。
いろんな感情が渦巻く時期ではあるでしょうが、少しでも健やかに過ごしてくれたらと、仕事とは別で料理を作るときにはまた違った思いが個人的に湧いてきたりします。

そんなこんなでもうすぐ卒業なのもあって、先日は我が家で賑やかな女子会。やっぱり学生さんの話は面白いです。
ガールズトークとはいえ、みんな浮いた話はそれほど無いようで(笑)学校の話と、これからの職場に関する話がほとんどでしたが、職に就こうとする動機は人それぞれ。
皆さんは何を持ってして今の仕事を選びましたか?

ボクが最初に料理の仕事をしようと思ったきっかけは、ずっと趣味として続けてきたのと、周囲の後押しも大きかったのもありますが、何より「これなら一生飽きないだろう」という確信を持てたから。
学生時代のアルバイトから数えれば10年以上この業界にいることを考えると、あのときの直感は間違っていなかったんだと思います。
今でも食べることも、作ることも大好きだし、ここ数年は食材やお酒にも関心が広がっているわけで、まぁ天職だったんじゃないかなぁ、と。
以前にも書いた通り「食」はライフワークです。

ただ、フリーで仕事をするようになってから新たに「働き方」に関する視点を持つようになり、それは自分の中では外せない要素となりました。
ここ1年くらいは「働き方改革」という言葉を毎日のように耳にしますが、少しずつ改善されているというデータがありつつも飲食はまだまだブラックな業界だと思います。

かつサービスを提供する「おもてなし」の文化を歪んだ形で解釈してる人も多いせいか、認識としての社会的地位は決して高いとは言えないでしょう。
ボクが新卒で入った会社のサービスに関するモットーは

『We are ladies and gentlemen,service for ladies and gentlemen.』
※紳士淑女をもてなすからには、自らも紳士淑女であれ。

だったのですが、裏を返せば紳士淑女でない方は来なくて結構、お客様は神様ではありません、という意思の表れで、今でもボクに根付いてる価値観のひとつです。
今思うと業界の中では新卒としては手取りも良かったし、福利厚生もしっかりしていて、業界を少しずつでも明るくしていこうという心意気を感じます。
だからなのか、ボクもこの業界に10年以上お世話になってきて、今現在で目指すところは

『各々のライフスタイルに合ったフードビジネスとワークスタイルの構築からの認識の拡大、社会における理解や共感を深めていくことでの地位向上。』

だったりします。半年前くらいに起業家さん向けのインタビューを受けたときに、この話をすれば良かったなぁ、と今更思ったり(笑)。

起業に関する話といえば、個人事業主ならこの時期にほぼ確実に訪れるのが税務署。もちろん俺も申告と納税に行ったんだけど、たまた開業届けを提出しに行く人を見かけて、数年前の自分を思い出した。

もともと俺がフリーで仕事をするきっかけになったのは2014年の末にレシピ本を自費出版したことだった。
これを買ってくださった方の1人が異業種交流会を主催しており、そこに呼んでいただいて料理を振る舞ったのがケータリングを始めるきっかけになった。そういう場には同じようにイベントを主催するような人も数名いるし、もちろん評判が良ければリピートもあり、回を重ねれば人間関係も深まる。

そうしていくうちに、ちょっとずつ仕事がもらえるようになり、フリーでの収入も増えて「これは事業としてやっていけるかも?」と思うようになった。
だから、ビジネスの勉強はしていたけど「さぁ、起業するぞ!」って意気込んで始めたわけじゃないし、今でも形から入るような起業トークはピンと来ないかな。

とはいえ、その頃は今ほどコンスタントに依頼があったわけじゃないから、食い繋ぐのに他の仕事もしたし、既に上手くいっているケータリングシェフの手伝いもしたし、マージンをごっそり取られるのを承知で出張シェフの派遣サービスに登録したりもした。
もちろん初めから上手くいくことばっかりじゃないし、吸収できることも、不要だと感じることもあった。ソリが合わない人だってたくさんいたし、今でも仲良しな人もいる。
ただ、やれることは片っ端からやってたつもりだし、チャンスがあると思えば多少の無茶は当然だと思って飛び込んだ。
まさにトライ アンド エラー。お世辞にもスマートとは言えない状態で、がむしゃらにやってた。

