「1WEEK短編小説」

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ノート

「SURFACE(1WEEK短編小説)」

彼女は図鑑のような本を一生懸命読んでいた。

「ヘビの図鑑?爬虫類が好きなんだね」

「ヘビ?」
彼女は不思議そうな顔をした。

「君の見てるその画像、ヘビの画像じゃないの?僕の田舎にも、ヘビはたくさんいたからよく知ってるんだ。たぶんマムシだよねそれ」

「これは、蛾の幼虫よ」

「ん?」

「これはベニスズメガという昆虫の幼虫。ヘビに擬態しているの」

それは、どうみてもヘビにしか見えなかったが

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「AFTERLIFE(1WEEK短編小説)」

私は、生きている時に、悪の限りを尽くした。
そのため、人であったが、人ではないと判断をされ処刑された。
そして、死後も、地獄と呼ばれる場所に落とされた。

生前、地獄とは、悪人、罪人の巣窟であり、
私と似たような悪人だけが生活している世界と聴いていた。

地獄に、善人は一人もおらず、
悪人同士が犇めきあう場所であるらしかった。
全員が同じ穴の貉であった。

私は地獄につくなり、道の真ん中で早速、人

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「SAVIOR(1WEEK短編小説)」

聖人とは、一般的に、徳が高く、人格高潔で、生き方において他の人物の模範となるような人物のことをさすのだそうだ。他の人々の模範となる生き方とは何か?他者のために自分の命すら犠牲にできることだろうか?

いや、自分の命を犠牲にするくらいは、大した行いではないのかもしれない。死は一瞬であり、実際は恐怖を感じる間もないかもしれない。一瞬で死ねるようにと考えられた温情の刑がギロチンであることをふと思い出した

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「DEAR.FRANKENSTEIN(1WEEK短編小説)」

何かが始まるとき、何かは終わっている。
何かを得る時、何かは必ず失われている。

その時、当の本人は、失われたことに、気づいていないということがあるのかもしれない。

万物は流転している。
この不変の法則を変えることは、限りのある「人」には出来ない。

私の望みは、大切な人と永久に生き続ける事。

私は「恋人」を愛していた。
だから、恋人と永久に一緒にいたいと願った。

私たちの愛に賞味期限などな

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「PLEDGE(1WEEK短編小説)」

ある時、私のお気に入りの青い熱帯魚が
水槽の中で浮いているのを発見した。

絶命していた。
もう水面に波紋1つ立てることもなかった。
昨日まであんなに元気に泳いでいたのに。

綺麗な青い鱗とバレリーナのような尾ひれが特徴的な子だった。
もう何年も一緒に時を過ごしてきた。

水槽の中を優雅に泳ぎ回るこの子に何度となく助けられた。
言葉を交わせるわけではなかったけれど、私にとってこの子は家族同然だった

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「SHAPESHIFTER(1WEEK短編小説)」

「あなたは誰といる時が1番幸せ?」
「あなたは誰といる時の自分が1番好き?」

「解離性同一性障害」というものは存在しない。
厳密には、存在しているが、これは人間という存在が、二足歩行である事ぐらい、ごくごく普通なことで、何も特別なことではない。

人間という存在がそういう「モノ」として作られている。人は誰かのために作られている。だから、自分探しをしても見つかるはずがない。

幼いころ、母は私を虐

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「AMBROSIA(1WEEK短編小説)」

画面では、吸血鬼の映画が流れていた。
お菓子を食べながら、恋人が言う。

「吸血鬼になったら、どんな感じなんだろうね?」
「不老不死になれるんだから、良いんじゃない?」
「そうだよね・・」

「ねぇ?君がもし吸血鬼になったら、必ず僕も吸血鬼にしてよ?
一噛みで仲間にできるみたいだから」

「それなら、私の時もそうしてよ?不老不死になってあなたとずっと一緒に生きていけるなんて、そんな幸せなことないも

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「CAT(1WEEK短編小説)」

愛犬家とは言うけれど、愛猫家とは呼ばない。
「猫好き」と呼ぶ。

ある時、猫好きだけが集う、「闇猫」という会合が行われるという情報がSNSで流れて来た。自分の家の「猫」を箱の中に入れて持ち寄り、周りには見えないようにし、「猫全体」の可愛さはもちろん、自分の「猫」の良い部分を選挙運動のように伝えあい。見てみたいと思わせたら勝ち。「ベストキャット」を決めるというものだった。

私の飼っている猫は、「ベ

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「狡兎死して走狗烹らる(1WEEK短編小説)」

犬、狼、兎の孤児の兄弟がいた。
兄弟は、自分達の親を知らない。
血が繋がっているわけではなかったが、生きるために、3人で協力をして暮らしていた。

狼は、自分を捨てた親に対し、何も感情がなかった。
こんな殺伐とした世の中だ。自分一人が生きていくことも難しい世界で、
こどもを育てることの方が普通じゃない。すんなり運命を受け入れた。彼は世界にも誰にも期待をしていなかった。

犬は、狼とは対照的だった。

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「AUFHEBEN(1WEEK短編小説)」

死にそうな昆虫を拾っては、一宿一飯を用意し、手厚く介抱し看取る。
もう見送るのは、これで最後と思いながら。
いつしかお墓が増えてきた。

たった1日だけの関係でも情は移るのだと思った。
「名前」などつけてしまったら、もっと大変だ。

大切なものが奪われることに耐えうる心がない。
そういう人間だと知っていた。

こんなことでは、生きていくことは出来ないとそう思った。

どれだけ亡骸を弔っても、「死」

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