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令和元年にクリエイターが「男はつらいよ」を観るべき3つの理由

こちらのnoteイベント、募集開始から1週間も経たずに締め切られたんですね! 寅さん人気、すごい!

映画『男はつらいよ』のシリーズ1作目が公開されてから今年で50周年。
そして年末には最新作(!)『男はつらいよ お帰り寅さん』が公開されるとのこと。
それに先駆けて、8月4日にnoteと『男はつらいよ』のコラボ企画「男はつらいよ夏まつり」が開催されるということですね。

私はこちらのイベントへの申込みを完了しています。
当日いらっしゃるみなさん、一緒に盛り上がりましょう!

さて、残念ながら申込みそびれた方も、「寅さんって、なんとなく知ってはいるけど観たことない」という方も、『男はつらいよ』シリーズはNetflixでもAmazonでも配信中ですので、ぜひともご覧ください!

シリーズ1作目が公開されたのは昭和四十四年。
それから元号が二度も変わり、今や令和元年。
「やっぱり古臭いんじゃないの?」と思われる方も多いでしょう。
ですが、寅さんファンの私としては、クリエイターが集うnote内だからこそ、ぜひとも『男はつらいよ』の魅力をお伝えしたいのです。
というわけで、「令和元年にクリエイターが『男はつらいよ』を観るべき3つの理由」をご紹介していきます。


理由その1)耳に心地よい寅さんの名調子!

「結構毛だらけ 猫灰だらけ お尻の周りはクソだらけ」
寅さんは度々このフレーズを口にしますが、この中で意味がある言葉は、冒頭の「結構」だけです(笑)。
「それは結構だね」
と言えば済むことを、わざわざこの口上で表現しているわけです。
ところがですね、車寅次郎役の渥美清さんの名調子で聞くと、このお行儀の悪いフレーズがなんとも耳に心地良い!

テキ屋である寅さんは度々、祭りが行われている境内や往来で、こういった口上で行き交う人々の足を止めさせます。
そういったシーンの度に、理屈を超えた心地良さが味わえるんですよね。
「ああ、ずっと聞いていたいなぁ」という感覚は、名人と謳われる噺家さんの落語を聞いているようでもあり、ラッパーの小気味良いライムのようでもあり……。

クリエイターのみなさんは、「日々気づきや学びを得て、成長し続けなくてはならない」「役立つ情報を得ることに積極的でなくてはならない」といった強迫観念に駆られてはいませんか?
そして本当は、それに疲れていませんか?
寅さんの”大した意味はないけど、なんだか心地良い口上”は、そんなあなたの心を癒してくれることでしょう。

口上シーン以外でも、寅さんのセリフは、歯切れの良さにたまらない魅力があります。
シリーズ1作目からひとつ、寅さんファンに人気のセリフをご紹介しましょう。

(ある登場人物から「あなたも私と同じ立場にいるんだと想像して、もっと気持ちを察してほしい」と言われて)
「冗談言うなよ、俺がお前と同じ気持ちになってたまるかい!
 馬鹿にすんな、この野郎! お前と俺とは別な人間なんだぞ?
 早え話がだ、俺が芋喰って、お前の尻からプッと屁が出るか?」


理由その2)空気など読まない!忖度しない! それが寅次郎!

「フーテンの寅」と名乗っているぐらいですから、寅さんはいつも予告なく故郷の葛飾・柴又にふらりと現れます。
そして騒ぎを巻き起こす。
空気が読めず、いいことしてる気分で問題を起こす。
それが寅次郎です。
シリーズ1作目の登場シーンから、その残念ぶりが発揮されています。
こう書くと、「面倒くさい人だな」としか感じられないと思うのですが、「だが、それがいい!」と観客に思わせてしまうところが寅さんマジック。

クリエイターであるみなさんは、「イノベーティブでありたい!」と日々願っていらっしゃるのではないでしょうか?
空気を読んだり、忖度してばかりでは、イノベーションなど起こせないはずです。
とは言え、空気を読まずに行動するのは、それなりに勇気が要りますよね?
そんな不安を抱えているときこそ、『男はつらいよ』を観ていただきたいのです。
空気などまるっきり読まなくても、忖度など1ミリもしなくても、寅さんはこんなにも魅力にあふれている。
そのことが、あなたに勇気を与えてくれるでしょう。


理由その3)日本のホームドラマの原点がここにある!

