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錯覚資産の効力を知った日

昨日、こんな投稿をしました。

来年1月6日から放送が始まるNHK大河ドラマ『いだてん』の公式ガイドブックのあらすじページを私が書きました、というお知らせです。

FacebookとTwitterでも同じお知らせをしたところ、何人もの方が情報をシェアしてくださったり、「すごいね」と褒めてくださったりしました。
とてもありがたく、うれしいのと同時に、少し気恥ずかしいというか、戸惑っているような感覚もあります。
というのも、大河ドラマという看板の大きさが私の「錯覚資産」となっていると感じるからです。

「錯覚資産」とは、『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』という本の中で、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」を指して使われている言葉です。

例えば、この本の著者のふろむだ氏が持っている錯覚資産は、「起業した会社が上場したこと」や「ブログが数百万人に読まれたこと」だそうです。
ご自身曰く、特別ビジネスセンスがあるわけではなく、会社が上場したのも運による部分が大きいのだけれど、「上場した」という事実が「この人はすごいビジネスマンに違いない」という錯覚を引き起こし、「ブログが数百万人に読まれた」という事実が「すばらしい文才の持ち主に違いない」という錯覚を引き起こしている、とのこと。

そして今の私の場合は、「NHKの大河ドラマに関連する仕事をした」という事実が錯覚資産になっている気がするのです。
確かに「大河ドラマ関連する仕事をした」というフレーズは、立派なことをしたような印象を与えると思うのですが、私はドラマそのものの制作に関わったわけでありません。
あくまで、公式ガイドブック用にあらすじをまとめただけです。
それを考えると、
「港区のはじっこの1Kのアパートでつましく暮らしていたら、人から港区女子と呼ばれるようになってしまった……」
みたいな気分になるんですよね。

『いだてん』の脚本を書かれている宮藤官九郎さんも私も、職業は同じ脚本家です。
でも「大河ドラマの脚本家と、そのあらすじを書いた人」と表現すると、大きな格差を感じざるを得ません。
こんなことを書いていると、
「どうせあたしなんて……」
と後ろ向きになっているように思われるかもしれないのですが、そういうわけではないです。
「大河ドラマに関連する仕事ができてうれしい」という気持ちに嘘はありません。
ただ、それと同時に「だけど私は、あくまであらすじを書いただけの人」という認識もきちんと持っておきたいのです。

「がんばってるね」と認めてもらえることはとてもうれしいですし、
「実際以上の成果を上げているように錯覚してもらえるなんてお得!」
という気持ちもあります。
ですが、自分自身までも錯覚してしまうのは何か違う気がしますし、「あらすじを書いただけの人」と自分を客観視する視点も持っている方が、この先、自分が目指す方向に進むためにすべきことをきちんと見極められるんじゃないかとも思います。

#日記 #エッセイ #コラム #錯覚資産
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