染まりたいか、染まりたくないかに関わらず

私は、怒りのレベルに比例して言葉遣いが丁寧になるという癖があります。
本気の激怒の時ほど、語尾が「~です/~ます」になるし、敬語表現も増えていきます。
この癖は相手が誰であっても発動するので、近しい人から、
「敬語で怒るの、怖いから止めて」
と言われたりして、割と評判が悪いです。

夕べふいに思い出したんですが、昔勤めていた会社に、この怒り方をする人が多かったんですよね。その影響が今でも私の中に残っているんだろうと思います。

辞めた今だから言えますが、当時、愛社精神みたいなものはまったくなく、会社に勤めながら脚本家を目指して教室に通っていた時期だったので、ひたすら生活費を稼ぐというだけの目的で働いていました。
「ここで自己成長を!」といった気持ちは皆無で、会社にいる時の自分は”世を忍ぶ仮の姿”という意識だったんです。

それでも毎日8時間、年単位で決まった場所で過ごしていれば、否応なく影響は受けてしまうんですよね。
「敬語で怒る」は評判が悪いですが、思い返せば、良い習慣もいくつか身についているように思います。

例えば、私はもらった仕事メールには即レスしないと落ち着かないタイプでして、とにかく読んだらその場で返信したい。返せない状況の時はそわそわしてしまう、というレベルの”即レス魔”です。
これも会社員時代「メール返信が遅いヤツは悪だ」と、徹底して刷り込まれたから。
「即レスするのがビジネスマナーなんだ」
と、ただ押し付けられたのではなくて、即レスが重要だという理由も教えてもらえたことが良かったと思います。

返信するのに使う労力と時間は、今すぐ返信しようが、24時間後に返信しようが同じ。
自分が使うコストは同じだが、受け取る側にとっては、この24時間が大きな差を生む。丸一日早く問題が解決したり、その後の対処の選択肢が増えたりとメリットは数多い。
こちらが使うコストは同じなのに、相手が感謝する度合いは格段に上がる。こんなにコスパのいいことはないのだから、即レスするのが正解。
もし、回答に時間がかかる質問が来ているなら、「メールを確かに受け取ったこと」「いつまでに回答できるか」だけ即レスすればいい。

……と、事細かに書きましたが、別に「みんな即レスしようぜ!」と言いたいわけではないです。
言いたいことは二つ。
一つ目は、
「ルールを教える時は、そのルールがある理由を添えると効果的」。
自己成長する気ゼロのダメ社員ですら、理由を聞いて「なるほどねー」と思えばそれを覚え込んだわけです。

二つ目は、
「人は、染まる気がなくても、長くいる場所に染まっていく」。
ここは私の本当の居場所じゃない!と、どんなに強く心の中で思っていても、影響は受けてしまう。
だから自分にとって「仮の場所」であっても、居場所選びは重要。
そう言えば学生時代に就活していた頃、
「同じ会社で働いている人たちって、何となく雰囲気が似てるなぁ」
と思っていました。特に女性。
おそらく私がそう感じていた相手の人たちに自覚はなくて、知らず知らずのうちに染まっていったんじゃないでしょうか。
そういうものなのだとすれば、「染まりたい」と思える場所に、せめて「染まってもいいな」と思える場所に、身を置きたいですよね。

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