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生まれて初めて怖気づいた夜

今週の始めから、私にとって五本目か六本目の映画になる予定の脚本に取り掛かっています。

映画の仕事が動き出す度に思い出すことがあって、それは初めて映画脚本を書かせてもらえると決まった時のことです。
割と図々しい性格の私が、その時ばかりはプレッシャーでひどく怖気づいてしまいました。
スケジュールがタイトで、少しでも早く書き進めなくてはならない状況の中、布団にくるまって「どうしよう……」と思ってばかりいた夜のことは、今思い出しても苦しくなります。
「ずっとこういうチャンスがほしくて、辛いときもがんばり続けてきたのに、なに怖がってんの?」
と自分に憤りながら、それでもやっぱり怖くて、
「怖気づくって、こういう気持ちのことなんだ」
と、その夜、初めて知りました。

作品をつくって公表している人なら、多かれ少なかれ、みんなこういう経験があるんじゃないでしょうか。
自分のつくったものが、どう受け止められるのか。
その怖さを乗り越えなくては、どんな表現も成立しません。

最近になっても、私はふいに怖くなる時があって、そういう時はピクサーアニメ『レミーのおいしいレストラン』の、このセリフを思い出すようにしています。(以前、別の投稿でも引用したんですが、本当にいいセリフなので、もう一回書きます。)

「評論家というのは気楽な稼業だ。危険を冒すこともなく、料理人たちの努力の結晶に評価を下すだけでいい。辛口な批評は書くのも読むのも楽しいし、商売になる。だが、評論家には苦々しい真実がつきまとう。たとえ評論家にこき下ろされ三流品とよばれたとしても、料理自体のほうが評論より意味があるのだ。

本当にこの通りだと思うんですよね。
たとえどんな評価を受けたとしても、評論よりも、作品そのもの方がずっと意味がある。
評論だけなら何の危険も冒さずにできるけれど、作品を発表するには勇気と覚悟が要ります。
つくりあげたこと、それを発表する勇気を持てたことには、それ自体に価値があると私は信じています。

noteユーザーは、いろんなジャンルのクリエイターが多いと思うので、これを読んでくれている人たちも、「何かを発表しようと思ったけど、やっぱりためらってしまって……」という経験があるかもしれませんね。
怖いと感じるのはおかしなことでも、だめなことでもないし、多くの人が味わってる気持ちだと思います。
上に書いた『レミーのおいしいレストラン』のセリフを時々思い出して、お互いにがんばりましょう!

#日記 #エッセイ #コラム #脚本 #シナリオ #映画 #エンタメ
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中川千英子(脚本家)

脚本家。石川県金沢市出身/清泉女子大学文学部卒。芦沢俊郎シナリオ研究塾にて作劇を学ぶ。【主な作品】映画「きょうのキラ君」、ドラマ「ホテルコンシェルジュ」 、NHK朝ドラノベライズ「マッサン」「べっぴんさん」。2019年以降、映画「10万分の1」公開!新作落語も書いています。

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