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テクノロジーが常識を変えようとする時に、最後に残るハードル

二、三年前からビデオ通話でホン打ち(「脚本執筆のための打ち合わせ」をこう呼びます)をする機会が増えました。
地方にいても、香港にいるときでも対面で打ち合わせができて、「便利になったなぁ」と、しみじみ思います。

漫画家、小説家のみなさんは地方在住の方がめずらしくないですし、海外に拠点を置いて活動している方もいらしゃいますが、脚本家は「東京近郊に住んでいなければ、なれない」というのが、長らく定説となっています。
そんなわけで以前、質問箱に「脚本家志望者が住むべき場所は?」という質問をいただいた際も、「都内の、なるべく交通の便がいいところ」とお答えしました。

プロデューサーから「なるはやで打ち合わせをしたい」と連絡があった場合に、すぐに飛んでいける方が良いから、というのが理由なんですが、この常識も今後変わっていくかもしれません。
……というか、変わっていくべきだと私は思います。

ビデオ通話が一般的でない頃から、地方在住の作家さん、漫画家さんは、担当編集者とのやり取りを電話やメールで行ってきたのだと思うのですが、脚本家は「対面での打ち合わせが原則」という暗黙ルールが存在するんですよね。
「基本的には脚本家なのだが、ドラマのノベライズを書いたりもする」という私の経験を振り返っても、小説に比べて脚本は、打ち合わせの出席者数が断然多く、電話では対応しきれないという事情があって、このルールができたんじゃないかと思います。

でも、今やスマホさえあればビデオ通話は簡単に可能。
出席者が、各自バラバラの場所にいても問題なし。
時間の調整もしやすくなるので、オンラインでのホン打ちはいいことづくめ……だと思うのですが、「一般化するには、まだハードルがあるな」とも感じています。

最後に残るのは、一部の人の心理的ハードル。
「やっぱり直接顔を合わせなきゃ、伝わらないものがあるでしょ」的なことを言う人も存在するのです。
オンライン打ち合わせが一般化すれば、「地方在住の脚本家」も増えて、脚本家界隈の活性化につながると私は思うのですが、
「本気で脚本家になりたいなら、地方から上京するぐらい当たり前。その程度の覚悟もないのは、真剣じゃない証拠」
というご意見を耳にしたこともあります。

こういうの、本当にがっかりしちゃうんだよなぁ。
脚本家になることも、脚本家であり続けることも、正直言って”苦行”なので、減らせる負荷はどんどん減らした方がいいと思うけどなぁ。
「合理的な理由は持たず、何となく気分で反対している人」を説き伏せるのって、難しいですよね。
……なんてことを考えつつ、仕事に戻ります。

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