「松竹大船調」という言葉があります。
かつて鎌倉にあった松竹大船撮影所では、所長の城戸四郎氏の下、数多くのホームドラマが撮影されました。
それらは、市井の人々の家庭で起こる悲喜こもごもを描いており、いわゆる「活劇」とは対照的に、ハラハラするような大事件は起こらず、大仰などんでん返しなどもありません。
松竹大船撮影所らしい、「ありふれた家庭のなかにあるドラマ」を描いた作品群を「大船調」と呼ぶわけです。
『男はつらいよ』シリーズは、「松竹大船調」の象徴的作品と言って良いと思います。

さて、この記事を書くにあたり、改めて「松竹大船調」という言葉をググってみたところ、こちらのサイトがヒットしました。

以下、リンク先からの引用です。

(平成21年に行われたトークショー『昭和エンターテインメント再発見』での映画評論家・白井佳夫氏が話された内容より)
とくに島津保次郎という、松竹・蒲田から大船にかけての名監督が、松竹大船調ホームドラマの基本を作った。それはどういうものかといいますと、こういうことを言っています。
城戸四郎さんが、「松竹の映画は、政治を描こうが、経済を描こうが、社会問題を描こうが、何をやってもいい。」「ただし、それはニッポンの典型的な家庭の茶の間における、家族の会話の範囲内において」であると、こういう規定をしているんですね。これは非常におもしろい規定だと思います。
要するに松竹の映画は、「政治がこうだ!とか、経済がこうだ!とか、今の社会は良くない」とか、そういうことをあからさまに言ってはいけない。
そうではなくて、どこにでもある典型的な家庭の茶の間で家族が、「お父さん、この頃景気が悪いわね」「そうだよな。魚が高くなったな」とか、そういう話をしなさい。こういうことを言っているんです。

城戸四郎氏が、このように松竹映画のあり方を定義づけていたことは、私もこの記事で初めて知りました。

さて、みなさん、「日本のホームドラマの大家」というと誰を思い浮かべますか?
『渡る世間は鬼ばかり』でおなじみの橋田壽賀子さんのお名前が浮かんだ方も多いのではないでしょうか。
今は橋田さんの代表作『おしん』がNHK BSで再放送されていて、「面白い!」と話題になっていますよね。
橋田寿賀子さんは、松竹大船撮影所の脚本養成所のご出身です。
また、『岸辺のアルバム』『早春スケッチブック』といった伝説的ホームドラマの脚本家である山田太一さんは、かつて松竹大船撮影所で助監督を務めていました。
「松竹大船調」のエッセンスは、橋田寿賀子さんや山田太一さんの作品にもを受け継がれているはず。
そして、その源流に『男はつらいよ』が存在しているのです。
脚本家、小説家、マンガ家等の「ストーリーを描くこと」を志すクリエイターのみなさん、特に「市井の人々を描きたい」と思っている方には、『男はつらいよ』を強くお勧めしたいです。

因みに、私が脚本家を目指していた頃に長らく指導していただいた芦沢俊郎先生も松竹大船撮影所脚本部の出身です。
それを考えると、私も「大船調」の継承者の一人……と、言えなくもないかもしれません。
その矜持を持って、日々創作に取り組んでいきたいと思います。
そんな私が書いた小説『すずシネマパラダイス』は、noteで全文無料公開中です。
こちらも「市井の人々の悲喜こもごも」を描いた町おこしコメディです。よろしければお読みになってみてください。

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