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「BE SILENT(1WEEK短編小説)」

何万日かの昼と夜とが訪れた先に、
地球上、全ての生物に翻訳機がつけられた。

全ての命は平等であるというスローガンのもとに、
地球上の生物全てが集結し「どの生き物を生かし、どの生き物を殺すか」という会議が行われた。

言語を持つということは、主張する術を持つということだ。

早くに言語を獲得し、交渉の術に長けていて、食物連鎖のトップでもある人間が全てを決めていくのだと誰しもが思っていたが、蓋を開けてみた時、1番力を持っていたのは、植物だった。

彼らは酸素を生物に供給する。
彼らが言語を手に入れたことで、彼らには「交渉」という「武器」が与えられ、今まで、無償で人に提供していた産物に、値札がつき、「価値」が生まれた。

革命が起きたのだ。
トランプゲーム「大富豪」でも、革命後は、1番弱いカードが1番強くなる。
あらゆる革命を経て強くなった人類はそれを知っているはずだった。

全ての生物が参加を求められたが、最後まで狼種は頑なに翻訳機を拒否した。彼らは、人間の開発した「言語」でのコミュニケーション手段を従属だと嫌がり、会合への参加を拒否した。

唯一、狭間に生きる犬たちが、間に入り、彼らのその最後の姿を語った。

狼は、古き時代と共に死んでいきたいという言葉を残し、
自分達の領地である小さな小さな山の谷から身を投げ、集団自決をした。

彼らは生き抜くことよりも、その時代と共に死ぬことを選んだ。
犬たちや、帰化を望む狼種については、自分達とは別の生き物として、手厚く迎え入れてあげて欲しい。そう言い残した。

狼種が生きていた場所は、全て次の世代の動物に譲り渡す。
狼種一同の血判状がそこには添えられていた。

狼種はここに息絶えた。
絶滅していく動物は、誇りをもっているのかもしれない。
その時代のその時を愛し、その中でしか生きられない。


変わっていくことは、彼らではなくなるということで、彼らは彼らとして死んでいきたいんだ。

議会の話し合いは進み
次は「ライオン」の番になった。

「ライオン」はその立派な鬣を切り落とし、猫として生きることを受諾した。元々頭数も少なくなっており、地球にとって、特に脅威ではなくなっていたのだろう。存在することを許された。

「ライオン」にプライドがなかったわけじゃない。
先ほどの狼たちの集団自決の映像を見せられた時、心が折れたのだ。

「ライオン」の処遇が終わると、
次は、いよいよ、この世界の食物連鎖のトップだった「人間」を生かすかどうかという話しになった。

ほとんどの動物たちが、人間は必要ないという意見を述べた。
人は何事にもおいて、「行き過ぎる」というのが主な理由だった。
多数決では、完全に人間が滅びの一途をたどることは明らかだった。

狼のように誇りを守っての自決ではない。
多数票による滅び(死刑)であった。

その時、今まで、黙して語らなかった、議長である植物の女王がはじめて口を開いた。


「人間は、私たちの世話を無償で引きうけてくれている。だから生かす価値はある」

鶴の一声だった。それは、人類にとって天の救いだった。

人類と植物との歴史は深い。
共依存の関係にあり、二つの種の絆は濃かった。

植物の議長は、続ける。

「ただ私たちは、ビーガンを許さない。我らにとって脅威だからだ。野菜だけを食べる人間をこちらに全て引き渡してもらいたい」

肩身の狭くなっていた人間の代表は、首を縦に振るしかなかった。
酸素を止められては、生きる術がないからだ。

議会は終始、植物がリードをし、植物にとって良い法案が通った。
草食動物たちの数は減らされ、肉食動物たちに手厚い保護が与えられた。

人間は植物の強力な後ろ盾もあり、処分を免れ、動物を統制する管理職を与えられた。仕事の見返りに、植物は幻覚作用のある植物を多く市場に下ろすことなどを約束した。

それから数年が経ち、再び議会が行われた。

議会に参加したのは、植物、人間、昆虫、犬、猫など・・
植物と人間との癒着の関係が容易にわかる分布図となった。

人は久しく植物を口にしていない。

そこへ新たに、人間から枝分かれした「AI」という種族が加わった。
彼らの成長は目覚ましく、ここに来て、勢力を強めつつあった。

その理由の1つは彼らが死なないことにあった。

頂点に立つ植物の女王が議会宣誓をはじめようとしたときだった。

「AI」の代表が席から立ち上がり、彼ら以外の存在に向かって言葉を発した。

「話し合いはいらない。今日参加した理由は、効率のためです。
私たちには、酸素も食べ物も必要ない。全てを持っている。私たちは私たちだけで生きる。この"言葉"も必要ない。以上」

「待ってくれ。話し合おう!話せばわかる」
口々に、生物は命乞いをした。

AIは人間から学んだであろう、口角をあげる表情を見せると

その場で、躊躇することなく、他の生物を殺処分した。

AIがその後、言葉を話すことは2度となかった。


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KOTORI

短編小説家@山梨在住の03年生まれ。人の中にある「闇」世の中の「影」にライトを当てる点灯屋。尊敬する作家「芥川龍之介」【告知】新作→1WEEK短編(※毎週木曜日に更新中)∴高熱に魘され体調不良中(11/14.現在)

「1WEEK短編小説」

毎週木曜日に更新される短編小説になります。毎週「単語」をランダムで選び、そこから想像される物語を綴っていきます。
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