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「パパママパズル(短編小説)」

深夜1時


リビングから、両親の怒鳴り合う声が聞こえてくる。


「あの子もあなたのせいで学校に行かなくなっているのよ」


「僕のせいにするのか?子育ては君の仕事だろ?」


「仕事をいいわけにするの?それなら私も働きに出たら文句は言えないわね?」


ぎゅ・・。
私は隣の部屋で、お気に入りのテディベアを抱き締めながら、その声を聞いていた。


眠ってなんていないよ。
ちゃんと起きているんだよ。

ガシャンッ
皿の割れる音がする。


これは夢。
朝になると、なにごともなかったように片付けられている皿のように。


ただの夢。
ただの悪い夢なんだ。


塞ぎ込む私を心配そうに、親友のぬいぐるみ達が私を見守っている。


私がひとりで寂しくないようにと、私の誕生日に毎年1体づつ、両親がプレゼントしてくれていたぬいぐるみたちだ。


あれ?
この子の糸、解れている。


直してあげなきゃ・・

相変わらず、両親の罵り合いは続いた。

そんなことがしばらくすると
パパは家に帰らなくなった。


それ以来、食卓のテーブルの上で、塞ぎこむママの姿を何度となく目撃した。

ねぇ、おねがいだから
私の前では、嘘をついていてよ。
大人でしょ

あれ?
この子、お腹が破けてる・・


直してあげなきゃ・・

今日は私の誕生日
嬉しいことがあった。
パパが帰ってきた。


そそくさと部屋の片付けをしている。


ママはヒステリーに声を荒げると、自分の部屋に閉じ込もってしまった。


パパは、ママの写真も、私の写真も無造作にゴミ箱の中に捨てていく。


ねぇ、どうして?
それは私がいた証だよ。
もういらないの?
私は、存在しちゃいけない子だったのかな?

「ねぇ、パパ。ママのこと愛してる?」


パパは、私を一瞥すると、呆れたような顔をして、彼にとってはもう不要となった、残骸を片していた。

今日は私の誕生日なのに。


「うそつき・・」

最後の誕生日の翌日


パパとママは仲直りをした。


二人一緒に笑いあっている。


写真のままの二人。


私ね。わかったの。

パパに似て、頭の良い私だったから


ママに似て、裁縫の得意な私だったから


離れてるから、いがみ合ってしまうんだよね


うまく縫合したから、きっと大丈夫。

お気に入りのテディで試してみたら、うまくいったから。


これで2人は永遠に愛を全うできるね


愛し合って出来た私のように・・

あれ?


ねぇ?パパ・・


ねぇ?ママ・・・


もう起きていいんだよ?


どうしたの?


テディは話してくれたのに・・

そっか、2人の心を繋ぐ糸がまだないんだ?


待っててね、今、行くから・・


ツギハギだらけのテディベアが
思い出が散乱した部屋を静かに見つめていた。

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KOTORI

短編小説家@山梨在住の03年生まれ。人の中にある「闇」世の中の「影」にライトを当てる点灯屋。尊敬する作家「芥川龍之介」【告知】新作→1WEEK短編(※毎週木曜日に更新中)∴高熱に魘され体調不良中(11/14.現在)

「短編小説(~2018)」

短編小説家KOTORIによる2018年までの過去作品。
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