その積み重ねがあったからか、ケータリングを始めてから1年半くらいして、初めて「どうにか食っていける」レベルの利益が出た。
だけど、それを続けていけるのかって不安もあった。というか、安心しきったことなんてない。
原価の高い商売だから、大きい仕事ほど予算も嵩むし、1人でやってるから時間がかかることも少なくない。それでも当日のサービスは誰かにお手伝いを頼むことはあったけど、やっぱり仕込みだけは自分の手でやることは続けてた。

クライアントさんは俺を指名してくれたわけだから、提供する料理のクオリティの根底を決める要素を誰かに任せちゃうのは無責任だなって、今でも思ってるんだよね。

続けてきた中で、苦しくなりかけたときもあったけど、そういう時期に親しい方が面白い仕事をくれたりして支えてもらっていたし、そのご縁が今でも続いてたりする。
特に今年はケータリングだけではなく、食の仕事の幅を広げたいと考えていたら、新年早々イクスピアリや湘南の駅ビルで公私ともに親しいクライアントさんの会社の催事を手伝いに行ってアップルパイの売り子をやったんだ。

商業施設に置ける食の展開っていうものの面白さも感じたし、ディスプレイのし方なんかも勉強になった。

それとは別件だけどこの前なんかフロンターレのホーム開幕戦で出店の調理を担当させてもらった。これも親しい方が久しぶりに連絡をくれて決まった仕事だったけど、元ヤクルトの川崎さん(単に川崎繋がりってだけらしい)が始球式を務めるにあたっての特設ブースで、俺はひたすら貝のフライを揚げまくってた。学園祭みたいで賑やかだったし、普段は別々で仕事をしているスタッフ全員が一丸となってる空気感はやっぱりいいね。是非またやりたいし、本当にこういう機会をいただけることにも感謝。

こうやって誰かと関わりながら仕事を創っていくのは本当に面白いけど、常に相手と対等に話が出来る距離感や自分がやることとやらないこと(やりたくないこと)の線引きを明確にして、遣われるだけで終わらない立ち位置を守るっていのは個人的に大事だと思ってる。気に食わないなら関わらなければ良いだけ。
それなりに躓くこともあったからこそ、学んだって感じ。まぁ、何事もまずは経験っしょ。

だからさ「何かしたいけど、何がしたいのか、何をすれば良いのかわからない」って人がまぁまぁいるし、特に起業を考えてる人がこういうことを言ったりするのを聞くけど、俺はバッサリ「それは何もしたくないんでしょ?」って言っちゃう。
本気で何かやりたけりゃ、もうとっくにやってるよ?それが上手くいくかいかないかなんて二の次、一歩を踏み出したヤツから口だけの連中に差をつけてるわけで。
もし何かしら上手くいっているように見える人に感化されて言ってるんだったら、チヤホヤされたいとか、人気者になりたいって言った方がよっぽど好感を持てるよ。

ましてや起業するってなった場合、そのハードルは以前よりも下がったかも知れないけど、決して事業を継続するのが容易になったわけじゃない。むしろ難しくなってきてると思うし、だったら近しい価値観の人や組織と関わりながらやった方が良いこともたくさんある。
起業家って呼ばれたいだけならやるべきじゃないし、そんなに起業家になりたけりゃさっさと税務署に開業届けを出せば済む話。
何の武器もなけりゃ商売なんか出来やしないわけで、いろんな働き方がある中での手段のひとつとして自営業というものがあるくらいに思ってないと。

俺は自分の望む暮らしを創るうえで収入の得方やワークスタイルが雇われ飲食業界人だと都合が悪かったのと、人にとやかく言われながら仕事するのが性に合わないと思ったからフリーで働くようになった。だから別に起業すること自体がカッコいいとか偉いなんてまったく思ってない。
もちろん自営業なら尚更だけど、サラリーマンだって目的を持って続けているのならリスペクトだよ。何が良いか悪いかじゃなくて、本人が好きな働き方で生きていければそれで十分じゃない?

これは俺の好きな作品の受け売りだけど「未来を選ぶため」に働いているって自覚があれば、それは遣り甲斐を持って続けられることだと思うんだ。

いろんな働き方があって良いと思うけど、引っ掻いたら剥がれるメッキみたいな素振りより、ちょっとやそっとじゃびくともしない燻し銀のようなメンタルの方が仕事人には必要じゃない?

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