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笑いを生み出すことの難しさについて

ドラマでも、映画でも、舞台でも、コメディーが好きです。
お笑い番組も、子供のころから大好き。
笑いの力は、本当に偉大だと思うんですよね。
その昔、悲惨すぎる失恋をした夜、テレビを付けたらお笑い番組をやっていて、見ているうちにゲラゲラ笑ってしまい、
「こんな時でもちゃんと笑えた! この分ならきっと立ち直れる!」
と、絶望的な気分からぬけ出すことができたという思い出があります。

笑うのは健康にいいという話も、よく聞きますよね。
心身の両方に良い「笑い」ですが、それを生み出す側にとっては、とても奥が深いものだとも思います。

表現の技術』という本に、ダウンタウンの『ガキの使い』の『笑ってはいけないシリーズ』に関する解説が載っていました。笑ってしまう人たちの表情をよく観察すると、笑い出す前に必ず一度、驚いた顔をしているそうです。
笑いは、「予想外の出来事」に対して生まれることが多いので、まずは驚きが先に立って、それから笑い出す、という順序で反応が起きるんでしょうね。

この「予想外」というのがなかなか難しくて、受取り手の思考をある程度、先読みできなければ、それを裏切ることもできないし、同時に「ひたすら突拍子もない出来事」では笑いに繋がらなかったりするので、絶妙のさじ加減で、ほどよい「予想外」を作りださなくてはなりません。

以前、『人気海外ドラマの法則21』という本を読みました。
『ウォーキング・デッド』や『ホームランド』といったヒットドラマの制作者にインタビューを行い、「21個のヒットの法則」を解説するという内容です。
「人物の弱点を設定する」「話者の視点を特定する」「複数のプロットをテーマでまとめる」といった法則が、実際の作品を例に挙げながら解説されていくのですが、その中に何度か、同じ但し書きが登場します。
それは「シチュエーションコメディー(別名:シットコム)は別です」というもの。
ヒューマンドラマだろうが、ラブストーリーだろうが、ミステリーだろうが、ジャンルを問わず共通する「法則」が次々に語られていく中で、コメディーだけが例外扱いされているのです。

そして、この本の一番最後に提示される「21番目の法則」は、「シットコムの笑いの仕組みと作り方」です。
「コメディーは、他のジャンルと同列に語ることができない」ということがダメ押しされているわけですね。
以下、この章からの抜粋です。

一般的な脚本術は習得が可能だ。構成や言外の意味の持たせ方。セリフの書き方も練習次第で上達するだろう。だが、笑えるコメディーを書いたり演じたりする才能は生まれつきのものではないかと筆者は思う。三段オチや場違いな状況、役割交換や奇妙な組み合わせなど、笑いを生む仕組みを知っている人も多いだろう。だが、笑わせ方の極意は教えられて身につくものではない。

「コメディーが書けるかどうかは、生まれつき決まっている」なんて、何とも身も蓋もない感じの言い分ですが、こういうのを読むと、どうしても「私はどうなんだろうか……」と考えずにはいられません。
これまでにコメディーはいくつか書いたがありますが、だからと言って「笑わせ方の極意」が生まれつき自分に備わっているのかと訊かれたら、
「どうでしょう……備わってるといいなと思うんですが……」
と、モゴモゴしてしまう。
でもとにかく、観るのと同じぐらいコメディーを書くのが大好きだし、
「好きってことは、向いてるってこと!」
と自分に言い聞かせつつ、これからもたくさん書いていきたいと思います。

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