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爪痕は、残そうとすればするほど残らないという話

何年か前にバズった「マクドナルド理論」が好きです。

例えば同僚たちとランチに行く際、誰からも「行きたいお店」のアイデアが出ないときは、
「マクドナルドはどう?」
と言ってみる。
すると、同僚たちは「マックはちょっと……」ということで次々に別の案を出し始める。
つまり、「大して良くないアイデア」であっても、まずは誰かがそれを投げかけることで議論が活性化し、多くの案を引き出すことに繋がる、というわけですね。

「まったくもって、その通りだ!」と私も思います。
例えば企画開発のためのブレストのような場では、
「最初からベストのアイデアなんて浮かぶわけない」
と開き直って、頭に浮かんだことをフィルターをかけずにどんどん口にしていくことが大事だと思うんですよね。
そうするうちに場が盛り上がっていき、みんなが、
「それだ!!」
と思えるアイデアにたどり着く。
こういう経験は、数えきれないほどあります。

さて、この記事を書こうと思って「マクドナルド理論」という言葉をググってみたところ、気になる投稿が目に留まりました。
「マクドナルド理論が正しいのはわかるけど、ブレスト的な場で、自分が『マックはどう?』みたいな提案をする立場になると、損するよね」
というもの。
なぜ損なのかというと、
「議論の呼び水としての提案だとしても、『マックはどう?』的な発言をすると、『その程度の発想しかできないヤツだ』と周りに見なされるから」
ということなのだそうです。

この意見には、正直モヤっとしてしまいます。
これは「ブレストの目的を取り違えている人」の考え方ですよね。
その場を「自分がいいところを見せて、爪痕を残すための場所」と捉えているから、こういう発想になるのでしょうが、ブレストの本当の目的は「良いアイデアをみんなで出し合うこと」なわけです。
他のメンバーが「何のためのブレストなのか?」ということを正しく捉えてさえいれば、「アイツは大した提案ができないヤツだ」なんて評価は、生まれるはずがありません。

「爪痕を残したい」という願望を持つのは自然なこと。
でも、そう思っているならば余計に、本来の場の目的を見失わない方がいいと思うんですよ。
というのも、
「爪痕を残そうとすればするほど、かえって爪痕は残せない」
という法則があると思うから。
その場の目的を見失い、作為的になっていると、かえってよいパフォーマンスは出ない。
結果として「爪痕を残す人」は、「目立とう」「すごいと思われよう」といった邪念に振り回されず、本来の目的に向かって真摯に知恵を絞っていた人なんじゃないか?と思うわけです。
スポーツの世界でだって、MVPに選ばれるのは、きっと「MVPを狙ってた人」じゃなく、「勝つためにベストを尽くした人」ですよね。

……と、ここまで書いて気づきましたが、
「脚本家が『名セリフを書くぞ!』と思えば思うほど、名セリフから遠ざかる」
という法則もあるんじゃないかな。
「いいセリフ書くぞ!」という書き手の作為なんて、登場人物たちには何の関係もないわけで、そんな邪念は捨てて、
「この場面で、この登場人物が口にする言葉は、これ以外にない!」
というセリフを真摯に追い求めていけば、結果的にそれが「名セリフ」と呼ばれるものになるときもある……ということなんじゃないかと思います。

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