見出し画像

解決策は、問題のなかに埋まっている

脚本家を目指して勉強していた頃、生活費を賄うべく、あるIT系の会社で働いていました。
当時は主にユーザーサポートの仕事をしていたので、「ユーザーの皆さんが何らかの不具合に出くわすと、私の仕事が発生する」という日々を過ごしていたわけです。
そんななかで一番困ってしまう相談のパターンは、
「何となく調子が悪いんですよね」
というものでした。

「この操作をすると、こういうエラーが出るんです」
であったり、
「ここの使い勝手が悪いので、何とかならないですか?」
という風に、問題点が明確であれば何かしらの対応はできます。
ですが、
「完全に壊れてるとかじゃないんですけど、たまに『なんか動きが遅いなぁ』ってことがあったりして、何となくヘンなんです」
という相談が来る場合もあったんですよね。

ユーザーサポート担当の仕事の柱は、以下二つだと思います。
(決して真面目な社員じゃなかったので、間違ってたらごめんなさい。)
1)ユーザーの声の正確な聞き取り。
2)1)を基に、ユーザー先で起きている問題を社内環境で再現させる。(それをプログラマーに渡して修正してもらう)

そうなると、「なんかヘンなんです」は最も難易度が高い事案ということになります。
「一番最近ヘンだと思ったのはいつですか? そのとき、何が起きてましたか?」
「起こる頻度はどのぐらいですか? 一日何回ぐらいでしょう?」
「どの端末でよく起きますか? 今、試してみても同じことが起きますか?」
等々の質問を積み重ねていき、「なんかヘン」の部分を具体化していかなければなりません。
これがなかなか大変なんですが、「問題点が具体化できさえすれば、解決したも同然」と感じてもいました。

時は流れて、私は最近noteで、脚本家志望の皆さんからの質問にお答えする機会が増えています。
こちらのマガジンに、「ご質問&回答」の投稿をまとめてあります。)
そのなかで、はたと気づいたことがあります。
私から脚本家志望の皆さんへの回答と、ユーザーサポート時代のユーザーへの回答って、パターンが同じなのでは?

例えば「葛藤を描くコツは?」というご質問には、「まず、葛藤が弱いというのはどういうことを指すのかを掘り下げることが大事」とお答えしています。
「筆力をつける方法は?」というご質問への回答のなかでは、「質問者さんにとって必要な筆力というのが、具体的に何なのかを明確にすることが大切」とお伝えしています。
「構成を学ぶ方法は?」というご質問に対しては、「脚本における構成とは何なのか?という理解を深めることが重要」とお答えしました。

つまり、ユーザーサポート時代に受けていた依頼も、脚本家志望の皆さんからの作劇に関するご質問も、「問題点を具体化し、解像度を上げること」が最も重要で、そこをクリアすれば一気に解決に近づくという共通点があると思うのです。

さらに言えば、これは悩みごと全般に共通のルールなんじゃないでしょうか?
例えば「身近な人への何となくモヤモヤした気持ち」であったり、「自分の現状へのぼんやりとした不安」といった悩みは、”あるある”はないかと思いますが、「モヤモヤ」や「ぼんやり」の状態のままで解決するのはなかなか難しい。
そういうときに人は、占いに頼ってみたり、威勢がいい感じの自己啓発本に答えを求めてみたりするのではないかと思うんですが、
「何に対して、どうモヤモヤしているの?」
「不安が突き上げてくる瞬間はいつなの?」
等々の問いを自分自身に投げかけて、具体化していく方が、効率がいんじゃないかなぁ。

「一気に解決策を見つけたい!」と思っても、問題そのものがふんわりしたままでは難しい。
それならば、「急がば回れ」の精神で、悩みの内容の具体化から始めてみるというのは、悪くないんじゃないですかね。
まだ思いついたばかりで、実践していないので、今後「ぼんやりとした不安」におそわれたときに、試してみたいです。

※脚本家志望の皆さんからのご質問と回答をまとめたマガジンはこちらです。マガジンをフォローしていただくと、更新時に通知が届きます。

****************
脚本、小説のオンラインコンサルを行っていますので、よろしければ。

スキ♡ボタンは、noteに会員登録してない方も押せますよ!

Twitterアカウント @chiezo2222

noteで全文無料公開中の小説『すずシネマパラダイス』は映画化を目指しています。 https://note.mu/kotoritori/n/nff436c3aef64 サポートいただきましたら、映画化に向けての活動費用に遣わせていただきます!