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「CAT(1WEEK短編小説)」

愛犬家とは言うけれど、愛猫家とは呼ばない。
「猫好き」と呼ぶ。

ある時、猫好きだけが集う、「闇猫」という会合が行われるという情報がSNSで流れて来た。自分の家の「猫」を箱の中に入れて持ち寄り、周りには見えないようにし、「猫全体」の可愛さはもちろん、自分の「猫」の良い部分を選挙運動のように伝えあい。見てみたいと思わせたら勝ち。「ベストキャット」を決めるというものだった。

私の飼っている猫は、「ベンガル」という猫の種類で、ロゼットと呼ばれる豹柄が特徴的なお洒落な猫だった。


「私の猫が1番可愛い」
きっと、ここに集っている猫好きはみんなそう思ってるに違いない。

会場はマンションの一室だった。
会場にやってきたのは、私を含めて6人。
みんな四角い箱を持っている。中身は見えないような作りになっている。

この中に自分たちの家の愛しい自慢の愛猫がいるのだ。

猫好きは、自分の猫が1番可愛いと思っている反面、無条件に他の猫も好きだった。猫好きは無類の猫好きであるから、共感しあえる部分も多いと思った。猫の話なら、ずっと聞いてられる。

1人1人が、順番に自分の連れて来た愛猫の長所を語った。
中には短所のような部分もあったが、短所もまた可愛く聞こえてしまうのが猫の良い所だと思った。

私の番がやってきた。与えられた時間は10分ほどで、こんな短時間では、うちの子の良さは、語りつくせないと思った。

皆、柄であったり、顔の表情であったり、仕草だったり、癖だったり、
そういった話をする中で、1人だけ、変わったことを言う人がいた。

「私の猫は話すんですよ」
とても興味を注がれた。


ただ、こういったことはよくあることで、動物の飼い主は、自分の家の子が会話をすると本気で思っている節があり、これはその類だろうと思った。現に私の家の母親もこの子が本気で話すと思っている。


「どこが可愛いですか?」
種類を聞くことは禁止されているため、長所を聞く質問だけが許されていた。私は聞いてみた。

「無毛な所ですね」                         女性は笑顔で答えた。

私はすぐに、「スフィンクス」だと思った。
無毛の猫といえば、「スフィンクス」しか考えられない。
そして、私は1度も見たことがない猫の種類だった。

絶対、スフィンクスを見てみたいと思った。

「ネコってとっても可愛いですよね。母性本能をくすぐられちゃいます」
彼女はそういうと、箱を見て笑顔をこぼす。

私にはわかる。この人は根っからの猫好きだ。手に巻いている包帯も猫とじゃれた時に引っかかれた勲章だと思った。

それから集った人たち全員が、持ち寄った自分の猫の紹介を終えた。みんな、自分の猫の話が出来たことや、みんなに自分の愛猫を褒めてもらえたことに、気持ちを良くしていた。

私の「ベンガル」をはじめ、たぶん、みんなの猫も特徴から大体把握することが出来た。「シンガプーラ」「アメショ」「ラグドール」「メインクーン」

そして・・「スフィンクス」


もちろん、箱の中身は開けてみないとわからないから、スフィンクスが入ってるとは限らないのだけれど、彼女の言った特徴で予想できるのは、スフィンクス以外に考えられないと思った。

1番見てみたい猫を投票で決める時間になった。どの猫も見てみたい、みんな迷った。絶対どの猫も可愛いからだ。

スフィンクスの飼い主の彼女が呟いた。

「私の猫は、本当にしゃべるんですよ?猫の声って聞きたくないですか?」
この一言が決め手となり、みんなが彼女の猫を選んだ。

暗がりの中、ついにお披露目となった。
彼女を中心に、集った5人が箱の中の猫を今か今かと待ち望んだ。

彼女が箱を包んでいるカーテンをスルスルと床に落とした。

そこには男性の頭部が入っていた。

「可愛い猫でしょ?」

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KOTORI

短編小説家@山梨在住の03年生まれ。人の中にある「闇」世の中の「影」にライトを当てる点灯屋。尊敬する作家「芥川龍之介」【告知】新作→1WEEK短編(※毎週木曜日に更新中)

「1WEEK短編小説」

毎週木曜日に更新される短編小説になります。毎週「単語」をランダムで選び、そこから想像される物語を綴っていきます。
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