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「今日性は?」と問われたぐらいでビビってはいかんという話

こちらの記事に非常に納得し、共感しています。

企画提案時にエラい人から「それ、他との差別化はできるの?」と訊かれて、うろたえた提案者が”差別化のための差別化”に走り、墓穴を掘る……。
脚本家である自分の経験を振り返っても、”あるある”だなと思います。

ただ私の実体験では、ここで言う「差別化」が「今日性」という言葉で表現されている場合が多いです。
「それ、今日性はあるの? 今の観客にちゃんとウケるわけ?」という感じ。
ここで提案者の腰が据わっていないと、「今日性……確かにないな」とヘコんで企画をひっこめたり、「今日性を足さなくては!」と、突然、流行りっぽいアイテムを入れようとしたりする。今なら、仮想通貨とかAIとかをネタとして入れ込もうとするとか……。
経験上、こういうのはまずうまく行かなくて、必要のない物をねじ込むことで、元々あったはずの面白さまで損なわれるのがオチ。
だったら、この問題にはどう対処したらいいの?ということを自分なりに考えてみました。

仮に、『ローマの休日』が2018年公開の新作映画だとします。
「それ、今日性はあるの?」と訊かれたら、
「男性記者が、一国の王女という結ばれるはずもない相手と束の間の恋に落ち、特大スクープを自ら捨ててまで王女を守る、というラブストーリーです。マスコミが人のプライベートな領域を暴き立てることが日常茶飯事になっている殺伐とした今の時代だからこそ、人々の胸を打つ作品です!」
と答えることができると思います。

『七人の侍』が新作映画だとしましょう。
「今日性はあるの?」と訊かれたら、
「『喰わねど高楊枝』であるべき侍たちが、喰うために農民に雇われて戦うという常識破りの決断をし、その戦いの中で、人生最大の輝きを放つというストーリーです。社会が大きく変容し、過去の常識が通用しなくなる中で、自分らしく生きる道を模索する人が増えている今だからこそ、観客の心に響く作品です!」
と答えることもできるでしょう。

つまり「名作」と呼ばれる作品は圧倒的に地肩が強く、どんな時代にあっても「今こそ観るべき作品です!」と主張することができると思うんですよね。
だとすれば、本質的な面白さの強化に力を注ぎ切れば、「今日性は?」と訊かれてうろたえる必要なんてなくなるはず。
……と信じて、今日も一日頭をひねりたいと思います。

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